中国本土の研究チーム、海水からウランを回収する新膜を開発
中国本土の研究チームが、海水や塩湖の水からウランを効率よく取り出せる新しいバイオミメティック(生体模倣)膜を開発しました。原子力の重要資源であるウランをめぐり、資源確保と環境負荷の低減の両立に一歩近づく技術として注目されています。
中国本土の研究チームが狙う「海のウラン」
この研究成果は、このほど科学誌「Advanced Materials」に掲載され、中国本土の蘭州大学の研究チームによるものと、Science and Technology Daily が伝えています。論文によると、研究チームは電荷の集積と水素結合を利用して二次元のバイオミメティック膜を構築し、海水や塩湖水に含まれるウラニルイオン(ウランの一種)を選択的に分離することに成功しました。
ウランは原子力産業にとって欠かせない資源です。中国本土では長年にわたりウラン鉱石の不足が課題とされてきましたが、海水や塩湖には低濃度ながら大量のウラニルイオンが存在するとされています。問題は、それを経済的かつ効率的に取り出す技術が難しいという点でした。
植物細胞壁に学んだ「自己強化」する膜
近年、グラフェン酸化物に代表される二次元材料は、イオン分離技術の有力候補として世界的に研究が進んでいます。しかし従来のグラフェン酸化物膜は、高い圧力がかかったり長期間使用されたりすると構造が壊れやすいという弱点がありました。
研究チームは、植物の細胞壁が圧力を受けると、より強く高密度な構造へと再編成される性質に着目しました。この自然の仕組みをまねるかたちで、グラフェン酸化物にエンジニアリングされた細菌を組み合わせることで、緻密で安定した二次元バイオミメティック膜を作り上げたとしています。
12倍の強度と高い選択性、低エネルギー
論文によれば、この新しい膜は従来のグラフェン酸化物膜と比べて、機械的強度が12倍以上に向上しました。それだけでなく、ウラニルイオンを狙って捉える高い選択性を示し、精密な分離が可能になったと報告されています。
論文の責任著者であるLi Zhan氏は、この成果について「海水からウランを取り出すための効率的で持続可能な方法を提供するものだ」と述べています。また研究チームの一員であるTian Longlong氏によると、新膜は選択性と安定性に優れ、エネルギー消費も少ないことから、ウラン資源回収の産業化を後押しすることが期待されています。
水処理からエネルギー回収まで、広がる応用可能性
研究チームは現在も、膜構造の設計や大規模生産プロセスの最適化を進めており、技術の実用化・産業化を加速させることを目指しています。蘭州大学は、この技術がウランだけでなく、海水や廃水からの希少金属の回収にも応用できるとしています。
同大学によると、このバイオミメティック膜は、水処理や廃水の再利用、エネルギー回収など幅広い分野での応用が見込まれます。資源不足やエネルギー危機、環境汚染といった世界的な課題に対し、新しい選択肢を提供しうる技術と位置づけられています。
「資源×環境×テクノロジー」をつなぐ新しい潮流
海水からウランを取り出す技術は、これまでも「海の資源」をどう活用するかという観点から注目されてきました。今回の研究は、材料科学と生物の仕組みを組み合わせることで、その難題に一歩踏み込んだ試みだと言えます。
もちろん、実際に大規模なウラン回収や水処理に使われるまでには、コストや安全性、環境への影響など、多くの検証が必要です。それでも、「資源の確保」と「環境負荷の低減」を同時に追求するこうした研究は、エネルギーと環境をめぐる議論が続く2025年現在、私たちに新しい選択肢と問いを投げかけています。
Reference(s):
Chinese researchers invent biomimetic membrane to extract uranium
cgtn.com








