イラン裁判所、2010年チャーバハール「テロ攻撃」で米国に1億7千万ドル賠償命令
イラン南東部チャーバハールで2010年に起きた自爆「テロ攻撃」をめぐり、テヘランの裁判所が米国政府と米当局者に対し、総額1億7,000万ドル(約)超の賠償を命じたと報じられました。過去の同攻撃に関する巨額賠償命令に続く動きで、イランと米国の対立が司法の場にも広がっていることがうかがえます。
今回の判決のポイント
イラン司法当局の通信社ミザンによりますと、判決はテヘラン司法府第55支部が下したもので、犠牲者遺族や生存者など6人が原告となりました。具体的には、次のような内容です。
- 被告:米国政府および米国の当局者
- 事件:2010年、チャーバハールで起きた自爆「テロ攻撃」
- 賠償総額:1億7,000万ドル
- 内訳:
- 原告への物的・精神的損害賠償 7,400万ドル
- 懲罰的損害賠償 9,600万ドル
判決日そのものは公表されていませんが、ミザンが日曜日に伝えたところによると、この決定は原告側の訴えを認め、米国側に賠償責任があると認定したものです。
2010年チャーバハール攻撃とは
問題となっている攻撃は、2010年12月中旬、イラン南東部の港湾都市チャーバハールで発生しました。報道によると、モスク前で宗教的な追悼行事のために集まっていた人々を狙った自爆攻撃で、次のような被害が出ています。
- 死亡者:39人
- 負傷者:70人
人々が宗教行事のために集まっていた場所を狙った攻撃だったことから、イラン国内では大きな衝撃と怒りが広がりました。
イラン側の主張:米国は「テロ組織」を支援
ミザンによると、イランの裁判所は、米国政府と米当局者が、この攻撃の実行を主張した武装組織「ジュンダッラ」を支援していたと認定しました。判決は、この組織を「テロ組織」と位置づけ、その支援を通じて米国側に攻撃への関与があると結論づけたと伝えられています。
つまり、イラン側は、爆発を直接行った人物だけでなく、その背後で支援したとされる主体にも責任を問うべきだと判断し、その対象として米国政府を位置づけていることになります。
2回目となる対米賠償命令
今回の判決は、同じ2010年チャーバハール攻撃をめぐるものとしては2度目だと報じられています。ミザンによると、2023年には、別の被害者や遺族93人が起こした訴えに対し、同じイランの裁判所が米国におよそ26億6,000万ドルの賠償を命じていました。
これまでに報じられている判決を整理すると、以下のようになります。
- 2023年:
- 原告:負傷者・遺族など93人
- 賠償額:26億6,000万ドル
- 今回の判決:
- 原告:6人
- 賠償額:1億7,000万ドル(うち懲罰的損害9,600万ドル)
同じ事件をめぐって複数の訴訟と賠償命令が積み重なっている構図が見えてきます。
被害者家族にとっての意味
こうした判決は、実際に賠償金が支払われるかどうかとは別に、被害者や遺族にとって「自分たちの被害が公式に認められた」という象徴的な意味を持つことが少なくありません。イランの裁判所が、国内の司法手続きの中で責任の所在を明確にしようとしている姿勢がうかがえます。
また、懲罰的損害賠償が含まれている点からは、単なる補償を超えて、将来同様の行動を抑止するというメッセージ性も読み取れます。
国際関係と司法の交差点
今回のように、一国の裁判所が別の国の政府を被告として損害賠償を命じるケースは、国際政治と司法が交差する典型的な事例といえます。一般に、外国政府には「主権免除」と呼ばれる保護の考え方があり、他国の裁判所で裁かれることには厳しい制約が伴います。
その一方で、各国の国内裁判所が、自国民の被害に対する責任を外国政府に求めようとする動きも存在します。こうした「司法の場での対立」は、外交交渉や制裁、国際機関での議論と並び、国家間関係の一つのフロントになりつつあります。
これからの注目ポイント
今後の焦点となるのは、こうした判決がどのように扱われていくかです。外国政府を相手取った賠償命令を、実際に履行させるのは容易ではないとされますが、それでも判決自体が外交や世論に影響を及ぼす可能性はあります。
2010年のチャーバハール攻撃からすでに長い年月が経ちましたが、被害者や遺族にとっては、いまもなお過去の事件をめぐる責任追及と記憶の継承が続いていることが、今回の報道から見えてきます。イランと米国という二つの国家の対立と、ひとりひとりの被害の物語。その間をつなぐ「司法」という場が、これからどのような役割を果たしていくのかが問われています。
Reference(s):
Iranian court orders U.S. to pay $170m for 2010 'terrorist attack'
cgtn.com








