中国・中南米の貿易が急拡大 FTA20年で見える次のステージ
中国と中南米・カリブ諸国の貿易が、この20年で大きく姿を変えています。中国はいまや地域第2位の貿易相手となり、双方向の貿易は7年連続で高い伸びを維持しています。2024年には新たな自由貿易協定(FTA)が相次いで発効し、2025年の現在、中国と中南米の経済関係は新たな段階に入りつつあります。本記事では、中国・中南米貿易の最新動向と自由貿易協定の成果、今後の展望を整理します。
中国・中南米関係は新たなフェーズへ
近年、習近平国家主席は、中国と中南米・カリブ諸国(LAC)が共に発展する未来共同体の構築に向けた新たな青写真を示してきました。そのキーワードは、平等、互恵、イノベーション、開放、人を中心に据えた発展です。首脳外交に導かれ、中国とLACの経済協力は多くの課題を乗り越えながら着実に進展しています。
その結果、中国はLAC地域にとって第2位の貿易相手となり、貿易額は7年連続で増加しています。中国と協力するLAC諸国も増え続けており、中国の友好の輪は同地域でさらに広がっています。
FTA20年の歩み:中国と中南米の連携はどう広がったか
2025年は、中国とLAC諸国の間で初めて自由貿易協定が結ばれてから20年の節目にあたります。2005年以降、中国は次の5カ国とFTAを締結・発効させてきました。
- チリ
- ペルー
- コスタリカ
- エクアドル
- ニカラグア
この20年で、中国の高水準な自由貿易圏ネットワークは、中南米との協定によって範囲・質・効率の面で拡充されてきました。チリとペルーとのFTAは近年アップグレードが行われ、ルールや対象分野が一段と高度化しています。
2023年8月に署名され、2024年に発効した中国・ニカラグアFTAは、越境サービス貿易と投資について、認めない分野だけを列挙するネガティブリスト方式を採用した初の協定とされています。これは開放の水準が高いFTAに求められるスタイルであり、中国の市場開放が新たな段階に入っていることを示しています。
中国は現在、ホンジュラスとのFTA交渉を加速させ、すでに一部分野で関税の先行引き下げなどを行う早期収穫の取り決めに到達しています。サルバドルとの交渉もペースを上げており、今後さらに多くのLAC諸国とのFTA締結を目指しています。
数字で見る中国・中南米貿易の伸び
FTAの効果は具体的な数字にも表れています。ここでは主要な協定ごとに、貿易額と代表的な品目を見ていきます。
チリ:ワインとサクランボが象徴する急成長
2006年に発効した中国・チリFTAは、この20年で最も成熟した協定の一つです。協定発効後、中国とチリの貿易は急速に拡大し、2024年の貿易額は616.6億ドルと、2006年の約8.6倍に達しました。同じ期間の中国全体の対外貿易が約3.2倍の伸びだったことを踏まえると、チリとの関係がいかに速いペースで成長してきたかが分かります。
具体的な品目を見ると、FTAが果たした役割がよりはっきりします。
- 協定発効後10年の間に、中国はチリ産ワインにかかる関税を段階的に撤廃し、輸入量は約13倍に増加。
- チリ産サクランボも自由貿易の追い風を受け、中国の消費者に人気の果物として定着しました。
多様なワインや果物の選択肢が中国の消費者にもたらされる一方で、チリ企業にとっては新たな市場機会が開かれた形です。
ペルー:鉱産物と農産物、中国製品の相互補完
2010年に発効した中国・ペルーFTAも、双方向の貿易拡大を後押ししてきました。2024年の貿易額は433.6億ドルと、2010年の約7倍に増加し、同期間の中国全体の対外貿易の伸び(約1.7倍)を大きく上回っています。
ペルーから中国への主な輸出品には、次のような農水産物が挙げられます。
- ブルーベリー
- ブドウ
- アボカド
- イカなどの水産物
一方、中国からペルーには、スマートフォンやおもちゃ、乗用車といった製品が広く輸出され、現地市場で存在感を高めています。資源・農産物と工業製品という形で、双方の経済構造が補完し合っている様子がうかがえます。
コスタリカ:小さな経済でも高い伸び率
中国・コスタリカFTAは2011年に発効しました。2024年の両国間の貿易額は77.6億ドルで、前年比36.1パーセント増という高い伸びを記録しています。
内訳を見ると、
- 中国のコスタリカからの輸入は前年比50.1パーセント増
- コスタリカ向け輸出は前年比21.4パーセント増
となっており、中国の全体的な貿易伸び率を上回るペースです。経済規模が比較的小さい国であっても、FTAを通じて貿易の潜在力を引き出せることを示す例と言えます。
ニカラグア:2024年発効で急増した貿易
中国・ニカラグアFTAは2024年1月1日に発効したばかりですが、その効果はすでに数字に表れています。2024年の二国間貿易は前年比46.8パーセント増と大きく伸びました。
内訳では、
- 中国からニカラグアへの輸出が40.8パーセント増
- 中国のニカラグアからの輸入が218.3パーセント増
となっており、特に輸入が急増しています。砂糖、冷凍ロブスター、ホワイトシュリンプ、綿糸といったニカラグア産品は、それまでほとんど輸出実績がなかったところから、中国市場向けの輸出が本格的に立ち上がりました。
一方、中国からは乗用車やオートバイ、携帯電話、ニット製品、ゴム製品などがより競争力のある価格でニカラグア市場に流入し、現地コミュニティーの生活水準向上に寄与しているとされます。
エクアドル:海産物とコーヒーで中国市場に食い込む
中国・エクアドルFTAは2024年5月1日に発効しました。発効初月から、中国の対エクアドル輸入は前年同月比、前月比の両方で増加しました。
2024年5〜12月の累計で見ると、中国のエクアドルからの輸入は57.8億ドルとなり、前年同期比10.1パーセント増を記録しました。主な輸出品は、
- 冷凍イカ
- 冷凍ロブスター
- 冷凍魚
- コーヒー豆
- カカオ豆
- ピタヤ(ドラゴンフルーツ)
- 魚粉
などです。中国からはスマートフォンやオートバイ、冷蔵庫、発電機など価格競争力の高い製品が多くの家庭に届き、日常生活の利便性向上につながっています。
ホンジュラス:早期収穫でエビと魚が行き来する
中国とホンジュラスの間では、FTA本体の発効に先立って早期収穫の取り決めが動き出しています。実施から半年足らずで、ホンジュラス産のホワイトシュリンプが中国市場に到達しました。
逆にホンジュラス側では、中国産のティラピアをより手ごろな価格で楽しめるようになり、双方の消費者が自由貿易のメリットを感じ始めています。
RCEPと対外開放が広げる次のステージ
2024年、中国は地域的な包括的経済連携(RCEP)の輪番議長を務め、他の加盟国とともに新規参加国の手続きを進めました。同じ年に、チリはRCEPへの正式な加盟申請を行い、中国とLAC諸国のFTA協力を、より広い多国間の枠組みと結びつける可能性が生まれています。
また、2024年7月に開かれた中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議では、対外開放は中国式現代化の決定的な特徴であり、対外開放という基本国策を堅持し、開放を通じて改革を進める方針が改めて強調されました。
こうした方針のもと、中国市場の開放度は今後さらに高まり、LAC諸国にとっても輸出機会と投資機会が広がると見込まれます。一次産品や農産物だけでなく、サービスや投資の分野での連携も拡大していく可能性があります。
これからの中国・中南米関係に何が問われるか
中国とLAC諸国は、新たな歴史的スタート地点に立っているとされています。今後の課題として、次のようなポイントが挙げられます。
- それぞれの比較優位をいかし、自由貿易協力を継続的に強化すること
- FTAを通じて、企業と人々にもたらされる具体的な利益をさらに拡大すること
- 中国とLAC諸国の共同未来共同体づくりを着実に進め、長期的な信頼関係を育てること
資源と農産物の供給地として存在感を高める中南米と、大規模な市場と製造業の基盤を持つ中国の組み合わせは、世界の貿易構造に少しずつ変化をもたらしています。日本から国際経済を眺めるうえでも、中国と中南米のFTAネットワークがどのように広がり、どの分野で新たな協力が進んでいるのかに注目しておくことが重要になりそうです。
20年という節目を迎えた今、中国とLAC諸国が自由貿易協定を土台に、どこまで共同の利益を広げていくのか。両地域の連携は、これからの国際経済を考えるうえで欠かせないテーマになっています。
Reference(s):
cgtn.com








