テキサス州の病院に移民ステータス確認義務 医療とプライバシーに波紋 video poster
今年11月1日、米テキサス州で、病院が患者に対して移民ステータスを尋ねることを義務づける新しい法律が施行されました。州の共和党知事は、テキサスの人々が書類のない移民の診療費をどれだけ負担しているのかを把握したいとしていますが、このルールは医療アクセスとプライバシーをめぐる懸念も呼んでいます。
テキサス州で何が起きたのか
新法により、テキサス州内の病院は診療の場で患者に現在の移民ステータスを質問することが求められるようになりました。どのような在留資格で滞在しているのか、あるいは書類のない移民なのかといった情報を、医療機関が把握することになります。
法律の施行によって、医療現場は健康状態だけでなく、移民としての立場にも目を向けざるをえなくなりました。その運用のあり方をめぐって、現地ではさまざまな議論が続いています。
共和党知事が狙うコストの把握
この新しいルールは、州の共和党知事による一連の指示の一部とされています。知事は、テキサスの住民が書類のない移民の治療費をどれほど負担しているのかを正確に知りたいとしています。
医療の現場で移民ステータスを確認し、その結果を集計することで、州の財政負担を可視化しようという発想だとみられます。集められたデータは、今後の移民政策や医療予算の議論の材料として使われる可能性があります。
医療アクセスとプライバシーへの懸念
一方で、州都オースティンから伝えたトニー・ウォーターマン記者によると、この新ルールは医療アクセスとプライバシーをめぐる懸念を呼び起こしています。医療機関が事実上、滞在資格の確認を担うことになるからです。
- 書類のない移民やその家族が、身元を尋ねられることを恐れて病院受診をためらい、症状が悪化するおそれ
- 医療情報が移民当局の取締りと結びつくのではないかという不安
- 病院が安心して相談できる場所ではなくなり、住民と医療機関の信頼関係が損なわれる可能性
- 移民ステータスというセンシティブな個人情報が、どのように管理されるのかが見えにくい点
こうした懸念が現実になれば、救急医療や感染症対策など、地域全体の公衆衛生にも影響が及ぶ可能性があります。誰かが病院に行かないという選択をした結果、本人だけでなく周囲の人々の健康リスクも高まるからです。
安全と人権のバランスをどう取るか
移民政策をめぐる議論が長く続くアメリカでは、税金負担の公平さと、人としての基本的な権利をどう両立させるかが常に問われています。テキサス州の新法は、その葛藤が医療の現場にまで入り込んだ一例といえます。
日本でも、感染症の流行や災害時などに、国籍や在留資格にかかわらず命を守るべきだという議論があります。同時に、限られた医療資源や財政をどう配分するのかという問題も避けて通れません。
病院という、人がもっとも弱い立場に置かれやすい場で、どこまで身分確認を行うのか。医療アクセスとプライバシー、財政の持続可能性をどのように両立させるのか。テキサス州のこの動きを、遠い国のニュースとして眺めるだけでなく、私たち自身の社会のあり方を考えるきっかけとして受け止めることができそうです。
Reference(s):
Texas hospitals now required to ask patients' immigration status
cgtn.com








