米15州、トランプ氏の「エネルギー緊急事態」大統領令を提訴 化石燃料加速に異議
米国のトランプ大統領が今年「国家エネルギー緊急事態」を宣言し、化石燃料開発の加速を目指す大統領令を出したことに対し、15の州が共同で違法だとして提訴しました。環境規制を緩めてまで化石燃料を優先する動きに、州政府が正面からブレーキをかけようとしているかたちです。
何が起きたのか
今回の訴訟を起こしたのは、ワシントン州を先頭とする米国15州の連合です。ワシントン州のニック・ブラウン司法長官は金曜日に記者会見を開き、トランプ大統領の大統領令を連邦裁判所に提訴したと発表しました。
訴状は全61ページにわたり、ワシントン州西部を管轄する連邦地裁(ワシントン州西部地区連邦地方裁判所)に提出されています。
訴訟に参加した州は次の通りです。
- カリフォルニア州
- アリゾナ州
- コネティカット州
- イリノイ州
- マサチューセッツ州
- メイン州
- メリーランド州
- ミシガン州
- ミネソタ州
- ニュージャージー州
- オレゴン州
- ロードアイランド州
- バーモント州
- ウィスコンシン州
- そしてワシントン州
問題となっている国家エネルギー緊急事態の大統領令
問題の大統領令は、トランプ大統領が今年、再び就任した初日に署名したものです。大統領は国家エネルギー緊急事態を宣言し、米国内の石油、天然ガス、石炭などの化石燃料資源の開発を加速させることを掲げました。
この大統領令は、風力や太陽光、蓄電池といった再生可能エネルギー関連の取り組みを明示的に対象から外し、化石燃料プロジェクトに焦点を当てています。
トランプ大統領は大統領令の中で、米国のエネルギー事情について次のように主張しました。
わが国の国内エネルギー資源の開発が不十分である現状は、敵対的な外国勢力につけ込まれる隙を生み、米国の繁栄と国家安全保障に差し迫った増大する脅威をもたらしている。
州側の主張 本当に緊急事態なのか
15州は、今回の大統領令が1976年制定の国家非常事態法に違反していると主張しています。この法律は、大統領が特別な緊急権限を使えるのは実際に緊急事態が存在する場合に限られ、党利党略や些細な理由で乱用してはならないとする趣旨だと訴状は説明しています。
訴状は、複数の連邦機関がこの大統領令を口実に、本来は緊急時に限られるはずの特別な手続きを、緊急とは言えない場面にも広く適用しようとしていると批判しています。
ブラウン司法長官は会見で、トランプ大統領による緊急事態宣言を「偽物の宣言」だと強く批判しました。米国のエネルギー生産は過去最高水準にあるとしたうえで、次のように述べています。
これは大統領による真剣で合法的な取り組みではありません。競争相手を排除し、米国を永久に汚れた化石燃料に縛り付けることだけが目的なのです。
環境レビューを迂回する動きへの懸念
訴状によると、大統領令の発出後、複数の連邦機関が環境関連法にもとづく審査を省略したり、簡略化したりする動きを見せているといいます。州側は、次のような法律が影響を受けていると指摘しています。
- 水質保全を目的とするクリーンウォーター法
- 絶滅のおそれのある野生生物を守る絶滅危惧種法
- 歴史的建造物や史跡を保護する国家歴史保存法
これらの法律に基づく環境アセスメントや保全措置を迂回し、化石燃料関連プロジェクトの許認可を早めようとしているのではないか、というのが州側の懸念です。
15州は連邦地裁に対し、この大統領令を無効とする判断を出すこと、そして大統領令にもとづいて発行される迅速審査付きの許可を、連邦機関が今後出せないよう差し止めることを求めています。
エネルギー政策と法の支配をめぐる攻防
今回の訴訟は、エネルギー政策をめぐる単なる賛否の対立にとどまらず、大統領権限のあり方や法の支配をめぐる大きな争点もはらんでいます。州側は、緊急事態という強力な権限を「本当の緊急時」に限定しようとする一方で、トランプ政権は国家安全保障と経済を守るためには迅速なエネルギー開発が必要だと訴えています。
世界的に脱炭素や再生可能エネルギーへの転換が課題となる中で、米国がどのようなエネルギー戦略を選ぶのかは、国際的なエネルギー市場や気候変動対策にも影響を与えうるテーマです。今回の訴訟は、その方向性をめぐる国内議論の一端を映し出していると言えるでしょう。
今後、連邦地裁がどのような判断を下すのか、そしてトランプ政権がどこまで化石燃料重視路線を推し進めるのか。2025年の米国エネルギー政策の行方を占う重要な裁判として、引き続き注目が集まりそうです。
Reference(s):
15 states sue over Trump's order to fast-track fossil fuel projects
cgtn.com








