米12州がトランプ政権を提訴 違法な関税めぐり通商政策を争点に
2025年4月、米国で新たな通商をめぐる法廷闘争が始まりました。アリゾナなど12州の司法長官が、ドナルド・トランプ大統領の政権による関税措置は違法だとして、ニューヨークの米国国際貿易裁判所に提訴したのです。世界の通商と金融市場にも影響しうる国際ニュースとして、いまも注目が集まっています。
何が起きたのか
提訴したのは、アリゾナ、コロラド、コネティカット、デラウェア、イリノイ、メイン、ミネソタ、ネバダ、ニューメキシコ、ニューヨーク、オレゴン、バーモントの12州です。各州の司法長官が連名で訴えを起こし、政権が進める新たな関税を差し止める命令を裁判所に求めています。
今回の訴えは、その1週間前に人口最多のカリフォルニア州が同様の主張でトランプ政権を提訴した動きに続くものです。カリフォルニア州が最初の一歩を踏み出し、その後12州が追随したかたちで、州政府対連邦政権という構図が鮮明になりました。
州側の主張:通商政策が大統領の気まぐれに左右
12州の訴状は、国家の通商政策がトランプ大統領の「気まぐれ」に左右されていると批判し、関税措置そのものを違法と宣言するよう裁判所に求めています。また、関税を執行する政府機関や担当官に対して、その履行を禁じるよう命じることも要請しています。
訴状によると、大統領が緊急経済関連の法律を発動できるのは、本来は海外からの異常かつ並外れた脅威が存在する場合に限られるとされています。州側は、今回のケースはその条件を満たしていないと主張しています。
さらに訴えは、大統領が自らが望むどのような輸入品にも、都合のよい理由で緊急事態を宣言して巨額で変動的な関税を課す権限を主張することで、立憲秩序を覆し、米国経済に混乱をもたらしたと厳しく批判しています。
物価高と雇用への影響を懸念
提訴を主導した一人であるニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームズ氏の事務所は、声明で「議会は大統領にこのような関税を課す権限を与えておらず、政権が大統領令やソーシャルメディア投稿、各省庁の命令によって関税を発動したことは法律違反だ」と指摘しました。
ジェームズ氏は、これらの関税がこのまま続けば、インフレの加速や失業の増加、さらなる経済的損失を招くと警鐘を鳴らしています。物価上昇と雇用不安というダブルの打撃が、一般の市民生活を直撃すると懸念しているのです。
ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事も声明で、トランプ大統領の「無謀な関税」によって消費者の負担が急増し、米国全土で経済的な混乱が広がっていると述べました。州レベルの指導者がそろって関税に反対の声を上げている点も、今回の訴訟の特徴です。
ホワイトハウスは「国家の緊急事態」と反論
これに対し、ホワイトハウスの報道担当者クシュ・デサイ氏は、政権は「米国の産業を衰退させ、労働者を取り残している国家的な緊急事態」に対応するため、関税から交渉まであらゆる手段を使う姿勢を崩していないとコメントしました。
デサイ氏の発言からは、政権が今回の関税を、国内産業と雇用を守るために必要な措置と位置づけていることがうかがえます。州側が「違法」だと訴える関税を、政権側は「緊急事態への対処」として正当化しており、法的な解釈だけでなく経済政策の評価をめぐる対立も浮き彫りになっています。
4月2日の大統領令と「相互主義」関税
トランプ大統領は今年4月2日、ホワイトハウスで大統領令に署名し、国際緊急経済権限法を発動して国家の緊急事態を宣言しました。そのうえで、米国の全ての貿易相手に対して、いわゆる「相互主義」関税を課す方針を打ち出しました。
相互主義関税とは、相手国が米国製品に課している関税水準などを参考にして、それに見合う関税を米国側も課すという考え方にもとづく措置とされています。対象が全ての貿易相手に及ぶことから、事実上、世界中との貿易関係を一度に揺るがしかねない決定です。
この動きは、国際社会や米国内で強い反発を呼び、金融市場にも大きな動揺をもたらしました。米国が全ての貿易相手に一律で新たな関税を課すとなれば、投資家心理が悪化し、株価や通貨などの市場に不安が広がるのは自然な流れです。
なぜ日本からも注目すべきか
今回の一連の訴訟は、単に米国内の政争にとどまりません。米国大統領がどこまで単独で通商政策を動かせるのか、議会との権限分担をめぐる憲法上の論点が問われているからです。これは、民主主義国家における権力のバランスという観点からも注目されます。
また、米国が全ての貿易相手に対して相互主義関税を導入する方針を示したことは、日本を含む各国・地域との貿易にも影響が及びうることを意味します。2025年4月の関税発動と、それに続く金融市場の混乱は、米国の通商政策が世界経済全体の不安要因になりうることを改めて示しました。
12州とカリフォルニア州による提訴が、今後どのような司法判断につながるのか。通商政策と立憲主義、そして世界経済の行方を考えるうえで、引き続き注視すべき動きだと言えるでしょう。
Reference(s):
Twelve U.S. states sue Trump administration over 'illegal tariffs'
cgtn.com








