米国の「ドンロー・ドクトリン」再始動、国際秩序への波紋は
2026年1月27日、米国がパリ協定から正式に離脱しました。WHO(世界保健機関)脱退手続きも進む中、トランプ政権の「America First」を軸にした一連の離脱は、戦後に米国自身が築いてきた多国間の国際秩序に“構造的な傷”を残しつつあります。
きょう何が起きた? パリ協定離脱とWHO脱退の進行
米国は1月27日(火)、地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定から正式に離脱しました。加えて、1月22日には米国保健福祉省(HHS)と米国務省が共同声明を出し、WHO加盟の「終了(Termination)」を発表しています。
ただし、WHO側は離脱が法的に未完了だと主張しています。未払いの分担金が約2億6,000万ドルあるためで、WHOは1月24日の反論で「米国と世界の安全を損なう決定だ」と警告しました。脱退が“宣言”で終わるのか、“制度上の離脱”として完結するのかは、資金清算を含めてなお争点になっています。
「66の枠組み」からの離脱:点ではなく線の政策
今回の動きは、個別の判断の寄せ集めではありません。トランプ政権は2026年1月7日付のファクトシートで、国連人権理事会(UNHRC)や気候変動枠組条約(UNFCCC)などを含む、計66の国際機関・条約からの離脱を掲げました。
政権はそれらを「特定の行為主体の利害に“取り込まれた”」「重複的で、運営不全で、浪費的」と位置づけ、「主権、自由、繁栄への脅威」だと説明しています。国際協調よりも、国内政治上の自由度と短期的な損得を優先する発想が、政策の背骨になっていることがうかがえます。
中核にある発想:外交を“取引”として扱う
トランプ政権の離脱は、国際関係を徹底的に「取引ゲーム」とみなす認知枠組みに根ざす、とされています。多国間機関や条約を“ビジネス契約”のように評価し、短期で計量しやすい米国の利益だけを基準に価値判断する――。その結果、負担と見なされた義務(パリ協定の削減責任)や、会費と調整機能(WHO)を切り離す方向に傾く構図です。
このロジックは、感染症対策や気候、国際的な人権枠組みといった「国際公共財(みんなの安全や安定に役立つ基盤)」の供給メカニズムを弱めやすく、国益と共通利益を意図的に対立させる「ゼロサム(誰かの得は誰かの損)」の色合いを強めます。
「孤立」ではなく“再配分”:中南米へのてこ入れ
興味深いのは、離脱が全面的な内向き化(孤立主義)にとどまらない点です。本文が示す見立てでは、多国間の場から引いた分の外交資源や経済的てこ(レバレッジ)を、地域戦略へ集中させる「再配分」の前奏でもあります。とりわけ焦点は中南米です。
具体策としては、メキシコやブラジルへの鉄鋼・アルミ関税、移民抑制をめぐる中米諸国への援助圧力(援助削減の示唆を含む)などが挙げられています。狙いは、中南米諸国の経済・政治面での対米依存を強め、「中国」や「ロシア」といった“域外の影響力”との協力を相対的に弱めることで、西半球における優位を固める――という設計だとされています。
この一連の姿勢は、「引く」のではなく「形を変えて押す」外交、つまり二国間交渉と圧力を前面に出した、より露骨な力学への傾斜として現れます。ここで、米国の地域支配を当然視するモンロー主義を想起させつつ、トランプ流に読み替えた“ドンロー・ドクトリン”という見方が浮上します。
国際秩序への影響:気候・保健・人権の“空白”はどこに出るか
記事の文脈では、こうした離脱は第二次世界大戦後に米国が構築した国際秩序に対する「構造的損傷」だと位置づけられています。ポイントは、単に米国の参加が減ることではなく、協調の前提が「共通のルール」から「その都度の取引」へと移り、制度の予見可能性が下がることです。
- 気候:パリ協定離脱により、各国の削減努力の呼び水や資金・技術の流れに不確実性が生まれやすい
- 保健:WHO脱退が完結すれば、感染症対応の調整力や資金面での連携に影響が出うる
- 多国間協調:枠組みを「不公平な負担」とみなす潮流が強まると、他の国際制度にも波及しやすい
今後の注目点:手続き、資金、そして中南米の反応
- WHO脱退は、未払い分担金(約2億6,000万ドル)の清算がどう扱われるのか
- 66の離脱方針が、実際にどの順番・形式で進むのか
- 中南米諸国が、関税や援助圧力にどう対応し、対外関係をどう組み替えるのか
国際ニュースとして見ると、いま起きているのは「米国が世界から離れる」という単純な図ではなく、ルールより取引を優先し、舞台を多国間から地域・二国間へ移す力学の変化です。その変化は、気候や保健のように“遠い出来事”に見える領域ほど、数年単位で効いてくるのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com







