国連「2024年は人道支援者の犠牲が過去最悪」―広がる紛争と揺らぐ安全
2024年、国際ニュースの中でも深刻さを増しているのが、人道支援に携わる人々への暴力です。国連人道問題調整事務所(OCHA)は、2024年に入ってから世界で少なくとも281人の人道支援関係者が死亡したと発表し、「過去最悪の年」になったと警鐘を鳴らしました。
2024年は過去最悪の犠牲者数に
OCHAによると、2024年中に死亡した人道支援者は少なくとも281人に上り、これまでで最悪の水準となりました。数字が示された時点ではまだ12月前であり、犠牲が今後さらに増えるおそれがあることもにじんでいました。
国連の人道問題担当の副事務総長で緊急援助調整官を務めるトム・フレッチャー氏は、「人道支援者は前例のないペースで殺害されている。彼らの勇気と人間性は、銃弾と爆弾で報われている」と述べ、暴力の深刻さを強く非難しました。
フレッチャー氏はさらに、紛争当事者や各国に対し、人道支援者を保護し、国際法を順守し、加害者の責任を追及し、「不処罰の時代」に終止符を打つべきだと訴えています。
2023年も過去最悪レベル、記録更新が続く
OCHAは、2023年にも33か国で280人の人道支援者が殺害され、これも当時としては過去最悪の記録だったと指摘します。国連事務総長の報道官ステファン・デュジャリック氏は、2024年の犠牲者数がこの記録を上回ったことについて、「まだ12月にもなっていない」段階での更新だと述べ、その深刻さを嘆きました。
わずか1年の間に「最悪の年」が塗り替えられたという事実は、世界の紛争地で人道支援に携わることの危険性が急速に高まっていることを示しています。
ガザで320人以上の人道支援関係者が死亡
OCHAは、2023年10月7日以降だけで、ガザ地区において320人以上の人道支援関係者が死亡したとしています。多くは、支援活動中に空爆や戦闘に巻き込まれたとみられ、その多くがパレスチナ難民支援を担う国連機関UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の職員でした。
ガザのケースは、人道支援者が「前線から離れた安全な存在」ではなく、むしろ市民と同じように、あるいはそれ以上に危険にさらされている現状を象徴しています。
見えにくいローカルスタッフの犠牲
報道で名前が取り上げられることが多いのは国際機関や大規模NGOの職員ですが、OCHAによれば、2024年に世界で殺害された人道支援者の多くは、各国・地域で活動するローカルスタッフでした。
彼らは、
- 現地NGO
- 国連機関
- 赤十字・赤新月運動
などと連携し、食料配布や医療支援、避難支援といった活動の最前線を担ってきました。現地の言語や文化に精通し、コミュニティに入り込んで活動する一方で、武装勢力や犯罪組織、あるいは無差別の暴力に直接さらされる立場にも置かれています。
アフガニスタンからイエメンまで広がる暴力
OCHAは、アフガニスタン、コンゴ民主共和国、南スーダン、スーダン、ウクライナ、イエメンなど、多くの紛争地域で、人道支援者に対する高いレベルの暴力や嫌がらせが報告されていると指摘しています。
具体的には、
- 殺害・重傷
- 誘拐・拉致
- 脅迫・嫌がらせ
- 理由のない拘束や拘留
などが相次ぎ、人道支援団体の活動そのものが制約を受けています。こうした圧力が強まると、最終的に支援を必要としている市民のもとに物資やサービスが届かなくなるリスクが高まります。
市民の犠牲も急増、紛争の「質」の変化
人道支援者への攻撃は、より広いトレンドの一部に過ぎません。OCHAによると、2023年には14の武力紛争で3万3000人以上の市民死亡が確認され、2022年から72パーセントもの増加となりました。
この数字は、戦闘が都市部や人口密集地で行われることが増え、病院や学校、避難所など、本来守られるべき場所が攻撃対象となっている現実を映し出しています。人道支援者が狙われる社会とは、同時に市民の命が守られにくい社会でもあります。
それでも続く支援活動と国連安保理決議2730
これほどの危険があるにもかかわらず、人道支援団体は活動を止めてはいません。OCHAによれば、2023年だけで、支援団体は約1億4400万人に人道支援を届け、そのうち1億1600万人以上が国際的な人道支援システムの支援を受けました。
命の危険を抱えながら活動を続ける人々の存在があるからこそ、多くの人が食料や医療、避難の手段を得ています。一方で、彼らを守る仕組みを強化しなければ、人道支援そのものが立ち行かなくなる危険もあります。
こうした危機感を受け、国連安全保障理事会は2024年5月、決議2730を採択しました。この決議は、
- 人道支援者やその資産の保護を強化すること
- 攻撃や妨害行為に対する責任追及を徹底すること
- 事務総長に対し、予防と対応のための具体的な措置を提案するよう求めること
などを盛り込んでいます。紛争当事者がどこまで国際法を順守し、この決議に沿った行動を取るかが、今後の焦点になります。
私たちがこのニュースから考えたいこと
人道支援者への暴力のニュースは、日本から見ると遠い世界の出来事のようにも感じられます。しかし、その背後には、戦争や危機の中で「助けを求める声」と「それに応えようとする人々」が確かに存在しています。
紛争地で何が起きているのかを知ること、人道支援を支える国際機関や団体の役割に目を向けることは、遠く離れた場所にいる私たちにできる小さな一歩でもあります。2024年の「過去最悪」という重い数字を、単なる統計ではなく、人ひとりの命の積み重ねとして受け止めることが、次の一歩を考える出発点になりそうです。
Reference(s):
UN: 2024 is worst year on record for deaths of global aid workers
cgtn.com








