中国で月嫂とナニーの国家基準を改定 出産・育児支援を強化
リード:産後ケアと育児サービスの質を底上げへ
中国で、産後の母親と新生児をサポートする「月嫂(ユエサオ)」と、0~3歳の子どもを家庭で預かるナニー(「育児嫂(ユーアルサオ)」)に関する国家標準が改定されました。2025年3月1日に施行された新基準は、出産支援と育児サービスの質を高め、少子化と急速な高齢化という課題に対応する取り組みの一つとされています。
こうした家庭向けサービスの質をどう高めるかは、中国だけでなく、多くの国や地域に共通する関心事でもあります。
改定された2つの国家標準とは
今回対象となったのは、産後の母親と新生児をケアする月嫂と、出生から3歳までの子どもを家庭で預かるナニーのサービスです。いずれも、生活の質を高めたいと考える親たちから、近年ますます求められるようになっている職種です。
新しい国家標準は、家庭向けの産後ケアサービスや乳幼児の在宅ケアサービスをより適切に規制・整備することをめざし、2025年3月1日に施行されました。
月嫂は、出産後最初の1カ月以上にわたり、母親と新生児の体調や生活面のケアを集中的に行う専門職です。一方、ナニーは、0~3歳の子どもの日常的な生活の世話を担う家事・育児サービスの担い手です。
月嫂の国家標準:研修と品質を体系化
家政サービス標準の専門家であり、新基準の策定に参加した張博宇氏によると、月嫂の新しい標準では、サービスの研修、手順、品質に関する要件が新たに定められ、あるいは明確化されました。
これにより、
- 月嫂に求められる研修やスキルの要件
- 産後ケアサービスの具体的な提供手順
- サービスの品質や安全性に関する基準
といった点が整理され、利用者の「より専門的で、安全で、個々のニーズに合ったサービスを受けたい」という需要に応えることが期待されています。同時に、行政による効果的な監督やチェックの土台にもなるとされています。
ナニー基準:心のケアと早期教育も視野に
ナニーサービスの標準では、子どもの基本的な生活面のケアに加えて、感情や心理的なニーズに配慮することが推奨されています。また、乳幼児期の早期教育に関するガイドラインも盛り込まれていると、策定に関わった専門家は説明しています。
これにより、家庭で子どもを預かる場面でも、単に「預かるだけ」でなく、心の安定や成長を支える関わり方が求められるようになります。
出生支援と高齢化対策の文脈で見る
こうした基準の整備は、出生支援を強化し、急速な高齢化という人口動態の変化に対応しようとする中国の包括的な取り組みの一環です。
国務院は10月に出した通知で、13の重点措置を打ち出しました。内容には、
- 出産支援サービスの拡充
- 乳幼児向け保育・子育て支援制度の拡大
- 教育・住宅・雇用における支援の強化
- 子どもを産み育てやすい社会的雰囲気づくり
などが盛り込まれています。
中国はこの10年ほどで、長年続いた家族計画政策を徐々に緩和し、いわゆる一人っ子政策を段階的に終了させてきました。2021年には、第3子を希望する夫婦を支援する方針も示されています。
その後、各地の地方政府は、出産を後押しするために、出産補助金の支給、保険の適用拡大、産休・育休の延長、公的な保育施設の増設といった措置を次々と導入しています。今回の月嫂・ナニーの国家標準づくりは、こうした流れの中で、家庭内サービスの質を底上げする取り組みだと位置づけられます。
読者への問いかけ:ケアの「プロ化」は何を変えるか
月嫂やナニーの需要が高まる背景には、より良い生活の質を求める親世代の意識の変化があります。育児や産後ケアを家族だけで抱え込むのではなく、専門のサービスに一部を委ねることで、心身の負担を軽くしたいというニーズです。
一方で、こうしたサービスの質や安全性が担保されていないと、利用者は不安を感じやすくなります。今回の国家標準は、家庭に入り込むケアの仕事を、個々人の経験や口コミだけに頼るのではなく、一定の研修や基準にもとづく専門職として位置づけようとする動きだとも受け止められます。
育児サービスのプロフェッショナル化や標準化は、多くの国と地域で議論されているテーマでもあります。中国の事例は、「どこまでを家族で担い、どこからを社会や市場のサービスに託すのか」という問いを、あらためて考えるきっかけを与えてくれます。
少子化や高齢化が進む時代に、出産と子育てをめぐる制度やサービスをどう整えるのか。その答えを探るうえで、月嫂やナニーの国家標準づくりは、一つの重要な実験といえるのではないでしょうか。
Reference(s):
China boosts maternity matron, nanny standards to support childbirth
cgtn.com








