中国本土の研究チーム、フレキシブル太陽電池で効率33.6% 曲げ耐久も記録級
フレキシブル太陽電池の「効率」と「曲げに強い安定性」を同時に伸ばすのは難題でした。中国本土の研究者がこの壁を体系的に解きほぐし、超薄型シリコン基板のタンデム太陽電池で変換効率33.6%を達成したと、今週月曜日に中国科学日報が報じました。
何が発表された?――フレキシブルな“タンデム太陽電池”の節目
報道によると、蘇州大学の研究者が主導した研究が、先週木曜日に学術誌「Nature」に掲載されました。テーマは、結晶シリコンとペロブスカイトを重ねる「タンデム太陽電池」を、薄く曲がる形(フレキシブル)で高性能化することです。
タンデム型は、異なる材料を重ねて光の利用効率を上げる考え方ですが、フレキシブル化すると、曲げ応力で層のはがれ(剥離)や劣化が起きやすくなります。今回の研究は、その弱点を正面から扱っています。
実用化のボトルネック:効率が伸びない/曲げると傷む
研究チームが挙げた大きな課題は2つです。
- 効率:フレキシブル素子は、剛性(硬い)デバイスに比べて変換効率が劣りやすい
- 耐久性:繰り返しの曲げや厳しい環境で、界面が剥離・劣化しやすい
どちらか一方だけを改善しても、もう一方が足を引っ張り、量産・実装の見通しが立ちにくい――この構図が「フレキシブル結晶シリコン/ペロブスカイト・タンデム」の難所でした。
ブレークスルーの中身:界面を“設計”して壊れにくくする
「ゆるい-きつい」二層バッファで、応力を逃がしつつ電荷を通す
研究チームは、二層のバッファ(緩衝)層を設計し、"loose-tight"(ゆるい-きつい)構造を採用したとされています。狙いは、
- 曲げによる機械的ストレスをうまく散らす
- 同時に、ナノスケールでの電荷輸送(電気の流れ)を損なわない
という両立です。フレキシブル化で起きやすい「割れないようにすると電気が流れにくい」「電気を優先すると界面が弱い」といった綱引きに、構造設計で折り合いをつけた形です。
水素ドープ酸化インジウム・セリウム膜:ダメージを抑え、整合を高める
もう1つのポイントは、反応性プラズマ堆積により水素ドープの酸化インジウム・セリウム(indium-cerium oxide)薄膜を作製する方法です。報道では、これによって
- 界面へのスパッタ損傷(形成プロセス由来のダメージ)を最小化
- エネルギーレベル整合(電気が“段差”で詰まりにくい状態)を最適化
できるとされています。フレキシブル素子では、材料同士の接触面(界面)が性能と寿命を左右しやすく、プロセス起因の微細な傷が長期劣化につながることもあります。そこを製膜手法で詰めにいった、という説明です。
数字で見る今回の到達点(報道ベース)
今回の成果として示された主な数値は次の通りです。
- 認証済み変換効率 33.6%:厚さ60マイクロメートルの超薄型シリコン基板上のフレキシブル・タンデム
- 大面積(261平方センチ)で効率 29.8%:標準的なウエハーサイズ相当のスケールでの記録
- 曲げ耐久:極端な曲げを43,000回繰り返した後も、初期効率の97%を維持
効率の高さだけでなく、面積を広げたときの性能、さらに曲げサイクルでの維持率まで一緒に示されている点が、この分野の「実装距離」を測る上で注目されます。
「薄くて曲がる」太陽電池が現実味を帯びる場面
研究チームは、この成果がフレキシブル太陽光発電の大規模応用に向けた科学的・技術的基盤になるとしています。フレキシブル型が想定する利用場面は、硬いパネルでは難しい形状や重量制約があるところです。
- 曲面・軽量が求められる設計(形状に“追従”する発電部材)
- 繰り返し荷重がかかる環境(動きや振動を前提とする用途)
- 大面積化や製造時の歩留まりが鍵になる量産領域
今回の報道内容は、まさにこの3点(形状追従・耐久・面積)に同時に触れています。裏を返すと、フレキシブル太陽電池は「効率が出た」だけでは足りず、「曲げても剥がれない」「大きくしても性能が落ちにくい」という工学的な条件が揃って初めて、選択肢として立ち上がってくる分野だと言えそうです。
読み解きのポイント:性能競争は“材料”から“界面とプロセス”へ
今回の説明で印象的なのは、主役が単一材料の改良というより、層と層の間(界面)や作り方(製膜・堆積プロセス)に置かれていることです。タンデムは構造が複雑になりやすく、フレキシブルでは機械的負荷も加わります。だからこそ、
- 応力を逃がす設計
- 電荷の通り道を確保する設計
- 界面を傷つけにくい作製法
といった“見えにくい部分”が、最終的な効率と寿命を左右しやすい――そんな現場感が、数字の並び方からも伝わってきます。
フレキシブル太陽電池は、発電効率の話だけでなく、素材・工程・耐久試験の積み重ねがそのまま実装可能性に直結します。今回の記録が、次にどんなサイズや条件で再現され、どこまで製造スケールに接続していくのか。2026年のエネルギー技術の話題として、静かに追いかけたいテーマです。
Reference(s):
Chinese researchers achieve breakthrough in flexible solar cells
cgtn.com








