「包丁持って集まれ」貴州の洪水被災地で広がる炊き出し支援 video poster
中国・貴州省ロンジャン県のジョンチェン村で、洪水で数千人が避難を余儀なくされるなか、「包丁を持って村役場に集まってください」という一言が、地域の力を引き出しています。住民たちは店を閉め、家庭の包丁や鍋を持ち寄り、救助隊に1日1万2000食を超える温かい食事を届ける炊き出し拠点をつくりました。
洪水被害の中で立ち上がった村人たち
2025年現在、貴州省ロンジャン県では激しい洪水により家屋が浸水し、多くの住民が自宅を離れて避難生活を送っています。数千人規模の人びとが移動するなかで、現場で活動する救助隊やボランティアに食事をどう届けるかは、大きな課題となります。
そうした中で、ジョンチェン村の村役場に掲げられたのが「包丁を持って村役場へ」という呼びかけでした。特別な資格や装備ではなく、どの家庭にもある台所道具を合言葉にしたことで、年齢や職業を問わず多くの人が一歩を踏み出しやすくなりました。
「包丁を持って村役場へ」から始まった前線キッチン
呼びかけを受けた住民たちは、自分の店や仕事を一時的に閉め、家庭で使っている包丁やまな板、鍋などを抱えて村役場に集まりました。村の食堂はあっという間に炊き出しの拠点へと姿を変え、そこから前線で活動する救助隊に向けて、温かい食事が次々と送り出されています。
1日1万2000食を支える「見えないインフラ」
この臨時キッチンでは、1日に1万2000食を超える温かい食事が用意されています。大量の食材を洗い、切り、煮込み、盛りつける作業は、決して派手ではありませんが、救助活動を支える「見えないインフラ」といえます。
炊き出しに参加するのは、料理の専門家だけではありません。普段はそれぞれの仕事や家事に追われている住民も、野菜を刻む、器を並べる、出来上がった料理を運ぶといった作業を分担しながら、長時間にわたる救助活動を陰で支えています。
なぜ「キッチンからの支援」が心強いのか
災害現場の国際ニュースでは、救助用ヘリコプターや重機の映像が注目されがちです。しかし、現場で動く人びとの体力と心を支えるのは、毎日の温かい食事です。食事が安定して届くことで、救助隊は安心して現場に集中でき、避難生活を送る人びとも「誰かが自分たちを気にかけてくれている」という感覚を持つことができます。
ジョンチェン村の取り組みが印象的なのは、特別な装備や大きな予算ではなく、一人ひとりの家庭にある包丁や鍋から始まっている点です。「自分にできることは小さい」と感じている人でも、身近な道具と時間を持ち寄れば、1日1万2000食という大きな力になることを示しています。
日本で暮らす私たちへのヒント
中国・貴州省ロンジャン県の洪水被災地で生まれたこの「前線キッチン」の物語は、日本で暮らす私たちにとっても、災害とコミュニティのあり方を考えるきっかけになります。
- 特別なスキルがなくても、身近な道具や場所を生かして支援に参加できること
- 「まずは集まってみよう」というシンプルな呼びかけが、人と人をつなぐ力を持つこと
- ニュースで被災地を見るとき、被害の大きさだけでなく、そこで生まれている連帯や工夫にも目を向けられること
洪水や豪雨が報じられるたびに、私たちは被害の規模や原因に目を向けがちです。そこに加えて、「現場の人たちは今、どんな工夫で支え合っているのか」という問いを持ってニュースを見てみると、世界の出来事がぐっと身近なものとして感じられるかもしれません。
包丁や鍋といった日常の道具が、災害時には大きな支えに変わる――貴州の小さな村で始まったこの取り組みは、そんなシンプルで力強いメッセージを私たちに投げかけています。
Reference(s):
'Bring your kitchen knives!' Villagers aid flood relief in Guizhou
cgtn.com








