イラン最高指導者にモジュタバ師 米・イスラエルとの戦闘、長期化の兆し
中東の戦闘が終結の見通しを欠く中、イランは最高指導者にアヤトラ・アリ・ハメネイ師の息子モジュタバ・ハメネイ師を指名しました。指導部交代と同時に、燃料施設への攻撃が報じられるなど軍事行動も拡大しており、衝突が長期化する可能性が強まっています。
最高指導者交代:専門家会議が「第3代指導者」として承認
報道によると、イランの最高指導者を選ぶ権限を持つ「専門家会議(88人の聖職者で構成)」は、テヘラン時間の深夜すぎに声明を出し、モジュタバ・ハメネイ師を新たな最高指導者に選出したと発表しました。
モジュタバ師は1969年生まれの聖職者で、治安・安全保障の枠組みに強い影響力を持つ人物として、以前から後継候補の一人と見られていたとされています。発表後、イラン革命防衛隊(IRGC)は新指導者への忠誠を表明し、「指示の遂行に備える」としました。
米国は強い反発:トランプ大統領が「受け入れられない」
指導者の交代は、ワシントンとの緊張をさらに高める可能性があります。米国のドナルド・トランプ大統領は、モジュタバ師の就任は「受け入れられない」と述べ、米国側が選定プロセスに関与すべきだという趣旨の発言を続けました。
またトランプ氏は、後継者がアリ・ハメネイ師の路線を継ぐ場合、米国が「5年以内に」再び戦争に戻る可能性に言及したとされています。さらに9日までに行われた別の発言では、「(米国の)承認が得られなければ長くはもたない」とも述べました。
イスラエルも警告:後継者や会議参加者を「追及する」姿勢
イスラエル側も、決定に先立って強硬な警告を発していました。イスラエル国防軍(IDF)は9日までに、アリ・ハメネイ師の「いかなる後継者も追及する」と述べ、専門家会議の参加者も潜在的な標的になり得るとの認識を示したとされています。
燃料施設への攻撃が焦点に:米国とイスラエルで温度差も
戦闘は現地で激しさを増していると伝えられています。米国・イスラエルによる対イラン軍事作戦の「9日目」にあたる日曜日、夜間の攻撃で石油貯蔵施設が被害を受け、テヘランの一部に黒煙が立ち込めたと、中国メディアグループ(CMG)のテヘラン特派員が報じました。
イスラエル空軍は、イラン各地の燃料貯蔵関連施設およそ30カ所を攻撃したとされ、イスラエル軍報道官は、弾道ミサイル用推進剤の製造・保管など「戦争遂行を支える施設」であり「合法的な軍事目標だ」と主張しました。
一方で、関係者の話として、イスラエルが事前に米国へ通知していたものの、米国側は攻撃の規模に驚いたとも伝えられています。米政府高官は、民生インフラへの攻撃がイラン国内の世論を政府支持へ押し上げる可能性や、原油価格の上昇につながる懸念から「良い考えではない」との見方を示したとされています。
イラン側は攻撃を非難し、外務省報道官は「危険な新段階」であり「戦争犯罪」だと主張しました。さらにイラン軍の中央司令部の報道官は、攻撃が続けば同様の行動で応じると警告し、原油価格が1バレル200ドルを超える可能性にも言及したとされています。
「長期戦」への構え:THAAD関連レーダー破壊を主張
イランは長期戦を見据えた準備を進めている姿勢も示しています。IRGCはこの24時間で、中東に展開するTHAAD(高高度防衛ミサイル)に関連するレーダー4基を攻撃・破壊したと主張し、衛星画像も公開したとされています。
IRGC報道官は、高強度の戦闘を少なくとも6カ月続けられると述べ、弾道・巡航ミサイル、ドローン、攻撃艇などを含む「大規模かつ長期の戦争」への備えがあると説明しました。近く、これまであまり投入してこなかった長距離の先進ミサイルなど、新たな攻撃方法を導入する可能性にも触れたとされています。
またイランの第一副大統領は、戦略目標として「米国の中東からの完全撤退」と「域内の米軍基地の閉鎖」を挙げたと報じられています。
周辺地域でも動き:韓国の米軍基地から大型輸送機が出発
地域外でも軍事的な動員をうかがわせる動きが伝えられています。韓国メディアは、韓国の烏山(オサン)空軍基地から、米軍の大型輸送機C-5が最近出発したと報道しました。
報道によれば、2月下旬に同基地へ到着した少なくとも2機が、2月28日と3月2日にそれぞれ離陸。目的地は公表されていないものの、飛行記録では14時間以上の航行が確認され、米国本土または中東方面に向かった可能性があるとされています。C-5はパトリオット(地対空ミサイル)など重装備も輸送できるため、一部装備の再配置が取り沙汰されています。
いま何が問われているのか(整理)
- 指導部交代の影響:新最高指導者の下で、意思決定がどの速度で固まり、軍事・外交方針がどう示されるのか。
- 攻撃対象の拡大:燃料・エネルギー施設が攻撃の焦点になるほど、民生への影響と報復の連鎖が強まりやすい。
- 原油価格リスク:供給不安が強まれば、エネルギー価格を通じて世界経済に波及し得る。
- 米国の選択肢:トランプ氏は濃縮ウラン備蓄を特殊部隊で確保する可能性も排除せず「すべての選択肢がある」と発言したとされ、事態のエスカレーション管理が焦点になります。
戦闘が「数週間」で収束するのか、それとも当事者が示唆するように「より長い時間軸」に入っていくのか。指導者交代という政治的転換と、燃料施設をめぐる軍事行動の拡大が同時に起きている点が、いまの中東情勢をより読みづらくしています。
Reference(s):
cgtn.com



