ベネズエラ、米国のタンカー拿捕に反発 マドゥロ大統領「平和と安定を守る」
ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が、米国による相次ぐ原油タンカー拿捕や追跡を受けて「国家の平和と安定を守り抜く」と表明しました。原油に深く依存する同国経済と、制裁をめぐる国際秩序への影響が注目されています。
「25週連続の攻撃」マドゥロ大統領の発信
マドゥロ大統領は今週日曜日、ソーシャルメディアへの投稿で、ベネズエラが「25週連続の攻撃」にさらされていると主張しました。その内容は、心理的テロと表現する情報戦から、原油タンカーの「海賊行為」としての奪取まで、多岐にわたるとしています。
そのうえで、経済的・政治的な困難が続くなかでも、「ベネズエラ国民とすべての社会セクターは、国家の平和と安定を守るために揺るがない」と強調しました。
2週間足らずで3隻目の可能性 相次ぐタンカーへの介入
マドゥロ氏の発言と前後して、米国メディアは、ベネズエラ近海の国際水域で、米沿岸警備隊が原油タンカーを追跡・拿捕していると相次いで報じています。
米NBCニュースによると、米政府高官は、米沿岸警備隊が制裁対象とされる「ダークフリート(制裁逃れの船団)」に属するタンカーを「積極的に追跡している」と説明しました。このタンカーは偽の旗国を掲げて航行しており、米国の司法当局による差し押さえ命令の対象になっているとされています。
ブルームバーグによれば、「ベラ1(Bella 1)」と呼ばれるタンカーは、ベネズエラで原油を積み込む途中の航行中に米当局者が乗船し、その後も追跡が続いていると伝えられました。もし拿捕されれば、原油産出国であるベネズエラと関係するタンカーとして、ここ2週間足らずで3隻目の米国による拿捕となります。
その前日には、パナマ船籍の大型タンカー「センチュリーズ(Centuries)」がベネズエラ沖で米沿岸警備隊の臨検を受けました。このタンカー自体は米国の制裁リストには載っていませんが、ホワイトハウスの報道官はSNS「X」で、同船の積み荷の原油は、制裁対象となっているベネズエラ国営石油会社PDVSAが供給したものだと主張しました。
さらに今月10日には、「スキッパー(Skipper)」と呼ばれるタンカーがベネズエラ海域近くで米軍に拿捕され、原油貨物の徴収が発表されています。
トランプ政権の「完全封鎖」命令とテロ指定
今月16日、米国のドナルド・トランプ大統領は、ベネズエラ向けおよび同国から出港する制裁対象タンカーに対する「完全かつ徹底した封鎖」を命じました。同時に、マドゥロ政権を「外国テロ組織」に指定したと発表しています。
ベネズエラ国営石油会社PDVSAは、すでに米国の制裁対象となっており、原油取引や資産凍結などに制限が課されています。今回の一連の拿捕や追跡は、そうした制裁の実行を、海上輸送の段階で徹底する狙いがあるとみられます。
一方、ベネズエラ側は、米国がラテンアメリカでの「体制転換」や軍事的影響力の拡大を図っていると非難し、タンカー拿捕を「海賊行為」だと強く批判しています。
原油依存経済への打撃とラテンアメリカの反応
民間のタンカー追跡サービス「TankerTrackers.com」によると、米国の制裁リストに載る多数のタンカーが現在もベネズエラ海域に停泊したままになっています。原油輸出はベネズエラの外貨獲得のほとんどを占めるとされていて、輸出の停滞は財政だけでなく、輸入品に依存する生活物資や医薬品の不足にも直結しやすい構造です。
ベネズエラ政府は、こうした圧力が国内経済と国民生活に深刻な影響を与えると警告しています。また、キューバを含む地域の指導者たちからも、米国の措置に対する批判や懸念の声が伝えられています。
制裁と国際海洋秩序をめぐる問い
今回の事案は、経済制裁をどこまで域外で強制できるのか、という国際法上の論点も含んでいます。米国は、制裁逃れを防ぐための法執行だと説明する一方で、ベネズエラは主権侵害と主張しており、双方の見方は大きく食い違っています。
原油市場にとって、ベネズエラ産原油の量は世界全体から見れば限定的だとしても、制裁と拿捕の連鎖が長引けば、タンカー保険や海上輸送コストの上昇などを通じて、じわじわと波及する可能性があります。エネルギー価格に敏感なアジアや欧州の輸入国にとっても、決して無関係とは言えない動きです。
ベネズエラ政府と米国が、制裁と安全保障、国際海洋秩序のバランスをどのようにとっていくのか。25週に及ぶとされる緊張の先行きは、ラテンアメリカ地域だけでなく、世界の原油市場にとっても重要な注視点となっています。
Reference(s):
Maduro says Venezuela steadfast in defending national peace, stability
cgtn.com








