米国で学生ローン回収が再開 数百万人の滞納者に影響拡大
米国で学生ローン滞納者への回収が再開 数百万人に影響
米国の学生ローン(学資ローン)を巡り、2020年春から停止されていた滞納者への本格的な回収が今年4月21日に再開しました。新型コロナウイルス禍で導入された救済措置が終わり、数百万人規模の借り手が現実と向き合わざるをえない状況になっています。
2020年から止まっていた取り立てが再始動
米教育省は、2020年3月に新型コロナの影響を受けて、連邦政府が扱う学生ローンの返済と利息の発生を一時的に停止しました。この間、延滞や債権回収機関への移管も凍結されていました。
しかし今年4月21日(月)、教育省は債務不履行(デフォルト)状態にある借り手への回収を再開。およそ4300万人に上る連邦学生ローンの借り手のうち、これまでに定期的な返済を続けてきたのは3分の1強にとどまるとされています。
税金還付・給与・給付から自動で天引き
今回の回収再開の柱となるのが、米財務省のプログラムです。これにより、返済が滞った借り手に対して次のような措置が可能になります。
- 連邦所得税の還付金を全額差し押さえる
- 連邦政府職員の手取り給与の最大15%を差し押さえる
- 社会保障給付やその他の政府給付の一部を差し押さえる
教育省の連邦学生援助局は、この夏以降に給与差し押さえ(賃金の天引き)に関する通知を送付するとしていました。借り手が通知に対応せず、返済が続けて行われない場合、実際に差し押さえが行われる可能性があります。
「納税者を担保にしない」政府側の論理
回収再開を発表したニュースリリースの中で、リンダ・マクマホン米教育長官は、学生ローン政策を巡るこれまでの対応を批判しながら、次のように述べました。
「米国の納税者は、無責任な学生ローン政策の担保として扱われ続けるべきではありません。」
政府側は、返済が滞ったローンを放置すれば、最終的な負担が納税者にしわ寄せされると主張し、回収再開は財政規律の観点から必要だと位置づけています。
滞納がもたらす個人へのダメージ
一方で、デフォルト状態の借り手には重い負担がのしかかります。返済を行わなければ、前述のような税金還付や賃金、社会保障の差し押さえに加え、信用情報(クレジットスコア)が大きく傷つく可能性があります。
クレジットスコアが下がると、将来、住宅ローンや自動車ローン、クレジットカードなどの審査が通りにくくなり、通っても高い金利を求められるなど、生活全般に長期的な影響が出かねません。
米信用情報会社トランスユニオンのリサーチ責任者、ミシェル・ラネリ氏は、声明で次のように分析しています。
「どの程度の懸念があるかは、借り手が連邦学生ローンを返済してこなかった理由によって異なります。単に返済能力がなく、すでに家計が限界まで逼迫している人もいれば、そもそも支払い再開の必要性を知らなかったり、どのように返済すればよいかの情報にアクセスできなかったり、あるいはさまざまな理由から支払う意思が持てない人もいるでしょう。」
同社の新たな分析によると、借り手のおよそ5人に1人は、支払いが90日以上遅れている「深刻な延滞」状態にあるとされています。こうした層は、デフォルトや差し押さえに至るリスクが特に高いとみられます。
物価高と生活費の重圧 支援団体は警鐘
インフレと生活費の高騰に直面するなかで、学生ローンの返済が再開したことにより、多くの借り手が家計のやりくりに苦しんでいると指摘する声もあります。
学生債務の軽減・免除を訴える非営利団体「Student Debt Crisis Center」のサブリナ・カラザンズ氏は、米メディアの取材に対し、現在の状況を「これまでで最悪の学生ローン環境だ」と表現しました。
カラザンズ氏は、トランプ政権が示している学生ローン政策の計画や提案について、「何百万人もの個人と家族を傷つける」と懸念を示し、「人々が基本的な生活必需品すら賄えなくなるような、金融上の大惨事を生みかねない」と警告しています。こうした見方は、借り手の生活防衛と財政規律をどう両立させるかという難しさを浮き彫りにしています。
日本の読者にとっての示唆 学生ローンと社会の関係
今回のニュースは、米国の制度に関する話である一方で、日本の私たちにとっても他人事ではありません。日本でも、大学などの進学にあたり奨学金や教育ローンに頼る人は少なくなく、その返済負担が人生設計やキャリア選択に影響を与えるケースがあります。
学生ローンを巡る議論は、単に「借りたお金を返すかどうか」という個人の問題にとどまりません。高等教育の費用を誰がどのように負担するのか、所得や資産の格差を教育を通じてどう是正していくのか、といった社会全体の設計と深く結びついています。
この記事から考えたい3つのポイント
- コロナ禍での一時的な救済措置が終わったあと、どのように「平時のルール」に戻すべきなのか。
- 返済能力が十分でない人への支援策と、納税者への負担のバランスをどう取るのか。
- 教育費の負担構造そのものを見直す必要があるのか、それとも既存制度の調整で対応できるのか。
米国の学生ローン問題は、日本を含む多くの国・地域が直面しつつある「教育と格差」の課題を映し出す鏡でもあります。ニュースをきっかけに、自分や身近な人の教育とお金の関係について、あらためて対話を始めてみるのも一つの方法かもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








