米国、関税とドイツ駐留軍削減でEUとの溝深める
ドナルド・トランプ米国大統領による関税引き上げとドイツからの軍削減という二つの措置が、イラン情勢をめぐる対立と相まって、北大西洋同盟の結束に新たな疑問を投げかけています。
経済と安全保障への二重の衝撃
2026年5月2日、トランプ大統領は欧州製の自動車・トラックに対する関税率を25%に引き上げ、さらにドイツから約5,000人の米軍を撤退させる方針を発表しました。両決定は、イラン問題で悪化していた米欧関係を一層緊迫させるものです。
経済面では、欧州の自動車産業にとって最大の輸出先である米国市場でのコスト増加が懸念されます。特に、エネルギー価格の変動などで既に不安定さを抱えるドイツ経済にとって、輸出の柱である自動車業界への打撃は深刻です。
安全保障面では、長らく米軍の欧州・中東における作戦の拠点となってきたドイツからの兵力削減が、NATO(北大西洋条約機構)の戦略態勢に影響を与える可能性が指摘されています。ロシアとの緊張が続く中、米国のコミットメント後退は同盟内に懸念を広げています。
「ターンベリー合意」と安全保障を結びつける論理
トランプ大統領は関税引き上げを、昨年(2025年)交渉された「ターンベリー合意」の履行不十分への懲罰だと説明しています。また、今回の措置は、2026年初頭に最高裁が広範な関税権限を否定したことを受け、国家安全保障条項(通商拡大法232条)に基づくもので、戦略の修正を示しています。
トランプ政権は二期中、貿易政策を安全保障上の懸念、特にイラン問題での同盟国の支援不足とより直接的に結びつける傾向を強めており、これは過去の鉄鋼・アルミ関税紛争とは異なる様相を見せています。
欧州の対応と戦略的自律への動き
EU(欧州連合)は報復措置の可能性を示唆する一方、ドイツのボリス・ピストリウス国防相は「欧州は自らの安全保障により大きな責任を負う必要がある」と述べ、域内での防衛費増額と戦略的自立を求める声が高まっています。
しかし、NATO内には、米国の関与縮小が対ロシア抑止力を弱めかねないとの懸念も根強くあります。米国内でも、共和党内からは同盟を弱体化させる可能性があるとして、軍削減への慎重論が出ています。
「アメリカ・ファースト」がもたらす同盟の将来像
貿易と安全保障政策が交錯する今回の状況は、トランプ大統領の一貫した姿勢を映し出しています。経済的・軍事的に十分な支持を与えないと見なされた同盟国には、複数の分野で圧力がかけられる可能性があるのです。
米欧間で意見の相違が拡大する中、欧州側には米国が同盟を支えてきた共有の価値観から離れつつあるとの見方が広がり、一方で米国側には欧州パートナーが頼りなくなっているという認識が深まるという、悪循環が生じつつあります。2026年現在、この亀裂が今後どのような同盟関係の再構築をもたらすのか、注視が必要です。
Reference(s):
cgtn.com



