ウクライナ危機:ゼレンスキー氏、トランプ米大統領に「中東型の和平仲介」を要請
ウクライナのゼレンスキー大統領が、米国のドナルド・トランプ大統領との電話会談で、イスラエルとハマスの停戦仲介を踏まえ、ウクライナ危機でも同様の和平仲介を求めました。国際ニュースとしての重みだけでなく、中東とウクライナという二つの戦争がどのようにつながり始めているのかが見えてきます。
ゼレンスキー氏「一つの戦争が止まるなら、他も止められる」
電話会談は土曜日に行われ、ゼレンスキー大統領はトランプ大統領に対し、ウクライナでの和平仲介を強く要請しました。会談内容について、ゼレンスキー氏はフェイスブックへの投稿で、トランプ氏との通話を「非常に前向きで生産的だった」と振り返っています。
ゼレンスキー氏は、トランプ大統領がイスラエルとハマスの間でまとめた停戦合意の第1段階を「傑出した計画」と評価しました。そのうえで、「一つの地域で戦争が止められるのなら、他の戦争も止められるはずだ。ロシアの戦争も含めて」と述べ、ウクライナ危機を終わらせるためにクレムリンへの圧力を強めてほしいと呼びかけました。
ゼレンスキー氏のメッセージは端的です。中東で停戦を仲介できるリーダーであれば、ウクライナでも同じ役割を果たせるはずだ――という期待と、国際社会に向けた間接的なメッセージでもあります。
背景:エネルギーインフラへの大規模攻撃と停滞する和平
今回の電話会談は、ロシアがウクライナのエネルギー網への大規模攻撃を行った翌日に行われました。ロシア側は、攻撃対象となったエネルギー施設がウクライナ軍の軍需部門を支える拠点になっていると主張しています。
ウクライナ当局によると、土曜日のロシア軍の攻撃で少なくとも5人が死亡し、南部オデーサ州の一部地域では停電が発生しました。冬場に向かうなかでの電力網への打撃は、市民生活と産業、そして軍事面のいずれにも長期的な影響を及ぼす可能性があります。
一方で、ロシアの地方当局によれば、ウクライナ軍による無人機(ドローン)攻撃によりロシア側でも2人が死亡したとされています。戦闘は国境を挟んでエスカレートと抑制を繰り返し、双方の市民が犠牲となっている状況です。
2025年12月現在、ウクライナ危機をめぐる外交的な解決に向けた動きは鈍化していると、キーウ(キエフ)は訴えています。その一因として、世界の関心がイスラエルとハマスの衝突に大きく傾いていることが挙げられています。メディアも外交資源も中東に集中するなかで、ウクライナ危機は「第二の優先事項」に押しやられつつある、という見方です。
ロシアは、和平交渉が進まない責任はウクライナとその欧州の支援国にあると主張し、ワシントンとの交渉を妨げていると非難しています。一方、ウクライナと欧州側は、ロシアが時間を稼ぎ、その間にウクライナ領土の掌握を進めようとしているとみています。両者の主張は真っ向から対立し、互いに相手を「行き詰まりの原因」として非難し合う構図が続いています。
トランプ氏はウクライナ危機を動かせるのか
トランプ大統領は今週、水曜日にイスラエルとハマスの間で停戦合意の第1段階を発表し、中東和平における仲介役としての存在感を示しました。その一方で、今年8月にはロシアのプーチン大統領とも会談しましたが、ウクライナ危機をめぐる具体的な和平合意には至りませんでした。
今回、ゼレンスキー氏はあらためて、トランプ氏がロシア側に影響力を行使し、交渉のテーブルに復帰させることを期待しています。しかし、現実にはいくつかのハードルがあります。
- ウクライナ、ロシア双方の間にある深い不信感
- 領土問題など、どこまで譲れるのかという根本的な条件の違い
- 欧州各国や国際機関をどう交渉枠組みに組み込むかという手続き面の課題
中東での停戦合意は、当事者同士に加え、周辺国や米国など複数のアクターが関与する複雑なプロセスでした。ウクライナ危機の場合も、米ロだけでなく、ウクライナ、欧州諸国、さらには他地域の国々を含めた多層的な調整が不可欠になります。
このため、トランプ大統領が単独で「すべてを解決する」ことは現実的ではないものの、中東での実績をきっかけに、停滞していた協議に再び政治的な勢いを与えられるかどうかが注目されています。
中東の「モデル」はウクライナに通用するのか
ゼレンスキー氏が語った「一つの戦争が止められるなら、他も止められる」という言葉は、直感的には分かりやすいメッセージです。しかし、イスラエル・ハマス間の停戦プロセスをそのままウクライナに当てはめることには、いくつかの問いが残ります。
- 停戦ラインや監視メカニズムを誰がどのように担保するのか
- エネルギーインフラや民間地域への攻撃をどう止め、再発を防ぐのか
- 長期的な安全保障の枠組みを、ウクライナ、ロシア、欧州、米国の間でどう設計するのか
中東での停戦は、「完全な和平」ではなく、あくまで戦闘のエスカレーションを抑えるための第一歩という側面が強いものです。同様に、ウクライナ危機においても、いきなり包括的な最終合意を目指すのではなく、まずは民間人への攻撃を抑制し、エネルギーインフラを守るための限定的な合意から積み上げていくという発想もあり得ます。
今回の電話会談は、その一歩を踏み出すために、ゼレンスキー氏がトランプ氏に対して「中東の成功例をウクライナにも応用してほしい」と求めた瞬間だったとも言えます。2025年の国際ニュースの大きなテーマであるウクライナ危機と中東情勢が、外交の現場で徐々に「つながり始めている」ことを示す動きとも受け取れます。
私たちが注目しておきたいポイント
今後の展開を見ていくうえで、読者として押さえておきたい論点は次のようなものです。
- トランプ大統領がウクライナ危機にどこまで政治的な時間と資源を割くのか
- ロシアが、どの条件であれば実質的な交渉に応じるのか
- 中東とウクライナ、二つの戦争に対する国際社会の関心と支援がどう配分されていくのか
ウクライナの前線での戦闘と同じくらい、外交の場で何が起きるのかも重要です。ゼレンスキー氏の電話一本がすぐに戦争を止めるわけではありませんが、停滞していた和平プロセスを動かすきっかけになる可能性はあります。
中東とウクライナ、離れた二つの戦場をどう同時に見ていくのか。日々流れる国際ニュースの背後にあるこうした問いを意識しておくことが、2025年の世界情勢を読み解くうえでのヒントになりそうです。
Reference(s):
Zelenskyy urges Trump to end Ukraine crisis like in 'the Middle East'
cgtn.com








