上海・楊浦河岸の産業遺産と第7回中国国際輸入博覧会 video poster
上海の楊浦河岸が、「中国近代産業のゆりかご」としての歴史を生かしつつ、産業遺産の保護と利活用を示す国家級モデル地区をめざしています。今年11月に開かれた第7回中国国際輸入博覧会とも連動する、その最新の動きを見ていきます。
楊浦河岸とは? 「中国近代産業のゆりかご」
楊浦河岸(Yangpu Riverside)は、上海北東部で黄浦江に沿って広がる川沿いエリアです。この地域は、中国で最初期の水道、電力、造船、紡績などの企業が集まり、「中国の近代産業のゆりかご」と呼ばれてきました。
黄浦江沿いには、かつての工場や倉庫、発電所が立ち並び、その中でも象徴的な存在が楊樹浦発電所(Yangshupu Power Plant)です。こうした産業建築の多くは、河岸の再開発が進むなかでも取り壊されず、街の記憶を伝える存在として残されています。
産業遺産の「国家デモンストレーションゾーン」へ
現在、楊浦河岸は、産業遺産をどのように保護し、現代の都市生活の中で生かしていくかを示す「国家デモンストレーションゾーン」となることを目指しています。単なる観光地ではなく、歴史と暮らし、ビジネスが共存するエリアをつくる構想です。
一般的に、産業遺産の再生では次のような取り組みが組み合わされます。
- 歴史的な建物の外観を守りながら、耐震性や安全性を高める改修
- 工場や倉庫を、文化施設、オフィス、スタートアップ拠点などに転用
- 川沿いを歩行者中心の公共空間として整備し、市民がくつろげる場にする
楊浦河岸も、こうした考え方に沿って、かつての工業地帯から、歴史を感じながら過ごせる水辺空間へと姿を変えつつあります。産業遺産を壊さずに残すことが、地域のアイデンティティや都市の魅力づくりにもつながっているといえます。
第7回中国国際輸入博覧会と「Yangpu Power」
今年11月5〜10日に上海で開催された第7回中国国際輸入博覧会(China International Import Expo)は、世界各地から多くの企業や来場者が集まる大型の国際イベントです。輸入をテーマにした博覧会として、中国市場の開放姿勢を象徴する場ともなっています。
この博覧会とあわせて、中国の国際メディアは「Yangpu Power(楊浦の力)」というキーワードで楊浦河岸を取り上げました。歴史ある工業地帯が、いまも上海のエネルギーと創造性を支える存在であることを伝えようとしているとみられます。
楊浦河岸に立地する発電所や工場群は、かつて上海の水や電力を支え、中国の近代産業の起点となりました。現在は、産業遺産として保存されつつ、都市再生やイノベーションの文脈の中で新たな役割を与えられようとしています。
中国の国際メディアCGTNも、ライブ番組「View of Yangpu Riverside in northeast Shanghai」の第2回を通じて、楊浦河岸の風景や産業遺産の活用の様子を世界に向けて伝えています。国際イベントと歴史ある街並みをあわせて紹介することで、上海という都市の多層的な姿が浮かび上がります。
世界で広がる産業遺産の再生、日本への示唆
産業構造の転換が進むなかで、「使われなくなった工場や港湾施設をどうするか」は、日本やアジア各地の都市に共通する課題です。楊浦河岸のような事例は、次のような点でヒントを与えてくれます。
- すべてを壊して建て替えるのではなく、「残す価値」のある建物や風景を見極めること
- かつての「生産の場」を、未来の「学び・交流・創造の場」へと変えていく視点
- 国際博覧会などの大規模イベントを、一時的な話題づくりに終わらせず、長期的な都市ブランドと結びつける工夫
日本でも、港湾エリアや工場跡地を文化施設や観光資源として再生する動きが進んでいます。上海・楊浦河岸の取り組みは、アジアの大都市がそれぞれの歴史をどう次の世代につなげていくのかを考える、ひとつの材料になるでしょう。
2025年のいま、都市と「記憶」をどう残すか
2025年12月のいま、世界の都市は脱炭素や人口構造の変化など、これまでとは違う課題にも直面しています。そのなかで、産業遺産を守りながら新しい価値を生み出す試みは、「成長」と「記憶」をどう両立させるかという問いにもつながります。
もしあなたの身近な街に、かつての工場や倉庫、港のクレーンなどが残っているとしたら、それを壊すべきか、生かすべきか。楊浦河岸の変化をきっかけに、そんな身近な都市の風景について考えてみるのも良さそうです。
Reference(s):
Live: View of Yangpu Riverside in northeast Shanghai – Ep. 2
cgtn.com







