米国インフレ加速、関税が火種に エコノミストが警鐘 video poster
米国経済のインフレが再び加速しつつあるのではないか──そんな懸念を、ワシントンのシンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所」のエコノミスト、マイケル・ストレイン氏が示しています。とくに、関税の影響で物価上昇がじわじわ広がっている点が注目されています。
エコノミストが警鐘を鳴らす「コアインフレ」の上昇
ストレイン氏は、食品とエネルギーを除いた「コアインフレ」が、米国で粘り強く上昇を続けていると指摘します。コアインフレは一時的な要因に左右されにくく、景気の基調的な物価動向を示す指標とされています。
すでにインフレ率は米連邦準備制度理事会(FRB)の物価目標を上回っており、そのうえでコアインフレが「加速している兆し」が見え始めているといいます。これは、物価の高止まりが短期的な現象ではなく、より長く続く可能性があることを意味します。
関税がインフレを押し上げている理由
今回ストレイン氏がとくに強調しているのが、関税とインフレの関係です。関税とは、輸入品にかかる税金のことで、企業が海外から商品や部品を仕入れる際のコストを高めます。
企業が負担したコストは、次のような形で最終的に消費者価格に転嫁されやすくなります。
- 輸入品そのものの価格が上がる
- 輸入部品を使う製品の製造コストが上がる
- 競合他社も追随し、同種の商品の価格全体が上がる
ストレイン氏によれば、関税の影響を強く受ける品目ほど、すでに顕著な値上がりが見られているといいます。これは、関税が狙いどおり一部の輸入品だけに打撃を与えるのではなく、関連する幅広い商品にまでインフレ圧力を波及させている可能性を示しています。
「本格的な影響はこれから」――今後数カ月の焦点
さらにストレイン氏は、関税によるインフレ圧力の「本番」はまだこれからだとみています。現在の物価統計に表れているのは、関税導入後の初期的な影響にすぎず、今後数カ月からそれ以降にかけて、よりはっきりとした形で物価に表れてくると予測しています。
理由の一つは、企業がコスト増をすぐに価格へ完全転嫁できるとは限らないためです。最初は利益率を削って対応し、その後、在庫の入れ替えや新しい価格表への変更を通じて、徐々に値上げを進めるケースも少なくありません。そのタイムラグが、これからのインフレ加速要因になるとみられています。
金融政策と家計への影響
インフレが目標を上回る状態が続き、さらに加速の兆しが強まれば、FRBは利下げに慎重になり、場合によっては金融引き締めスタンスを維持せざるをえなくなる可能性があります。そうなれば、住宅ローン金利や企業の資金調達コストが高止まりし、景気への重しになります。
一方で、物価上昇の主な原因が関税である場合、金融政策だけでインフレを抑え込むのは難しい側面があります。金利を上げても、輸入コストに直接かかる関税そのものは下がらないからです。その意味で、ストレイン氏の警鐘は、金融政策だけでなく、通商政策全体を見直す必要性を示唆しているともいえます。
日本や世界の投資家が注目すべきポイント
米国のインフレ動向と金融政策は、為替レートや株式市場、資金の流れを通じて、日本を含む世界の経済・金融市場に大きな影響を与えます。とくに、
- 米国の長期金利の動き
- ドル円相場の変動
- グローバルな株価の調整リスク
などは、日本の投資家や企業にとっても無視できないテーマです。
ストレイン氏の見方が現実化し、関税を起点としたインフレ加速がはっきりしてくれば、米国政治の場で、関税のあり方をめぐる議論が一段と活発になる可能性もあります。関税はしばしば「国内産業を守るための政策」と説明されますが、その裏側で家計の負担やインフレ圧力を高めているのかどうかが、改めて問われることになりそうです。
米国のインフレと関税をめぐる動きは、これからの世界経済を考えるうえで避けて通れないテーマです。今後発表される物価統計や企業の決算などから、関税の影響がどこまで広がっているのかを慎重に見極める必要があります。
Reference(s):
Tariffs fueling accelerating inflation in U.S. economy, economist says
cgtn.com








