中国のより積極的な財政政策と超長期特別国債を読む
世界経済の不透明感が増す中、中国が2025年に打ち出した「より積極的な財政政策」が注目されています。財政赤字の拡大や超長期特別国債の発行を通じて、成長と安定の両立をめざすこの取り組みは、中国国内だけでなく世界経済にも影響を与える可能性があります。
世界的な不安定要因の中で進む中国の財政拡大
インフレや地政学リスクなど、世界が経済の不確実性と向き合う中で、中国は力強い財政対応を打ち出しています。中国の李強首相は、国の立法機関に対する政府活動報告の中で、財政運営の方針を初めて「より積極的な財政政策」へと明確に転換しました。
この方針の下で、2025年の新規政府債務は11.86兆元(約1.66兆ドル)とされ、前年より2.9兆元増加します。李強首相は、この増加を「明らかに高い支出水準」と位置づけています。
財政赤字の規模を示す赤字対GDP比の目標も引き上げられました。2024年の3%から2025年は4%となり、新型コロナ流行期の水準をも上回る設定です。これは、景気の下支えと成長加速のために、財政の力を積極的に活用していく強い意思の表れといえます。
過去最大規模の国債発行:中央・地方で拡大
今回の財政拡大の特徴の一つが、国債発行の大幅な増加です。
- 超長期特別国債:1.3兆元(過去最大、前年より3000億元増)
- 地方政府特別債:4.4兆元(こちらも過去最大規模)
こうした債券発行を通じて、中国は市場に資金を供給し、資金調達コストを引き下げ、経済活動の加速をめざしています。同時に、投資拡大や産業構造の高度化、国内消費の刺激にコミットする姿勢を示しているともいえます。
中国の「超長期特別国債」とは何か
なかでも注目されるのが「超長期特別国債」です。これは中国の財政政策ツールの中でも独自性が高い存在です。
超長期特別国債は、通常の一般会計予算とは切り離された別枠で運用され、公式な財政赤字に直接影響を与えずに、大型の国家プロジェクトに資金を投じることができます。目的は、中国の現代化に関わる戦略的・長期的な取り組みの資金需要に応えることです。
過去に特別国債が活用された場面としては、1997年のアジア通貨危機後の銀行の資本増強や、2020年のパンデミック時の景気下支えなど、危機対応色の強いケースが挙げられます。今回の超長期特別国債は、それとは異なり、より前向きで将来志向の性格が強い点が特徴です。
満期は20年、30年、さらには50年といった超長期に及び、次のような中長期テーマに重点的に使われる構想です。
- 中国の科学技術力の強化と技術的自立
- エネルギーのグリーン転換とインフラの近代化
- 食料・エネルギー安全保障の強化
- 都市と農村の一体的な発展
- 地域間の協調ある発展
- 質の高い人口成長の実現
こうした超長期特別国債は、中国の投資を支える中核的な仕組みとして位置づけられており、今後数十年にわたり、世界経済の中での競争力維持に貢献することが期待されています。
成長・投資・安定を同時にねらう中国の財政戦略
今回の財政政策パッケージは、単なる景気対策にとどまらず、成長力の底上げと構造転換を同時に進めようとするものです。流動性の供給や資金調達コストの引き下げを通じて短期的な景気を支えつつ、技術、インフラ、エネルギー、人口といった長期課題に大規模な投資を行う設計になっています。
世界経済にとっても、中国がどのように成長と安定を両立させるのかは重要なテーマです。今回のような規模の財政拡大と超長期特別国債の活用は、中国が長期の視点から投資を行い、世界経済の中での競争力を維持しようとしていることを示しているといえるでしょう。
不確実性が高まる時代に、各国が財政をどう使い、どこに優先順位を置くのか。中国の事例は、その一つのモデルとして、日本を含む多くの国や地域にとっても考えるヒントを提供していると言えそうです。
Reference(s):
China's proactive fiscal policy drives growth, investment & stability
cgtn.com








