南京大虐殺で約2万人を救ったデンマーク人、姪が語る静かな遺産 video poster
1937〜38年の南京大虐殺のさなか、デンマーク人のBernhard Arp Sindberg(ベルンハルト・アルプ・シンドベア)は、同僚たちとともに約2万人の中国民間人に避難場所を提供し、日本軍による残虐行為から守りました。しかし、その行動の大きさとは対照的に、彼の名前は長く世界でほとんど知られてきませんでした。今回伝えられた姪のインタビューは、その静かな英雄の素顔を、2025年の私たちにあらためて問いかけています。
南京大虐殺で市民を守った名もなき英雄
南京大虐殺(1937〜1938年)は、多くの中国の民間人が暴力や殺害の危険にさらされた時期でした。そのさなかにシンドベアは、デンマークから遠く離れた南京で、同僚と協力しながら避難所をつくり、およそ2万人の人びとを受け入れたとされています。
多くの人びとを匿うことは、決して安全な行為ではありませんでした。日本軍による残虐行為から人びとを守るという選択は、個人として大きなリスクを引き受ける行動でもあったと考えられます。
- 中国の民間人約2万人に避難場所を提供
- 日本軍の暴力から人びとを守るための保護活動
- デンマーク出身の一個人による人道的な選択
その後の人生で語られなかった南京
シンドベアは、南京で多くの命を救ったにもかかわらず、その後の人生で結婚することはなく、この経験についてほとんど語ることがなかったとされています。自らの行為を誇るよりも、沈黙を選んだ人生だったとも言えます。
なぜ彼は沈黙を守り続けたのでしょうか。その理由ははっきりとは分かりませんが、激しい暴力を目の当たりにした記憶の重さや、救えなかった命への思い、あるいは特別な英雄ではなく当たり前のことをしただけだという感覚など、さまざまな要因が重なっていた可能性があります。
結果として、南京での行動は長く広く知られることはなく、並外れているのにほとんど知られていない物語として、家族の記憶の中にとどまり続けました。
姪が語る、静かに受け継がれた遺産
シンドベアの姪であるMariann Arp Stenvig(マリアン・アルプ・ステンヴィ)は、インタビューの中で、叔父が残した物語について振り返っています。その物語は、家族の中で語り継がれてきた記憶であると同時に、人間が極限状況でどのような選択をしうるのかを考えさせるものでもあります。
マリアンは、叔父の行動が「並外れているのに、ほとんど知られていない物語」だと語っています。そのギャップ自体が、シンドベアがどのように生き、どのように沈黙してきたのかを物語っているとも言えます。大きな勲章や肩書きではなく、守られた命と家族に残された記憶。それこそが彼の遺産だと見ることもできるでしょう。
こうした家族の証言が公に語られることで、これまで国際ニュースの表舞台に出てこなかった一人のデンマーク人の選択が、2025年の読者にも届き始めています。
2025年の私たちがこの物語から学べること
いま、世界では地域紛争や人道危機に関するニュースが日々報じられています。その中で、シンドベアのように個人が危険を承知で他者を守ろうとした物語は、決して過去だけの話ではありません。
彼の歩みから、私たちは次のような問いを受け取ることができます。
- 自分の安全と他者の命が天秤にかけられたとき、どのような選択ができるのか
- 語られてこなかった歴史をどのように掘り起こし、次の世代に伝えていくのか
- 国籍や国境を超えて、人びとが互いを守り合うとはどういうことか
シンドベアの物語は、派手なヒーロー像ではなく、静かな行動と沈黙の中に宿る人間の尊厳を教えてくれます。そして、その物語を語り継ごうとする姪の存在は、家族の記憶から世界が共有する歴史へと橋を架ける試みでもあります。
知られざる英雄をどう記憶していくか
歴史の大きな出来事は、しばしば数字や年表で語られます。しかし、南京大虐殺のような悲劇の背後には、シンドベアのように名前すらほとんど知られてこなかった個人の選択が積み重なっています。
2025年のいま、このデンマーク人の物語を知ることは、歴史をどう記憶するかを考え直すきっかけにもなります。ニュースや教科書に載る出来事だけでなく、その陰で誰かを守ろうとした無数の行為に目を向けること。それが、過去の悲劇を繰り返さないための、ひとつの出発点なのかもしれません。
南京で約2万人の命を守り、その後は静かに生きたシンドベア。その遺産は、派手な記念碑ではなく、私たち一人ひとりの心の中に、これからどのように刻まれていくのかが問われています。
Reference(s):
A Dane who stood for humanity: Sindberg's niece shares his legacy
cgtn.com








