ASMLのEUV光源が1kWへ前進 2030年にチップ生産最大50%増の可能性
半導体の“量産力”を左右するEUV(極端紫外線)露光で、ASMLが光源出力を大きく高める手法を示しました。2030年ごろまでに生産量を最大50%押し上げ得るという見立てで、先端チップの供給力とコストに直結しそうです。
何が起きた? ASMLが「1,000ワット」を現実の運用条件で示す
ASMLの研究者は今週月曜日、同社のEUV光源(EUVを作るための光の発生部分)について、1,000ワット(1kW)の出力を満たす仕組みを明らかにしました。主担当のマイケル・パービス氏は、短時間のデモではなく、顧客の工場に近い要求条件でも動く「システム」だと説明しています。
ASMLは、商業向けのEUV露光装置を製造できる世界で唯一の企業とされ、先端半導体を作るうえで欠かせない装置を供給しています。今回の前進は、装置の“心臓部”にあたる光源の能力を、量産に効く形で引き上げる話です。
なぜ重要? 出力が上がると「1時間あたりの生産」が増える
半導体の回路は、写真の焼き付けに似た工程でシリコンウエハーに転写されます。EUV光を、感光材(フォトレジスト)を塗ったウエハーに照射してパターンを形成します。
ポイントはシンプルで、より強いEUV光を当てられれば、必要な露光時間が短くなることです。露光が速くなれば、同じ装置でも処理できるウエハー枚数が増え、結果として1個あたりのチップコストを下げやすくなります。
ASMLのEUV装置(NXEライン)を担当するトゥーン・ファン・ゴッホ氏は、顧客がEUVをより低コストで使い続けられるようにしたい、という趣旨を語っています。
2030年の目標:1台で「毎時330枚」へ(現在は220枚)
ファン・ゴッホ氏によると、2030年の終わりまでに、EUV装置1台あたりの処理能力が毎時330枚のウエハーに到達する見通しだといいます。現在の水準は毎時220枚で、ここが伸びると量産力の見え方が変わります。
1枚のウエハーには、チップのサイズに応じて数十〜数千のデバイス(個々のチップ)が入ります。つまり、ウエハー処理の伸びは、供給量・納期・価格に波及しやすい指標です。
どうやって1kWに? 錫の液滴とCO2レーザーで“太陽より熱い”プラズマを作る
EUV(波長13.5ナノメートル)を作る工程は、現代でも屈指の複雑さだといわれます。ASMLの方式は概ね次の流れです。
- 溶けた錫(すず)の微小な液滴をチャンバー内に高速で流す
- 強力な二酸化炭素(CO2)レーザーで加熱し、錫をプラズマ(超高温で電子が飛び出した状態)にする
- 発生したEUV光を、独カールツァイスの精密光学系で集光し、露光に使う
今回の開示で鍵とされたのは、主に2点です。
- 錫の液滴数を増やす:1秒あたり約10万滴へ
- レーザーの当て方を変える:従来の「1回の整形バースト」ではなく、「2回の小さなバースト」でプラズマの形を整える
レーザー技術を研究し、ASMLの科学者も育成してきたという米コロラド州立大学のホルヘ・J・ロッカ教授は、この1kW達成を「非常に驚くべき」と評価しています。
次は1,500W、2,000Wへ? 量産の景色がさらに変わる可能性
パービス氏は、1,000ワットに到達した技術が今後の継続的な改善につながるとし、1,500ワットへ進む道筋が見えていること、さらに2,000ワットに到達できない根本理由はないという見立ても示しました。
もちろん、出力を上げるほど、熱・汚染(デブリ)・光学系の保護・安定稼働といった課題は一段と厳しくなります。それでも「露光の速度を上げる」という方向性は、先端半導体の供給制約をほどく現実的な手段として注目されます。
ここだけ押さえる:今回のニュースの要点
- ASMLがEUV光源で1,000ワットの出力を実運用に近い条件で示した
- 出力増は露光時間短縮につながり、生産量増・コスト低下を後押しし得る
- 2030年までにEUV装置は毎時330枚のウエハー処理(現在220枚)を目指す
- 技術の要は、錫液滴の増量とレーザー整形の2段化
2026年2月24日現在、AIやデータセンター需要の強さが続く中で、先端プロセスの“量”を増やす技術は、半導体の供給構造そのものに影響し得ます。EUVの次の改良が、いつ・どの程度のペースで量産現場に入っていくのか。装置ロードマップと顧客側の導入計画が、これまで以上に注目されそうです。
Reference(s):
cgtn.com








