韓国のムン・ジョンイン氏、北東アジア「新秩序」提案:同盟から多国間へ video poster
2026年の北東アジアは、安全保障の緊張と経済の相互依存が同時に進む中で、「どんな枠組みが安定をつくるのか」が改めて問われています。韓国の元大統領・文在寅(ムン・ジェイン)氏の特別顧問を務めた学者ムン・ジョンイン氏が、地域の新たな秩序像を提示しました。
ムン・ジョンイン氏の提案は何か
ムン氏は、韓国外交の「根本的な転換」として、次の方向性を示しています。
- (イデオロギー的な)価値への“盲目的な執着”から距離を置く
- 相互尊重を通じて国益の最大化を目指す
- 地域の平和こそが生存と繁栄の条件
- 同盟中心の防衛システムから、多国間の安全保障協力へ
- 地域で「オープン・リージョナリズム(開放的地域主義)」を促進
単に理念を掲げるのではなく、「どうすれば地域で戦争を回避し、予測可能性を高められるか」という実務的な問いから組み立てられているのが特徴です。
「価値」ではなく「相互尊重」を前面に出す意味
ムン氏の言う「価値への盲目的な執着から離れる」とは、価値そのものを否定するというより、価値を前面に押し出し過ぎることで対話の余地が狭まり、結果として国益や安定が損なわれる事態を避ける、という問題意識に近い言い回しです。
北東アジアでは、米中関係、日本・韓国・中国本土・ロシア、そして朝鮮半島情勢が複雑に絡みます。価値や陣営の言葉が強くなるほど、相手に「譲歩=敗北」と受け取られやすく、危機管理の回路が細ってしまう——そのリスクを見据えた提案とも読めます。
同盟中心から「多国間安全保障協力」へ:狙いは危機管理
ムン氏は、同盟による抑止を全面的に否定するのではなく、地域全体の安定を支えるために、多国間の協力枠組みへ重心を移す必要性を強調しています。
多国間協力が目指すのは、例えば次のような「衝突を起こさないための技術」です。
- 偶発的衝突を避けるホットラインや連絡メカニズム
- 軍事演習や活動の透明性向上(誤解を減らす)
- 対話の定例化(首脳・外相級に限らず実務層も含む)
こうした仕組みは即効薬ではありません。ただ、摩擦が生まれた瞬間に「話す手段が残っている」こと自体が、抑止と同じくらい現実的な安全保障になり得ます。
「オープン・リージョナリズム」とは何を指すのか
ムン氏が掲げる「オープン・リージョナリズム(開放的地域主義)」は、特定の陣営に閉じた地域統合ではなく、参加や協力の余地を広く取り、経済・安保・人の往来などを現実的に積み上げる発想として語られています。
北東アジアでは、政治・安全保障で緊張が高まっても、貿易やサプライチェーン、人的交流は完全には切れません。そこを「弱点」と見るか、「対立を管理する接点」と見るかで政策は変わります。ムン氏は後者の可能性に賭ける立場だと言えそうです。
この議論が投げかける3つの論点
- 国益の最大化を、軍事・経済・外交のどのバランスで定義するのか
- 多国間協力は理想論で終わるのか、それとも危機管理の「最低限の共通基盤」になり得るのか
- 相互尊重を掲げるとき、難しい争点(朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を含む朝鮮半島、海洋、経済安全保障など)をどう扱うのか
答えは一つではありません。ただ、2026年の現在地から見ると、「対立を前提にしつつ、対話の回路を太くする」という発想が、現実の選択肢として再び注目されていることは確かです。
Reference(s):
South Korean scholar suggests new regional order in Northeast Asia
cgtn.com








