中国の農業技術が世界の食料安全保障を後押し 済南で国際会議 video poster
世界各地で食料価格の高騰や気候変動への不安が続くなか、中国東部・山東省の省都、済南市で「2025 International Conference on Reducing Food Loss and Waste(2025国際食料ロス・食品廃棄削減会議)」が先ごろ開催されました。国際会議では、中国の農業技術(アグリテック)が世界の食料安全保障にどう貢献しうるのかが議論の焦点の一つとなりました。
済南で開かれた「2025国際食料ロス・食品廃棄削減会議」とは
2025年に済南市で開かれたこの国際会議には、各国・地域から政府関係者、研究者、企業など多様なステークホルダーが集まりました。テーマは「食料ロス(食べられるのに捨てられてしまう食品)」と「食品廃棄」をどう減らすか、という食料安全保障の根幹にかかわる課題です。
食料ロスや食品廃棄は、単なる「もったいない」問題にとどまりません。生産から流通、消費に至るまでのどこかで食料が失われると、以下のような影響が出ます。
- 農家の収入が不安定になる
- 限られた水や土地、エネルギーが無駄になる
- 廃棄に伴う温室効果ガスが増え、気候変動を悪化させる
そのため、食料ロス削減は「どのように生産量を増やすか」だけでなく、「すでに生産された食料をいかに無駄なく届けるか」という観点からも、世界の食料安全保障を考えるうえで欠かせないテーマになっています。
CGIARとCGTNインタビュー:中国のアグリテックに注目
この会議の様子は、中国の英語ニュースチャンネルであるCGTNも伝えました。CGTNのXu Yi記者は、国際的な農業・食料安全保障研究グループであるCGIARを代表して会議に参加したイスマハネ・エルワフィ氏にインタビューを行い、中国の農業技術が世界に与える影響について話を聞きました。
CGIARは、世界の農業生産を安定させ、食料安全保障を高めることを目指す研究ネットワークです。エルワフィ氏が代表して参加したことは、この会議が単なる国内イベントではなく、国際的な研究コミュニティや開発分野からも注目されていることを示しています。
インタビューでは、とくに次のようなポイントが焦点となりました。
- 農業のデジタル化やスマート農業技術が、収穫後の損失をどう減らせるか
- 貯蔵・輸送・加工の工程で発生するロスを、技術とデータで可視化・削減する方法
- 中国で蓄積されてきた経験や技術を、他の国や地域とどう共有していくか
中国東部を含む中国本土では、近年、センサーやドローン、衛星データなどを活用した精密農業が広がりつつあります。こうした取り組みが、収穫量の向上だけでなく、収穫後の損失を抑え、「作った分をしっかり届ける」ための基盤になり得る、という点が会議の議論の中で改めて確認された形です。
小規模農家に届く技術であることが鍵
とはいえ、高度な農業技術が一部の大規模生産者だけに限定されていては、世界の食料安全保障の底上げにはつながりにくいという課題もあります。会議やインタビューで取り上げられた議論の背景には、「小規模農家や農村地域にどこまで技術を届けられるか」という視点があります。
中国本土では、農村インフラの整備やデジタル技術の普及が進められており、これを通じて小規模農家の生産性向上や損失削減を図る取り組みが進められています。CGIARのような国際研究グループにとっても、こうした事例は、他地域での政策設計や技術導入を考えるうえで重要な参考になります。
エルワフィ氏との対話を通じて浮かび上がるのは、「技術そのもの」よりも、「どのような仕組みや支援とセットで提供するか」が食料ロス削減の成否を左右する、という視点です。
食料ロス削減と気候変動対策を同時に進める
2025年12月現在、世界的には気候変動への対応と食料安全保障をどう両立させるかが大きなテーマになっています。今回の済南での会議も、その流れの中に位置づけられます。
食料ロスや食品廃棄を減らすことは、次のような意味で気候変動対策にもつながります。
- 無駄な生産が減ることで、農地利用や水資源の負担が軽くなる
- 廃棄される食品から発生する温室効果ガスの排出が抑えられる
- 効率的なサプライチェーンの構築が、エネルギー消費の削減につながる
中国本土を含む各国・地域の取り組みをつなぎ合わせることで、食料ロス削減と気候変動対策を同時に前進させる道筋を探る――それが、今回のような国際会議の重要な役割だと言えます。
日本にとっての意味:フードロス削減と国際協力
日本もまた、食料安全保障とフードロスの両方に頭を悩ませている国の一つです。日本国内では、家庭や外食産業、小売りの現場でのフードロス削減が課題となっていますが、同時に、海外の技術や政策の動きを知ることも欠かせません。
今回の済南での国際会議とCGIARの関与は、日本の読者にとって次のような示唆を与えてくれます。
- 食料ロス削減は「もったいない精神」だけでなく、科学技術と政策の組み合わせで進める国際的なテーマであること
- 中国本土を含む各地で進むアグリテックの応用事例から、日本の農業やサプライチェーンが学べる点があること
- CGIARのような国際研究グループとの連携や情報共有が、長期的な食料安全保障の議論に不可欠であること
とくに、デジタル技術やデータ分析を活用した損失の「見える化」は、日本の農業や物流にも応用しやすい分野です。国際会議での議論を、日本国内の政策やビジネスの議題とどう接続していくかが、これから問われていきます。
私たちにできる3つのアクション
国際会議や研究機関の取り組みは重要ですが、私たち一人ひとりの行動も食料ロス削減と食料安全保障の一部です。日本の生活者の視点から、次のようなステップを考えることができます。
- 家庭でのフードロスを見直す
買い物の頻度や量、冷蔵庫の中身の管理、賞味期限の理解など、日々の習慣を少し変えるだけで、家庭内の食品廃棄は大きく減らせます。 - 企業や自治体の取り組みに注目する
スーパーや飲食店、自治体が行うフードバンクや食品ロス削減の取り組みを知り、利用したり、情報をシェアしたりすることも支援の一つです。 - 国際ニュースとして「食料安全保障」を追う
中国の農業技術やCGIARの活動など、海外の動きをニュースやレポートで継続的にフォローすることで、世界全体の中で日本がどのような役割を担えるのかを考えるきっかけになります。
「読みやすい国際ニュース」から広がる視野
済南で開かれた2025国際食料ロス・食品廃棄削減会議と、CGIARのイスマハネ・エルワフィ氏へのインタビューは、中国本土の農業技術が世界の食料安全保障に向けた解決策の一部になりつつある可能性を示しています。
2025年のいま、食料安全保障は地政学や経済、安全保障政策と切り離せないテーマになりました。その一方で、今回の会議が示すように、具体的な技術や現場の工夫、国際研究ネットワークの地道な取り組みが、私たちの食卓を支えています。
国際ニュースを日本語でわかりやすく追いながら、自分たちの暮らしや仕事、そしてSNSでの対話にどうつなげていくか。済南での議論は、そのための一つのヒントを提供していると言えるでしょう。
Reference(s):
Reseach group: China's agri-tech boosts global food security
cgtn.com








