スターライナー不具合で9か月滞在 NASA宇宙飛行士が語る「みんなの責任」
ボーイングの新型有人宇宙船スターライナーの不具合で、国際宇宙ステーション(ISS)に予定外の9か月間滞在することになったNASA宇宙飛行士ブッチ・ウィルモアさんとスニ・ウィリアムズさんが、記者会見で初めてミッションの課題について語りました。2人は「失敗」の責任を特定の誰かに押しつけるのではなく、「みんなの責任」として受け止めていると強調しました。
予期せぬ9か月滞在を終えた2人
記者会見は米テキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターで月曜日に行われました。スターライナーのトラブルにより、当初8日間の予定だった試験飛行は、ISSでの286日間の長期滞在へと姿を変えました。
2人はもともと2023年6月5日にスターライナーで打ち上げられ、短期の試験ミッションを行うはずでした。しかし、ISSへの移動中に推進装置のスラスターの不具合やヘリウム漏れが相次いで判明し、NASAはスターライナーでの帰還は安全ではないと判断しました。
「みんなの責任」指揮官ウィルモアのメッセージ
スターライナーの船長を務めたウィルモアさんは、会見で真っ先に自らの責任に言及しました。
「まず最初に、自分を指さして責任を認めます。もっと質問できたはずのことがあり、その答えによって状況を変えられた可能性もある」と振り返りながら、「責任は組織の上下すべてに及ぶ。私たちは皆、責任を負っている。これはみんなのものだ」と語りました。
この発言は、ミッションの失敗を誰か1人や1社に帰するのではなく、NASA、ボーイング、そして宇宙飛行士自身を含めた「チーム全体の学び」としてとらえる姿勢を示しています。高リスクな宇宙開発における責任の取り方について、示唆的なメッセージと言えます。
試験飛行で何が起きたのか
今回のスターライナー試験飛行で起きた主な出来事を整理すると、次のようになります。
- 2023年6月5日:スターライナーが打ち上げられ、当初は8日間の試験ミッションとして計画されていた。
- ISSへの移動中:スラスターの故障やヘリウム漏れなどの不具合が発生。
- NASAは、スターライナーでの地球帰還は危険だと判断し、機体は無人での着陸に切り替えられた。
- 2023年9月:スターライナーのカプセルが無人で地球に帰還する一方、ウィルモアさんとウィリアムズさんはISSに残留。
- その後も後任クルーの打ち上げが遅れたことで、2人の滞在は合計286日に及んだ。
- 最終的に2人は、スペースXのクルー・ドラゴンに搭乗して3月18日に地球へ帰還した。
ISSでの想定外の長期滞在は、体力面やメンタル面だけでなく、家族や職場、今後のキャリアにも影響を与える大きな決断でした。それでも2人は、試験飛行の一員として最後まで冷静に任務を遂行したといえます。
それでも「また乗りたい」スターライナーへの信頼
ウィルモアさんとウィリアムズさんは、今回の不具合にもかかわらず、スターライナー計画への信頼を失っていないと強調しました。2人は4月2日にボーイング幹部と面会し、技術的な問題について直接意見を交わす予定です。
ウィルモアさんは「すべての問題を修正し、必ずうまくいくようにする」と語り、自身も「またすぐにでも乗りたい」と発言しました。ウィリアムズさんも同じく、「私たちは本気でこの宇宙船を成功させたいと思っている」と述べています。
NASAはスターライナーの推進系について夏に地上試験を行い、早ければ2026年にも無人での試験飛行を行う計画を示しました。ISSの退役がおよそ5年後に迫るとされる中で、NASAはボーイングとスペースXという2社体制で有人輸送を担う「二重の柱」を維持する方針です。スターライナーの開発コストは2016年以降で20億ドルを超えており、それでも計画を継続する決定は、民間宇宙船を複数確保する戦略の重みを物語っています。
帰還後の「日常」が教えてくれること
長い宇宙生活を終えた2人の言葉には、人間味のあるエピソードも多く含まれていました。ウィリアムズさんは、地球に戻って愛犬のラブラドールたちと再会した瞬間を「純粋な喜びだった」と表現しました。
一方のウィルモアさんは、ユーモアを交えながら、妻から「夏までに庭の低木を全部植え替えたい」と言われていることを明かし、「穴掘りに備えて体を鍛えないといけない」と笑いを誘いました。極限の環境から戻った後の、ごく普通の家庭の風景が垣間見えるエピソードです。
「失敗」とどう向き合うかという問い
今回の会見で印象的だったのは、責任を追及するよりも、次の成功に向けて何を学ぶかに焦点が置かれていた点です。ウィルモアさんは、近く行われるボーイングとの会合についても、「誰かを責める場ではなく、これからの道筋をより明確にするための場だ」と位置づけました。
高リスク・高コストの宇宙開発において、100%の安全を事前に保証することはほぼ不可能です。その中で、問題が起きたあとにどのように情報を共有し、責任を分かち合い、次に活かすのか。スターライナーをめぐる一連の出来事は、宇宙産業だけでなく、大規模な技術プロジェクトに関わるあらゆる組織に共通する問いを投げかけています。
「みんなの責任」という2人の言葉は、単なる反省のフレーズではなく、複雑なシステムを動かす現代社会における、新しい責任の捉え方を象徴しているのかもしれません。
Reference(s):
'We all own this': NASA astronauts talk about failed Starliner mission
cgtn.com








