赤外線でよみがえる戦国時代 Zidankuシルク文書に新たな40字超 video poster
戦国時代の古いシルク文書が、現代のテクノロジーによって新たな姿を見せつつあります。今年前半、米国のスミソニアン協会・ナショナル・ミュージアム・オブ・アジアン・アートから湖南に戻された『Zidankuシルク文書』に対し、研究者たちが赤外線画像での再調査を進めた結果、これまで読めなかった文字が40字以上も浮かび上がりました。
2千年前の戦国時代文書に、新しい文字が出現
今回再調査の対象となった『Zidankuシルク文書』は、およそ2千年前の戦国時代にさかのぼるとされる絲帛(しはく)文書です。脆く劣化しやすい素材のため、肉眼では判読が難しい箇所も多く残されていました。
今年に入り、文書がスミソニアン協会のアジア美術館から湖南へ戻されたことをきっかけに、研究チームは赤外線画像を用いた精密な観察を開始しました。その結果、これまでの調査では確認できなかった文字が40字以上見つかり、戦国時代のテキスト研究にとって重要な一歩となっています。
Zidankuシルク文書には何が書かれているのか
これまでの研究から、この戦国時代のシルク文書には、多岐にわたる内容が含まれていることが分かっています。
- 天文:星の動きや天体の配置に関する観察や記録
- 暦法:季節や年月の数え方、暦を作るための計算
- 宇宙論:世界や自然がどのように成り立っているかという考え方
- 軍事占術:戦いの行方などを占う方法や思想
一つの文書群の中に、科学的な観察から宇宙観、そして軍事に関わる占いまでが併存している点は、戦国時代の知と実践が密接に結びついていたことを物語っています。
赤外線画像が古代インクをよみがえらせる
今回の大きな特徴は、赤外線画像技術が活用されていることです。赤外線は人の目には見えませんが、シルクに染み込んだインクとの反応が異なるため、肉眼では消えてしまったように見える文字の痕跡を浮かび上がらせることができます。
研究者たちは、赤外線で文書を撮影し、その画像を解析することで、極めてかすかな線や点を文字として再構成していきます。時間はかかりますが、一画一画を丁寧に読み解く作業によって、2千年前の筆致が再び可視化されているのです。
40字以上の新出文字が開く研究と保存の可能性
今回判明した新たな文字は、単なる読みの穴埋めにとどまりません。これらの文字は、文書全体の構成や内在する論理を再構築するうえで、決定的な手がかりになると考えられています。
たとえば、文章の切れ目や段落の構造がより明確になれば、天文や暦法、宇宙論、軍事占術がどのような順番と関係性で並べられているのかが見えてきます。それは、戦国時代の人々が世界をどう理解し、政治や軍事にどう結びつけていたのかを読み解く重要なヒントになります。
さらに、読み取れる文字が増えることで、文書のデジタル化や翻刻(原文を現代の文字に写し取る作業)も精度が高まり、長期的な保存や公開にもつながります。テクノロジーは、失われかけていた古代の知を次の世代へ引き継ぐための鍵となりつつあります。
テクノロジーと古文書研究のこれから
今回のZidankuシルク文書の成果は、戦国時代研究だけでなく、世界各地の古文書研究にも波及効果をもたらす可能性があります。赤外線画像などの技術は、紙やシルク、木片など、さまざまな素材の文書に応用できるからです。
一方で、テクノロジーが進むほど、どのように記録を残し、どのように文脈を解釈するのかという、人文科学ならではの慎重さも求められます。見えるようになった文字をどう読むのか。その問いに向き合うのは、最終的には人間の研究者です。
2千年前の戦国時代から届いたシルク文書と、21世紀の赤外線技術。その出会いが、私たちの歴史の見方を静かに更新しつつあります。
Reference(s):
Rediscovering the Warring States manuscripts through technology
cgtn.com








