ロシアがウクライナへ大規模攻撃 ATACMSへの報復と主張
ロシアがウクライナに対して実施した最新の大規模ミサイル攻撃について、プーチン大統領は、ウクライナ側による米国製ATACMS(エイタクムス)ミサイルの使用への「報復」だと説明しました。本記事では、この動きの背景と今後の焦点を整理します。
ロシアは何を「報復」したのか
ロシアのプーチン大統領は、カザフスタンで開かれた集団安全保障条約機構(CSTO)サミットの場で、今回の大規模な夜間攻撃について言及しました。大統領によると、ウクライナが米国供与のATACMS弾道ミサイルをロシア領内に向けて発射したことへの対応だとしています。
ウクライナ側は11月19日に初めて、西側ロシアに向けてATACMSを使用したとロシアは主張しています。その後も、
- 11月21日:ロシアが新型中距離ミサイル「オレシニク」をウクライナ中部の都市ドニプロに向けて発射
- 11月23日・25日:ウクライナがロシア西部クルスク州にATACMSを発射したとロシアが説明
さらに、ロシア側によれば、ウクライナは英国製のストーム・シャドウ巡航ミサイルも使用し、米国と英国が初めて「ロシア領深部」への攻撃を認めたと受け止めています。
再び狙われたウクライナのエネルギーインフラ
今回のロシアの攻撃は、今月2回目となるウクライナのエネルギーインフラを主な標的としたものとされています。ウクライナ内務省によると、9つの地域で関連施設が損傷しました。
国営送電事業者ウクルエネルゴ(Ukrenergo)は、攻撃による被害を受けて、国内各地で大規模な計画停電を実施すると発表しました。冬場に電力網が繰り返し攻撃されることは、暖房や産業活動、病院など、市民生活全体に深刻な影響を与えかねません。
新型ミサイル「オレシニク」と「迎撃不可能」との主張
ロシアは、11月21日にウクライナの都市ドニプロに対して、新型の中距離ミサイル「オレシニク」を初めて実戦で使用したとしています。プーチン大統領は、このオレシニクについて、ウクライナの防空システムでは迎撃が不可能だと強調しています。
プーチン氏は今回のサミット演説で、今後もロシア領への攻撃が続く場合には、「オレシニク」の実戦テストを継続する可能性を示唆しました。現在、ロシア国防省と参謀本部がウクライナ領内の攻撃目標を選定中であり、
- 軍事関連施設
- 防衛産業などの工業拠点
- 首都キーウ(キエフ)の「意思決定センター」
が対象となり得ると述べています。
これまで約33カ月に及ぶ戦闘の中で、ロシアはウクライナの各種インフラや軍事拠点を攻撃してきましたが、政府省庁や議会、大統領府そのものを直接攻撃したことはないと伝えられています。今回の発言は、そうした「一線」を越える可能性を示唆するものとして注目されています。
プーチン氏「西側の直接関与」発言の意味
プーチン大統領は、米国や英国がウクライナに長射程の兵器を供与し、ロシア領深部への攻撃を認めたことについて、「西側の直接的な関与」だと改めて主張しました。
ロシア側の見方では、
- ATACMSやストーム・シャドウなどの長距離兵器を提供しているのは西側諸国
- これらの兵器の使用方針についても、西側が影響力を持っている
とされており、ウクライナとの戦闘は、ロシアと西側との対立でもあるという構図を強調しています。この発言は、今後の交渉や停戦の枠組みを考えるうえでも重要なポイントになりそうです。
ゼレンスキー氏はどう受け止めているか
ウクライナのゼレンスキー大統領は、夜のビデオ演説で、プーチン大統領によるオレシニクの「宣伝」は、戦争終結への試みを妨げるためのものだと批判しました。
ゼレンスキー氏は、次期米大統領のドナルド・トランプ氏による和平への取り組みに触れつつ、プーチン氏は「誰かが戦争を終わらせることを望んでおらず、むしろそれを邪魔しようとしている」との認識を示しました。具体的には、
- オレシニクという新兵器の誇示によって緊張を一段と高める
- トランプ氏による戦争終結の試みが、エスカレーションによって頓挫することを狙っている
という見方を示し、ロシアが意図的に状況を「より耐え難いもの」にし、戦争を長引かせようとしていると訴えました。
あわせてゼレンスキー氏は、NATOのルト総長、英国のスターマー首相、ドイツのショルツ首相ら西側の指導者たちと協議し、ロシアの攻撃激化にどう対応するかを話し合っていると述べています。
今後の焦点:エスカレーションと市民生活
今回の一連の動きから見えるのは、
- ロシアとウクライナが、より長射程・高性能の兵器を用いて互いの重要インフラを攻撃していること
- ロシアがキーウの「意思決定センター」への攻撃を示唆し、戦闘の性質が変わる可能性があること
- 西側諸国の関与をめぐる認識の違いが、停戦の政治的ハードルを一段と高めていること
です。
とくに、エネルギー施設への攻撃が続けば、ウクライナの人々の生活は一層厳しくなります。停電や暖房不足が長期化すれば、国内の不満や避難の動きが広がる可能性もあります。一方で、ロシア国内の国境地域が攻撃を受けているとの主張も続いており、双方の「報復の連鎖」がどこまで続くのかが懸念されます。
日本の読者が押さえておきたいポイント
日本からこのニュースを見るとき、次のような点が重要になりそうです。
- 長射程ミサイルが実戦投入されることで、戦争のスピードと破壊力が一段と増していること
- エネルギーインフラへの攻撃は、戦場だけでなく世界のエネルギー市場や物価にも波及し得ること
- 次期米政権の対ロシア・対ウクライナ政策が、今後の戦況と停戦の可能性を左右する可能性があること
戦争が長期化するなかで、日々のニュースの断片を追うだけでは全体像をつかみにくくなっています。今回のロシアの攻撃とその説明、ウクライナ側の反応は、「どこまでエスカレートするのか」「誰が、どのような形で終わらせようとしているのか」という二つの問いを改めて突きつけています。
今後も、ウクライナ情勢と米欧の対応を丁寧に追いながら、日本にとっての安全保障やエネルギー、経済への影響を考えていくことが求められます。
Reference(s):
Russia says massive attack on Ukraine a response to ATACMS strikes
cgtn.com








