EUが中国医療機器企業を公共調達から排除へ 中国欧州商会が懸念表明
EUが医療機器分野の公共調達から中国企業を事実上排除する決定を下し、中国欧州商工会議所(CCCEU)が強く懸念を示しました。自由貿易と中国・EU関係に何を意味するのでしょうか。
何が起きたのか:医療機器の大型入札から中国企業を排除
中国欧州商工会議所(China Chamber of Commerce to the EU/CCCEU)は8日(月)、EU加盟国が中国企業を対象とした新たな制限措置を承認したことに対し、強い遺憾の意と深い懸念を表明しました。
報道によると、EU加盟国は、国際公共調達手段(International Procurement Instrument/IPI)を用いて、
- 医療機器分野の公共調達入札
- 契約額が500万ユーロ(約5.72百万ドル)を超える案件
について、今後5年間、中国企業の参加を認めない方針を決めたとされています。
中国欧州商工会議所の立場:「差別的」で関係を複雑化
CCCEUは声明で、今回の決定が中国企業だけを狙い撃ちにしたものであり、EUが掲げる市場アクセスにおける開放性、公平性、非差別の原則と矛盾していると指摘しました。
声明は、こうした措置が
- 中国・EU間の経済・貿易関係に新たな複雑性を加えること
- 中国企業に対する政治的なシグナルとしても「好ましくないメッセージ」を送ること
への懸念を示しています。
IPIとは何か:EUの一方的な公共調達ツール
IPIは、EUが2022年に採択した一方的な政策ツールで、公共調達において、いわゆる市場の「相互主義」を確保することを目的としています。具体的には、EU企業の公共調達市場へのアクセスが制限されていると判断した相手国に対し、EU側の公共調達市場で制限措置を課すことを可能にする仕組みです。
CCCEUは、相互主義を主張するのであれば、歴史的・実務的な現実を正確に理解したうえで議論すべきだと強調しました。そのうえで、欧州の医療機器企業は長年にわたり中国市場へ大きなアクセスを享受してきたと指摘し、
「EUの今回の決定は、こうした文脈を無視し、バランスの取れた関与と相互利益という精神を損なうものだ」としています。
高まる保護主義への懸念
CCCEUは声明の中で、今回の措置をより広い世界経済の流れの中で位置づけました。近年、一部の国が一方的な関税措置を相次いで導入し、世界貿易に混乱をもたらしていると懸念を表明しています。
その上で、
- 中国とEUは世界を代表する二大経済であること
- 自由貿易と多国間協力を共に守るべき立場にあること
を挙げ、緊張を高める一方的な制限措置ではなく、協力と対話を優先すべきだと訴えました。
また、中国企業はこれまでEU市場で各国の法律や規制を順守し、投資や技術革新、雇用創出を通じてEU経済に貢献してきたと強調しています。
医療機器市場と中国・EU関係への影響
今回のIPI発動による中国企業の排除は、医療機器という人々の生活と健康に直結する分野で起きている点も注目されます。
入札に参加する企業が制限されれば、
- 公共調達の競争環境や価格形成
- 病院や医療機関の機器調達の選択肢
- 技術革新のスピードや多様性
などに、どのような影響が出るのかが今後の焦点となります。
一方で、今回の決定は、中国・EUの経済関係全体の一部にすぎませんが、相互不信を高めかねない象徴的な動きでもあります。双方の経済が深く結びつく中で、一つひとつの政策判断が長期的な投資やサプライチェーンの見直しにつながる可能性もあります。
CCCEUが求める「再考」とこれからの論点
CCCEUはEUの政策決定者に対し、今回のIPI措置の「必要性」と「長期的な影響」を再考するよう呼びかけています。政策ツールを事実上の貿易障壁として用いれば、
- 中国・EU双方の利益を損なうおそれがあること
- 世界経済の回復にとっても逆風となりかねないこと
を警告しました。
足元では、サプライチェーンの安全保障や経済安全保障の名の下に、各国・地域で産業政策と通商政策の境界が曖昧になりつつあります。その中で、
- 安全保障や相互主義をどう定義するのか
- どこまでが正当なルール整備で、どこからが保護主義なのか
- 自由貿易と多国間主義の原則をどう維持するのか
といった問いが、改めて突きつけられています。
今回の医療機器をめぐる公共調達の制限措置は、中国とEUだけでなく、国際貿易のあり方や世界経済のルール形成を考えるうえでも、今後の議論の重要な試金石となりそうです。
Reference(s):
China chamber decries EU discriminatory curbs on medical device firms
cgtn.com








