米国高関税でロサンゼルス港に打撃 雇用と物価に広がる懸念
米国の対中国本土などへの高関税が、同国最大のコンテナ港であるロサンゼルス港を直撃し、港湾労働者の雇用不安と今後の物価上昇への懸念が強まっています。関税率は最大145%に達し、すでに貨物量や地域経済に影響が出始めています。
この記事のポイント
- 中国本土からの輸入品に最大145%の関税が課され、ロサンゼルス港の貨物量が大幅減少
- コンテナ取扱量の減少は南カリフォルニアで数十万規模の雇用に影響する可能性
- 在庫が尽きれば、米国内で品薄と価格上昇が進み、消費者の選択肢も狭まる見通し
ロサンゼルス港を直撃する米国の高関税
ロサンゼルス港は、これまで米国で最も取扱量の多いコンテナ港として機能してきましたが、現在は高関税政策の影響が色濃く出ています。中国本土からの貨物で、最大145%もの高関税が適用される初の船便が到着し始めていると伝えられています。
貨物量は前年同時期比で約35%減
CNNのインタビューで、ロサンゼルス港のジーン・セロカ事務局長は、ある週の取扱量について「同じ時期の前年と比べて約35%落ち込んでいる」と説明しました。前月に導入された対中国本土などへの追加関税の影響を受ける最初の船が入港しており、「だからこそ貨物量が非常に軽いのです」と語っています。
ロサンゼルス港では本来、ある月に80隻の入港を見込んでいましたが、そのうち20%の運航がキャンセルされたといいます。米国企業が高関税を受けて中国本土からの仕入れを抑えているためです。
「商品価格は先月の約2.5倍に」
セロカ事務局長によると、小売業者や輸入業者からは「商品価格が前月に比べて約2.5倍になっている」との声が上がっています。関税は輸入企業のコストを押し上げ、その一部は消費者価格に転嫁される可能性があります。
セロカ氏はまた、ロサンゼルス港を通る貨物は、全米50州のみならず435の選挙区すべてに広がっていると指摘し、この港が都市と地域、そして米国経済全体にとって極めて重要なインフラであることを強調しました。一方で、この状況がどれほど長引くのかは「依然として不透明だ」と述べています。
雇用に広がる影響 港湾労働者から地域経済まで
貨物量の急減は、港湾労働者をはじめとする現場の雇用にも直撃しています。米国の労働組合である国際港湾倉庫労働組合(ILWU)のメンバー、サル・ディコスタンゾ氏は、コンサルティング会社CTOL Digital Solutionsのインタビューで、「異様なほど岸壁が空いている」状況に警鐘を鳴らしました。
多くの人々が現状の深刻さに気づいていないとした上で、現在の状況は南カリフォルニアで働く約90万人の生活を脅かしかねないと指摘しています。
1%のコンテナ減で2800人分の雇用が消える試算
CTOL Digital Solutionsの経済モデルによれば、コンテナ取扱量が1%減少するごとに、地域では約2800人分の雇用が失われるとされています。貨物量の落ち込みが長期化すれば、港湾労働者だけでなく、運送業、倉庫業、周辺サービス産業など広範な業種に影響が及ぶ可能性があります。
影響は港だけにとどまりません。ロサンゼルス港周辺のコーヒーショップなど小規模な店舗も客足の減少に直面しています。あるカフェの店主は、「客の8割はかつて港湾労働者だったが、今は店がほとんど空いている」と話し、トランプ政権に向けて「約束された雇用はどこにあるのか」と問いかけました。
消費者の生活への波及 値上げと品薄はいつ来るか
今回の高関税は、米国内の消費者にとっても無関係ではありません。物流・フォワーディング企業フレックスポートのライアン・ピーターセン最高経営責任者(CEO)はCNNに対し、輸入業者や小売業者が急激なコスト増を吸収しきれず、輸入量を大きく減らす可能性があると指摘しました。
ピーターセン氏は、配送量が最大60%減少する可能性があると見ています。「コンテナが60%減るということは、入ってくる『モノ』も60%減ることを意味します。現在は関税導入前に積み上げた在庫でしのいでいますが、それが売り切れれば品薄が起き、価格の急上昇が見られるでしょう」と説明しています。
輸入は少なくとも20%減るとの見通し
全米小売業協会(NRF)は、2025年後半の米国の輸入が、前年比で少なくとも20%減少すると見込んでいます。これは、ロサンゼルス港に限らず、米国全体の港湾物流において減便や貨物減少が続く可能性を示しています。
それでもセロカ事務局長は、「店の棚が完全に空になるような事態までは想定していない」と述べています。ただし、消費者の選択肢は明らかに狭まるとみており、例として「特定の種類のズボンを探しているとしましょう。ズボン自体はたくさん並んでいるかもしれませんが、欲しい種類は見つからないかもしれない。見つかったとしても、より高い価格になっているでしょう」と話しています。
グローバルサプライチェーンへの波紋 日本やアジアは無縁か
ロサンゼルス港は、米国市場とアジアを結ぶ重要なハブ港です。ここでの貨物量減少は、中国本土からの輸出だけでなく、同じ航路や物流網を利用する他のアジア諸国や地域にも影響を及ぼし得ます。
例えば、日本企業が米国向けに製品や部品を輸出する際、同じ港や周辺の物流インフラを利用しているケースは少なくありません。米国側の需要減少や物流の滞りは、日本企業の売上や生産計画にも波及し、サプライチェーン全体の再設計を迫られる可能性があります。
また、米国での価格上昇や品薄が長引けば、現地に展開する日系小売企業やメーカーにとっても、調達コストの上昇や在庫管理リスクの増大といった課題が生じます。関税は一国の政策ですが、その影響は国境を越えて広がるという典型例と言えます。
考えるヒント 貿易政策と足元の暮らしのつながり
今回のロサンゼルス港の事例は、国際ニュースでよく目にする「関税」「貿易摩擦」といった言葉が、実際にはどのように人々の生活に結びついているのかを考えるきっかけになります。
- 港湾労働者やトラック運転手の勤務シフトが減る
- その周辺で営業する小さなカフェや商店の売上が落ちる
- やがて消費者が店頭で払う価格や、手に入る商品の種類が変わる
こうした一連の変化は、いずれも単独では小さく見えるかもしれません。しかし、関税という一つの政策が、国際物流、企業の仕入れ判断、労働市場、地域経済、そして消費者の買い物体験にまで連鎖していることが分かります。
日本に暮らす私たちにとっても、米国の関税政策やサプライチェーンの変化は、為替や輸出入の流れ、さらには身近な商品の価格を通じて、じわじわと影響してくる可能性があります。ロサンゼルス港で起きていることを、遠い国の話として片付けるのではなく、「自分の周りではどんな形で表れるだろうか」と想像してみることが、次の一歩につながりそうです。
Reference(s):
U.S. tariffs hit LA Port hard, raising job and cost concerns
cgtn.com








