イラン紛争100日:トランプ大統領の「力による誇示」が政治的リスクに
アメリカとイスラエルがイランに対して軍事作戦を開始してから100日が経過しました。当初、ドナルド・トランプ大統領はこの作戦を自らの「強さ」を示す機会として提示していましたが、事態は次第に国内での政治的な足かせへと変わりつつあります。
国民の不安の高まり、共和党内の分断、そして今年予定されている中間選挙への影響など、紛争がもたらした波紋は広がっています。
「安全保障」から「生活コスト」へ変わる視点
紛争が4カ月目に入った今、多くのアメリカ国民は、この問題を国家安全保障という視点よりも、日々の「生活コストの上昇」という切実な問題として捉え始めています。
5月に実施されたロイター/イプソスによる世論調査では、以下のような傾向が明らかになりました。
- 目標の不透明さ: アメリカ人の3分の2が、トランプ大統領が戦争の目的を明確に説明できていないと感じている。
- 経済的負担: ガソリン価格の上昇やインフレへの懸念が、国民の感情に強く影響している。
CNBCの分析によれば、この紛争期間中、アメリカの一般家庭は平均して約450ドル(約6万〜7万円相当)の追加支出を強いられたと試算されています。
膨らむ戦費と急落する支持率
戦費の増大は、ワシントンでも大きな論点となっています。5月に国防総省が議会に報告した内容では、作戦費用はすでに約290億ドルに達しているといいます。しかし、独立系のアナリストは、機材の補充や間接的な費用を含めれば、実際の金額はさらに跳ね上がると指摘しています。
このような状況の中、トランプ大統領の支持率は急落しています。エコノミスト誌の世論調査トラッカー(YouGovベース)によると、ネット支持率はマイナス25ポイントまで低下。これは2009年にトラッカーが開始されて以来、歴代大統領の中で最低の水準となりました。
「アメリカ第一」を巡る党内の亀裂
反発は民主党だけでなく、トランプ氏の基盤である共和党内部にも広がっています。一部の議員は、出口の見えない紛争が、トランプ氏を権力の座に返り咲かせた「アメリカ第一(America First)」というメッセージを損なうリスクがあると警告しています。
この政治的摩擦は、議会での具体的な動きとして現れています。
- 権限への制限: 民主党は、大統領の戦争権限を制限する措置を導入し、議会による監視を強化しようとしています。
- 超党派の動き: 今週、4人の共和党下院議員が民主党に同調し、トランプ大統領の戦争権限を抑制する決議を支持しました。これはホワイトハウスにとって稀な超党派からの拒絶となりました。
共和党のトーマス・マッシー下院議員は、議会の承認なしに軍事行動を行うことは「アメリカ第一ではない」と主張し、ランドポール上院議員も中東へのさらなる介入に疑問を呈しています。
中間選挙への影響と、揺らぐ同盟の前提
経済的な不安が広がる時期は、歴史的に政権党にとって不利に働きます。民主党の戦略家はこのパターンを利用し、政権が国外に目を向けすぎたことで国内問題が放置されていると訴えています。激戦区にいる共和党候補者にとっても、ガソリン価格の上昇は深刻な懸念事項です。
また、今回の紛争をきっかけに、これまで政治的にタブー視されてきた「イスラエルの役割」についての議論も表面化しています。
一部の保守層や元側近の間では、イスラエルのネタニヤフ首相が、トランプ氏の「アメリカ第一」の方針に反して、アメリカをコストの高い中東戦争に引き込んだのではないかという疑問が出始めています。
若年層の有権者を中心にイスラエルへの懐疑的な視線が強まる中、進歩的な民主党員と共和党の孤立主義的な翼が、奇妙な一致を見せるという現象が起きています。トランプ大統領は、「外国の紛争への不介入」を掲げて当選した経緯があるため、同盟国との関係維持と国内支持者の期待という、非常に難しいバランス調整を迫られています。
Reference(s):
cgtn.com



