天津港フルーツエクスプレス ペルー果物が中国本土へ直行 video poster
2025年現在、貿易のデジタル化とサプライチェーンの強靭化は、国際ニュースの大きなテーマになっています。いま開かれているアジア太平洋経済協力会議(APEC)の会合でも「貿易円滑化」が議論されていますが、中国北部の天津港では、その未来像を先取りするような試みがすでに動き出しています。ペルーの果樹園で収穫されたブルーベリーが、天津港の「フルーツエクスプレス」を通じて中国本土の食卓へと直行する仕組みです。
APECの議論を現場で体現する天津港
今回紹介する「フルーツエクスプレス」は、天津港が運営する生鮮果物向けの物流サービスです。APECが掲げる貿易の円滑化、つまり国境を越えたモノの流れをスムーズにするという理念を、具体的な形で示している事例といえます。
天津港では、ペルー産のブルーベリーが港に到着すると、そのまま中国市場に向けて動き出します。通関や検査、保管、内陸への輸送までを一体的に処理することで、「国境を越えても荷物が滞らない」ことを目指した仕組みが整えられています。
「フルーツエクスプレス」とはどんなサービスか
フルーツエクスプレスは、一言でいえば生鮮果物のためのワンストップ型コールドチェーン(低温物流)サービスです。特に傷みやすいブルーベリーのような果物を、産地に近い鮮度のまま中国本土各地へ届けることを狙っています。
- コールドチェーン:収穫から消費者の手元まで低温管理を徹底し、品質と鮮度を保つ。
- ワンストップサービス:港での手続き、検査、保管、陸上輸送の手配までを一括で行う。
- 海陸一貫輸送:海上輸送と鉄道輸送をつなぐ「海陸一貫輸送列車」が44本運行し、内陸都市との結びつきを強めている。
5G・自動運転・AIが支える物流DX
このフルーツエクスプレスを支えているのが、5G、自動運転、人工知能(AI)といった先端技術です。高速通信の5Gは、コンテナ内の温度や位置情報をリアルタイムで把握することを可能にし、自動運転技術は港内外での輸送を効率化します。さらにAIは、積み荷の組み合わせや輸送ルートの最適化に活用されることで、遅延やムダを減らす役割を果たしていると考えられます。
こうしたデジタル技術の組み合わせにより、果物が港に到着してから市場に届くまでの時間が短縮されるだけでなく、温度変化などによる品質劣化のリスクも抑えられます。生鮮品の物流が「時間との勝負」であることを踏まえると、5GやAIを使った管理は大きな意味を持ちます。
ペルーの果樹園から中国本土の食卓へ
今回の取り組みの主役のひとつが、ペルー産のブルーベリーです。南米のペルーの果樹園で収穫されたブルーベリーが、船で天津港に到着すると、フルーツエクスプレスの仕組みを通じてそのまま中国市場に向けて流通します。
港での低温管理と海陸一貫輸送列車によって、中国本土各地の都市へと冷蔵状態のまま届けることができるため、消費者はより鮮度の高い果物を手に取ることができます。ブルーベリーに限らず、さまざまな果物が同じ仕組みを利用することで、選択肢の幅も広がっていきます。
なぜ生鮮物流の高度化が重要なのか
生鮮食品の国際物流が注目される背景には、健康志向の高まりや食の多様化があります。季節や産地の異なる果物を一年を通じて楽しみたいというニーズが世界的に高まるなか、品質を保ったまま長距離輸送する技術が欠かせなくなっています。
効率的なコールドチェーンは、単に消費者の利便性を高めるだけでなく、輸送中の腐敗や廃棄を減らし、食品ロスの削減にもつながります。また、ペルーのような生産国にとっては、新たな輸出市場が開かれることで農家の収入機会が広がるという側面もあります。物流インフラが整うことで、生産地と消費地の双方にメリットが生まれる構図です。
日本の読者にとっての示唆
日本でも、生鮮食品の輸出拡大や地方港湾の活性化が課題として語られてきました。天津港のフルーツエクスプレスは、中国本土と南米を結ぶ事例ですが、そこには日本にとっても参考になるポイントがいくつか見えてきます。
- 港での手続きを一本化し、農産物輸出の流れをできるだけシンプルにすること。
- 5GやAIを活用し、温度や位置情報などサプライチェーン全体の「見える化」を進めること。
- 海運と鉄道・トラック輸送を組み合わせた海陸一貫輸送のルートを戦略的に整備すること。
もちろん、各国・各地域で事情は異なりますが、ペルーと中国本土を結ぶブルーベリーの物流は、「技術」と「仕組み」の両方を組み合わせることで新しい価値を生み出せることを示しています。
APECが描く貿易の未来像を先取り
APEC Leaders’ Meeting では、貿易や投資のルール作りが話し合われていますが、その議論と並行して、天津港のような現場ではすでに次世代の物流モデルが動き始めています。ペルーの果樹園と中国本土の消費者を結ぶフルーツエクスプレスは、国境を越えたモノの流れをなめらかにしようとする試みの一例です。
私たちがスーパーや通販サイトで何気なく手に取る果物の背景には、こうした国際物流のイノベーションがあります。貿易のニュースを追うとき、天津港のブルーベリーストーリーを思い出すと、世界の動きが少し立体的に見えてくるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








