チベット新年ロサルを彩るヤクバター彫刻 西蔵の無形文化遺産
チベット暦の新年「ロサル」の時期になると、中国西蔵(チベット)では、色鮮やかなヤクバター彫刻が街や寺院を彩ります。チベット語で「ジザ」と呼ばれるこの彫刻は、宗教的な祈りと地域の暮らしをつなぐ、欠かせない存在です。
ヤクバターから生まれる色鮮やかな「ジザ」
ジザは、精製したヤクの乳を加熱して形を変えた特別なバターを材料にします。柔らかく加工しやすい状態にしたヤクバターに、鉱物由来の顔料を混ぜることで、赤や青、緑などの鮮やかな色が生まれます。
職人たちは、このカラフルなバターを指や専用の道具で少しずつ盛り上げながら、繊細な模様を作っていきます。モチーフは、花や木、鳥や動物に加え、人の姿や仏の像まで多様です。ひとつひとつの作品が仏教の物語や教えを表現しており、見る人に祈りや祝福の意味を静かに伝えます。
2006年に国家級無形文化遺産に登録
チベットのバター彫刻は、2006年に中国の国家級無形文化遺産リストに登録されました。無形文化遺産とは、技法や祭礼、口承で受け継がれる知恵など、形のない文化を守り伝えるための仕組みです。
国家レベルで位置づけられたことで、ヤクバター彫刻という伝統技法や、それを支える信仰・生活文化への関心が、改めて高まっています。
ロサルに欠かせない「必需品」
ヤクバター彫刻は、西蔵で祝われるチベット暦の新年「ロサル」に欠かせない存在です。ロサルは数日にわたって続く大きな行事で、家庭や寺院では一年の始まりを祝うさまざまな習慣が受け継がれています。
ロサル前後の主な習慣には、次のようなものがあります。
- チベット暦の最終盤に行う大掃除で、家を清める
- 新年当日の早朝に沐浴し、心身を整える
- 仏壇や寺院の前で供え物をささげ、平穏を祈る
- 近所の人々を訪ね、挨拶や贈り物を交わす
こうした場面で、色鮮やかなバター彫刻は、祈りを表す供物として、また新年を華やかに飾る特別な飾りとして、人々の目と心を楽しませています。
溶けて消えるからこそ、いまを大切にする文化
バター彫刻は温度や時間とともに形を変え、やがて溶けてしまいます。長く残らないからこそ、その瞬間にこめられた祈りや技は、より貴重なものとして受けとめられます。
ロサルのたびに生まれ、やがて姿を消していくジザは、西蔵の人々にとって「いまを祝う」感覚そのものを象徴する存在です。急速に変化する社会のなかで、こうした伝統がどのように受け継がれていくのか。ヤクバター彫刻は、私たちに文化を守る意味について静かに問いかけています。
Reference(s):
Yak butter sculptures brighten Tibetan New Year celebrations in Xizang
cgtn.com








