国際ニュース:UN Tourism選出 浙江省Digang村が2025年Best Tourism Villageに video poster
国連の観光分野を担当する国際機関UN Tourismが発表した2025年版「Best Tourism Villages」に、中国・浙江省湖州市のDigang Village(ディガン村)が選ばれました。循環型の農業と養蚕文化が今も息づく「生きた遺産」が評価された形です。
どこにある? Digang Villageとその背景
Digang Villageは、中国東部の浙江省湖州市に位置する村です。2025年12月時点で、UN Tourismの「Best Tourism Villages」に選ばれたことで、国際ニュースとしても注目を集めています。
村では、風景だけでなく、暮らしそのものが伝統と結びついています。池の周りに桑の木が並び、その桑の葉を食べて育つ蚕(かいこ)、さらに蚕の排せつ物で育つ魚――こうした関係が、長い時間をかけて受け継がれてきました。
循環する生態系「Mulberry-Dyke Fish Pond System」
Digang Villageの中心にあるのが、「Mulberry-Dyke Fish Pond System」と呼ばれる循環型の生態システムです。この仕組みは、世界的に重要な農業遺産システムとして認定されています。
仕組みはシンプルですが、とても合理的です。
- 池の周りに桑の木が植えられる
- 桑の葉が蚕のエサになる
- 蚕の排せつ物が魚のエサになる
- 魚の排せつ物が池の水を肥やし、桑の木の栄養になる
外から多くの資源を持ち込まなくても、桑・蚕・魚が互いに支え合うことで成り立つ、自立的な生態系です。Digang Villageでは、この循環が今も暮らしの中で続いており、「持続可能な観光」の具体的な姿を示しています。
養蚕と絹織り、無形文化遺産としての価値
このMulberry-Dyke Fish Pond Systemは、単に農業の仕組みというだけでなく、中国の養蚕(ようさん)と絹織り文化を支えてきました。村では世代を超えて、次のような伝統的な技が受け継がれてきました。
- 桑の栽培:蚕が食べる葉を育てるための桑畑づくり
- 蚕の飼育:繊細な環境管理が必要な蚕の育成
- 製糸:繭から糸を引き出す「糸取り」の技術
こうした技は、中国の養蚕・絹織りに関する無形文化遺産の基盤となってきました。Digang Villageのような地域で育まれた技術と知恵から、中国史上でも早い時期の絹織物が生まれたとされています。
村の暮らしは、「農業」と「工芸」が分かれたものではなく、桑の栽培から絹の生産までがひとつながりの営みとして続いてきました。その一体性こそが、「生きた遺産」としての価値を持っています。
観光地であり「生きた遺産」でもあるDigang Village
今回、UN Tourismの「Best Tourism Villages」に選ばれたことで、Digang Villageは国際的な観光地としても知られるようになりました。ただし重要なのは、ここが「見せるためだけのテーマパーク」ではなく、住民の日常生活の中で伝統が続いている場所であるという点です。
村人たちは、桑の木を世話し、蚕を育て、絹を紡ぐという営みを続けています。その過程で守られてきた生態系と文化が、観光客にとっては学びの場にもなります。
観光と聞くと、移動や消費のイメージが強くなりがちです。しかしDigang Villageの事例は、「地域の文化と環境を守りながら、外からの訪問者を受け入れる」という別の姿を示しています。
なぜ今、Digang Villageが示唆的なのか
気候変動や資源の制約が意識される中で、Digang Villageのような循環型の仕組みは、世界的な関心と重なります。国際ニュースとしての注目は、次のような問いともつながっています。
- 限られた土地と水を、どうやって無駄なく活用するか
- 伝統的な知恵を、現代の持続可能性の議論にどう生かすか
- 観光が地域の文化や環境にどのように影響を与えるべきか
Digang Villageで続くMulberry-Dyke Fish Pond Systemは、高度な機械やデジタル技術に頼らなくても、自然と共存する道があることを静かに示しています。
私たちが学べる視点
日本や他の国・地域に暮らす私たちにとっても、Digang Villageのニュースはどこか遠い話ではありません。都市でも地方でも、参考になりそうな視点がいくつか見えてきます。
- 循環の発想:「捨てる」のではなく、「次につなげる」使い方を考える
- 文化と産業の両立:効率だけでなく、地域の物語や歴史をどう守るかを意識する
- 観光のあり方:「映える場所」を探すだけでなく、その土地の営みを尊重する観方を持つ
Digang Villageは、観光地としての成功だけでなく、「長く続く暮らしの知恵」を世界に示した村でもあります。桑の木、蚕、魚がつなぐ循環する風景は、これからの観光や地域づくりを考える上で、ひとつのヒントになりそうです。
Reference(s):
Digang: A living heritage honored as a UN Best Tourism Village
cgtn.com








