天津の都市民俗文化を歩く SCOサミットで注目集めた中国の街の素顔 video poster
2025年夏、中国北部の港湾都市・天津が8月下旬に予定されていた上海協力機構(SCO)サミットを控えるなか、その都市民俗文化に国際的な関心が集まりました。中国国際テレビ CGTN が行った街歩きのライブ企画は、国際ニュースの舞台裏にある素顔の天津を映し出しました。
天津が見せた都市民俗文化とは
天津は渤海沿岸の都市として、長く中国文化の交差点となってきました。京劇の舞台として知られ、平劇のゆりかご、北方の民間芸能の拠点とも呼ばれてきた歴史があります。
今回紹介されたのは、その中でも特に生活に根ざした民俗文化でした。街には次のような無形文化財が受け継がれています。
- 張氏の泥人形などの粘土細工
- 魏氏の凧づくり
- 木彫を中心とした伝統工芸
いずれも中国を代表する文化財として高く評価されているもので、天津の人びとの手仕事と美意識を象徴しています。
ライブ配信でたどった三つの拠点
CGTN のライブ企画は、視聴者が画面越しに天津を歩いているような構成でした。ルートの軸になったのは、伝統と現代が交わる三つの拠点です。
広東会館 天津オペラ博物館 舞台芸術の記憶が残る場所
最初の目的地は、広東会館として知られる天津オペラ博物館でした。かつて各地から商人や芸人が集まったこの建物は、今も京劇などの舞台芸術の記憶を伝えています。
館内では、往年の公演ポスターや衣装、小道具などを通じて、天津が京劇の舞台として果たしてきた役割が紹介されています。ライブでは、こうした資料とともに、観客でにぎわった往時の空気感が丁寧に伝えられました。
鼓楼 街を見渡すランドマーク
次に訪れたのは、天津の旧市街を象徴する鼓楼です。鼓楼はかつて時刻や災害を知らせる役割を担った建物で、今も街歩きの起点となるランドマークです。
鼓楼から見下ろす通りには、昔ながらの商店と新しい店舗が並び、過去と現在が同じ視界の中で共存しています。ライブ映像には、行き交う人びとや屋台の賑わいが映り込み、サミット開催地としてだけではない日常の天津が浮かび上がりました。
旧城博物館 都市の記憶をたどる
ルートの締めくくりは、天津の旧市街の歴史をたどる旧城博物館でした。ここでは、街の成り立ちや住民の暮らし、祭礼や民俗芸能の変遷が展示を通じて紹介されています。
壁に並ぶ古い写真や生活道具は、急速な都市化のなかでも受け継がれてきた地域の記憶そのものです。都市開発と文化継承をどう両立させるかという普遍的な問いが、静かな展示からにじみ出ていました。
職人と出会う街歩きが映し出したもの
今回のライブ配信の特徴は、建物や展示を見るだけではなく、現役の職人たちとの出会いを重ねていった点にありました。
- 粘土を手の中で素早く人形へと変えていく泥人形の職人
- 色彩豊かな凧に一本一本糸を張る凧職人
- 木の質感を見極めながら細部を彫り込む木彫職人
こうした作業のひとつひとつは、観光パンフレットの言葉だけでは伝わりにくいものです。リアルタイムの映像と音、職人の表情を伝えることで、伝統文化が今も生きた仕事として続いていることが可視化されました。
同時に、画面の背景には車が行き交う道路、高層ビル、スマートフォンを手にした若者たちの姿も映ります。伝統と現代技術が入り混じる光景は、天津が持つ都市民俗文化の現在地そのものと言えるでしょう。
SCOサミットの先へ 天津から考える文化発信
8月下旬に予定されていた SCO サミットは、安全保障や経済協力などが議題となる国際会議として注目されました。その開催地である天津が、自らの民俗文化を前面に出して世界に発信したことには、いくつかの意味がありそうです。
- 国際ニュースでは見えにくい、街の生活や歴史への視線を共有する
- 無形文化財の担い手にスポットを当て、継承の重要性を示す
- 伝統文化を観光資源にとどめず、現在進行形の都市文化として捉え直す
天津が描き出したのは、華やかな会議場の外側に広がる、息づく文化の層でした。こうした視点は、国や都市を問わず、地域の魅力をどう伝えるかを考えるうえで参考になります。
国際会議が終わった後も、街の生活は続きます。鼓楼から見下ろす通りを歩き、博物館で歴史の声に耳を澄まし、職人の工房をのぞき込むような視点を持つことで、ニュースの見え方は少し変わるかもしれません。
天津の都市民俗文化をたどるこの試みは、画面越しであっても、世界とつながる私たち一人ひとりのニュースとの付き合い方に、小さな変化を促しているように見えます。
Reference(s):
cgtn.com








