米控訴裁、トランプ氏のE・ジーン・キャロル評決覆し要求を棄却
米国の連邦控訴裁判所が、作家E・ジーン・キャロル氏への性的虐待と名誉毀損を認定した評決を覆そうとしたドナルド・トランプ氏の試みを退けました。2023年に下された民事裁判の結果が維持される形となり、次期大統領とされるトランプ氏を巡る法的リスクが改めて注目されています。
何が決まったのか:控訴裁の結論
米ニューヨークを管轄する第2連邦控訴裁判所は月曜日、トランプ氏側が求めていた再審請求を棄却しました。裁判所は、トランプ氏が地裁の判断に「法的な誤り」があったことを十分に示せていないと指摘し、新たな裁判を開く理由はないと結論づけました。
判決文によると、トランプ氏は証拠採用など複数の点で地裁の判断に問題があったと主張しましたが、控訴裁は「指摘された誤りがあったとしても、トランプ氏の重要な権利に影響を与えたとは認められない」と判断しました。これは、2023年の評決がそのまま維持されることを意味します。
E・ジーン・キャロル氏の訴えとは
今回の事件の原告は、長年雑誌でコラムを執筆してきた作家のE・ジーン・キャロル氏です。キャロル氏は、1990年代半ばにニューヨーク市内の百貨店でトランプ氏から性的暴力を受けたと主張しました。
主な経緯は次の通りです。
- 1990年代半ば:キャロル氏は、トランプ氏から百貨店の更衣室でレイプされたと主張
- 2019年:回顧録の一部が雑誌に掲載される形で公表され、事件を公に訴える
- その後:トランプ氏はテレビや声明でキャロル氏の主張を否定し、信用を貶める発言を行う
キャロル氏は、こうした発言が名誉毀損にあたるとして、性的虐待と合わせてトランプ氏を提訴しました。
2023年の評決:性的虐待と名誉毀損を認定
2023年5月、ニューヨーク南部地区連邦地裁の陪審は、トランプ氏がキャロル氏に対して性的虐待を行い、さらに2022年の発言で名誉を傷つけたと認定しました。陪審は合計500万ドル(約数億円)の損害賠償を命じ、そのうち約300万ドルは名誉毀損に対する賠償とされています。
刑事裁判ではなく民事裁判のため、トランプ氏が刑事責任を問われたわけではありませんが、陪審が性的虐待を認定したことは政治的にも社会的にも大きな意味を持つ判断となりました。
トランプ氏はこれに不服を申し立て、証拠の扱いなど地裁の判断に誤りがあったとして控訴していました。今回の控訴裁判断は、そうした主張を退けたものです。
2024年の別評決:8300万ドル超の賠償命令
キャロル氏とトランプ氏を巡っては、これとは別に、2019年の発言に関する名誉毀損訴訟も進みました。2024年1月、ニューヨーク・マンハッタンの連邦地裁の別の陪審は、トランプ氏に対し、2019年の発言による名誉毀損について8330万ドルの賠償を命じています。
この巨額賠償は、キャロル氏が被ったとされる実際の損害に加え、抑止的な意味合いを持つ懲罰的賠償も含むとされています。トランプ氏はこの評決にも控訴しており、控訴審での判断が今後の焦点となっています。
今回の判断が示すもの:法廷と政治の交差点
今回の控訴裁の判断には、いくつかの重要な意味があります。
- 2023年評決の重みが維持された
控訴裁が再審を認めなかったことで、キャロル氏への性的虐待と名誉毀損を認定した評決が引き続き有効になります。 - トランプ氏の法的リスクの継続
トランプ氏は、複数の民事・刑事手続きに直面しており、その一つが確定に近づいた形です。政治的な立場とは別に、個人としての法的責任が問われ続けています。 - 性暴力と発言の責任
過去の性的虐待の訴えが、長い時間を経て裁判所で検証され、さらに否定発言の法的な責任が問われた点は、性暴力被害と表現の自由の線引きを考える上でも注目されています。
トランプ氏は一貫してキャロル氏の主張を否定しており、今回の判断を受けて今後どのような対応を取るのかは不透明です。一方で、裁判所が示した一連の判断は、権力者とされる人物であっても民事の場で責任を問われ得るというメッセージとしても受け止められています。
これから何を見ておくべきか
今後のポイントとしては、次のような点が挙げられます。
- 2024年1月の8330万ドル評決に対する控訴審の行方
- トランプ氏がさらに上級審への不服申し立てを行うかどうか
- 今回の判断が、米国内の性暴力や名誉毀損訴訟の議論に与える影響
米国政治をめぐるニュースとしてだけでなく、権力と責任、言葉の重みをどう考えるかという点でも、今後の動きを継続的に追う価値のあるテーマだと言えます。
Reference(s):
U.S. court denies Trump's bid to overturn E. Jean Carroll verdict
cgtn.com








