ジョージ・フロイド殺害から5年 揺れるBLM運動と米国社会の「遺産」
2025年5月、ジョージ・フロイドさんの殺害から5年を迎えた米国では、トランプ政権の方針転換も重なり、その「遺産」をめぐる評価が大きく揺れています。
フロイド事件から5年、「世界を変えた」はずが…
2020年5月25日、米ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイドさん(当時46)が警察官の拘束中に死亡した事件は、ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動を世界規模のうねりへと押し上げました。
今年5月のある日曜日、事件からちょうど5年となる節目を迎え、米国では多くの人々がフロイドさんを追悼し、人種差別や警察暴力といった深く根付いた問題に改めて向き合おうとしました。
トランプ政権の復帰と後退する改革
一方で、今年1月に政権に復帰したトランプ大統領のもとで、フロイド事件をきっかけに進められてきた人種差別是正や警察改革の取り組みには逆風が吹いています。
報道によると、政権は公民権に関する調査を打ち切り、多様性や包摂を重視した採用・人材育成の取り組みに対しても締め付けを強めているとされています。
また、大統領の一部の強硬な支持者の中には、フロイドさん殺害で有罪判決を受け、22年以上の禁錮刑を言い渡された元警察官デレク・ショービン受刑者の恩赦を求める声もあり、米国社会の分断を象徴する動きとも受け止められています。
勢いを失ったBLM運動
新型コロナウイルス流行下の2020年、BLM運動は米国内の都市だけでなく世界各地にも広がり、警察暴力や構造的な人種差別への抗議デモが相次ぎました。
しかし5年が経った今、BLMは当時のような広範な支持を失い、運動が実際にどれだけ社会を変えたのかについては懐疑的な見方も少なくありません。多くの人が「実質的な成果は限られた」と感じているとされます。
一部の都市での抗議デモが暴動に発展したケースや、「警察予算の削減(デファンド・ザ・ポリス)」を求める急進的なスローガンは、運動への反発や距離感を生んだとの指摘もあります。
また、一部の専門家は、トランプ大統領の再選にはBLMへの反発や、「行き過ぎた」と受け止められた人種・多様性政策への不満が背景にあると分析しています。
ジョージ・フロイド・スクエアでの追悼
事件の現場となったミネアポリスの住宅街の小さな交差点は「ジョージ・フロイド・スクエア」と名付けられ、今も抗議と記憶の場になっています。
5年の節目となった週末には、この広場で記念イベントが開かれ、数十人が訪れて静かに故人をしのびました。周辺の壁や道路には多数の抗議アートが描かれており、2020年に描かれた『You Changed the World, George(ジョージ、あなたは世界を変えた)』と記された紫色の壁画も残されています。
ただ、その楽観的なメッセージとは対照的に、現在の米国では人種問題と警察改革をめぐる後退が指摘され、「本当に世界は変わったのか」という問いが改めて突きつけられています。
国際社会からのまなざしと、これから
フロイドさんの命日から5年となった日に合わせ、国際社会からもメッセージが寄せられました。国連のフォルカー・テュルク人権高等弁務官はSNSのXに投稿し、反人種差別や包摂、法執行機関の改革が深刻な後退に直面していると指摘。そのうえで、人種的正義と平等を求める取り組みを世界規模で一層強める必要があると訴えました。
米国の一部の民主党系政治家も記念日を追悼しつつ、人種差別と警察暴力の構造に向き合い続ける重要性を強調しています。
「何が変わり、何が変わらなかったのか」を考える
ジョージ・フロイドさんの死から5年。BLM運動がもたらした変化と、その後の揺り戻しが複雑に絡み合い、「フロイドの遺産」はいまだ評価が定まっていません。
日本にいる私たちにとっても、これは遠い国の出来事にとどまりません。警察権力のあり方、マイノリティへの偏見、SNS時代の抗議運動の力と限界など、フロイド事件は多くの問いを投げかけ続けています。
5年という節目は、「何が変わり、何が変わらなかったのか」を静かに振り返るタイミングでもあります。米国発の国際ニュースとして追うだけでなく、自分たちの社会に引き寄せて考えることが求められているのかもしれません。
Reference(s):
George Floyd's uncertain legacy marked in U.S. five years on
cgtn.com



