国連高官が警鐘 コンゴ民主共和国ゴマで暴力激化と人道危機
コンゴ民主共和国(DRC)東部の都市ゴマで暴力が急激に激化し、病院や難民関連施設への砲撃が報告されています。国連高官は「新たな暴力と苦難の段階」に入ったとして、深刻な人道危機への強い懸念を示しました。
病院やUNHCR拠点にも着弾 市民が直撃を受ける
今週月曜日(現地時間)、国連事務総長副特別代表であり、DRCの常駐・人道調整官を務めるブルーノ・ルマルキス(Bruno Lemarquis)氏は、ゴマ中心部に重砲が着弾し、病院と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の拠点が被害を受けたと明らかにしました。
ルマルキス氏によると、ゴマ中心部にあるチャリティ産科病院には複数の砲弾が落下し、市民が死亡・負傷したほか、新生児や妊婦も犠牲となりました。同市内のSave the Children関連施設やUNHCRの施設も攻撃を受けましたが、こちらでは死傷者は確認されていないとしています。
一方で、ゴマ(北キブ州の州都)の病院はすでに患者であふれており、受け入れ能力を超えているといいます。現場の医療体制が限界に近づいていることがうかがえます。
70万人規模の国内避難民が再び移動 「選択肢は逃げることだけ」
ルマルキス氏は、約100万人が暮らすゴマで、残っている国連スタッフは「人道支援の中核を担う最小限の要員だけ」だと説明しました。必要不可欠ではない国連職員やその家族は、首都キンシャサやウガンダの地域連絡拠点エンテベに退避させられています。
同氏によれば、ゴマおよび周辺地域にはこれまでに約70万人の国内避難民が劣悪な環境で避難生活を送ってきましたが、週末以降の戦闘激化により、こうした避難民が再び移動を余儀なくされています。
「彼らには選択肢がありません。ただ暴力から逃れるしかないのです」とルマルキス氏は述べ、数十万人規模の人々が新たにゴマからの脱出を試みていると報告しました。安全な場所を求めて何度も避難を繰り返すことは、生活基盤の崩壊を意味します。
平和維持活動も犠牲に 「力の均衡が変化」する戦況
国連平和維持活動局のトップであるジャン=ピエール・ラクロワ(Jean-Pierre Lacroix)国連事務次長(平和維持担当)も、ダマスカスからビデオ会見を行い、現地の治安情勢を「不安定かつ極めて危険」と表現しました。
ラクロワ氏は、現地で活動する国連平和維持要員の多くが身を守るためのシェルターに避難せざるを得ない状況にあり、その行動能力が制約されていると説明。そのうえで、
「M23とRwanda Defense Forces(ルワンダ国防軍)に有利な形で大きな前進が起きており、力の均衡が変化している」と述べました。
同氏はまた、人道状況を「非常に困難」と評し、「大規模な人道的惨事に発展するリスクは非常に高い。さらに、より広範な戦争に発展する危険も回避したい」と警鐘を鳴らしました。
この間の戦闘では、国連平和維持要員3人(南アフリカ出身2人とウルグアイ出身1人)が死亡し、12人が負傷したとされています。政府軍側にも死傷者が出ているという報告もあり、武力衝突が激しさを増していることがうかがえます。
崩れゆくライフライン 情報遮断の懸念も
ルマルキス氏は、ゴマの「基礎的な生活インフラも危機的な状況に近づいている」と指摘しています。水や電気の供給は不安定になりつつあり、インターネットサービスは遮断。一方で、電話回線はまだ機能しているものの、つながりにくい状態だといいます。
都市部での戦闘が長引くと、こうしたライフラインの麻痺が市民生活や人道支援に深刻な影響を及ぼします。特に、通信が不安定になると、
・攻撃や避難の情報が住民に届きにくくなる
・人道団体や国連が現場のニーズを把握しにくくなる
・誤情報や噂が広がりやすくなる
といった問題が生じ、危機はさらに深刻化しかねません。
なぜ遠くの紛争を追う必要があるのか
日本から見れば、コンゴ民主共和国東部のゴマで何が起きているのかは、地理的にも心理的にも「遠い」ニュースに映るかもしれません。それでも、2025年12月8日現在、国連高官がそろって強い危機感を示しているという事実は、国際社会にとって重い意味を持っています。
今回の報道から浮かび上がる論点を、いくつか整理してみます。
- 医療機関と市民保護の問題
産科病院や人道支援施設といった、もっとも守られるべき場所が攻撃を受けているという報告は、国際人道法の根幹である「市民と医療機関の保護」が改めて問われていることを示します。 - 「多重避難」を強いられる国内避難民
すでに避難生活を送る人びとが、再び逃げざるを得ない状況は、紛争の長期化と安全な定住先の欠如を意味します。避難は一度きりでは終わらないことが多く、そのたびに生活再建は難しくなります。 - 平和維持活動の限界とリスク
平和維持要員自身が避難し、犠牲者も出ているという状況は、現場の暴力の度合いが、国連の活動にとっても極めて厳しい段階にあることを示しています。
ラクロワ氏が語った「大規模な人道的惨事」と「より広範な戦争」のリスクは、アフリカの一地域にとどまらない国際的な懸念でもあります。遠くで進行している危機を丁寧に追うことは、国際ニュースを通じて私たち自身の価値観や優先順位を見直すきっかけにもなります。
ゴマの情勢は、2025年12月8日現在も流動的なままです。今後、国連や人道団体がどこまで市民保護と支援のための空間を確保できるのか、また暴力のさらなる拡大を抑えられるのかが、大きな焦点となります。
Reference(s):
cgtn.com








