AIロボット魚が変える中国のデジタル漁業 養殖現場の負担軽減へ
AIを活用したロボット魚が、魚の養殖(アクアカルチャー)のあり方を静かに変えつつあります。2025年12月現在、北京の国家デジタル漁業イノベーションセンター(National Innovation Center for Digital Fishery)では、研究者たちが漁業の現場を支える新しい相棒を水槽の中で泳がせています。
北京の水槽を泳ぐロボットマグロとロボットイルカ
北京の試験水槽を優雅に泳いでいるのは、金属光沢のある2匹のロボット魚です。中国農業大学(China Agricultural University)のリウ・ジンツン准教授によると、チームが開発したロボットマグロとロボットイルカで、それぞれ異なる泳ぎ方の特徴を持ちながら、目的は同じ――魚の養殖を支援することです。
リウ准教授が所属するのは、水中バイオニック・ロボット(生き物の動きをまねたロボット)を研究するチームです。彼らは、これまで人の手に頼ってきた養殖の作業を、より効率的で安全なものにしようと取り組んでいます。
「漁師の仕事を楽にしたい」現場経験20年以上の声
チームの一員で、20年以上の経験を持つウェイ・ヤグアン氏は、漁師の仕事を少しでも楽にしたいと語ります。彼が思い出すのは、広大な海面養殖場を人の手だけで点検していた時代です。
かつては、直径およそ400メートルの海上の養殖用ネットケージ1基を調べるだけでも、ダイバーが3〜4日かけて潜り続けることがありました。時間も費用もかかるうえ、天候や海の状態によっては危険も伴います。
こうした負担の大きい作業を少しでも減らしたい――その思いが、ロボット魚開発の背景にあります。
AI精度で支える「デジタル漁業」
北京の国家デジタル漁業イノベーションセンターでは、AIを活用した精密な管理によって、養殖現場を支えるデジタル漁業の研究が進められています。ロボット魚は、その象徴的な存在です。
ロボット魚は、人間のダイバーのように水中を自由に移動できるうえ、長時間の連続作業も可能です。AIによって動きや水中の状況把握を最適化することで、次のような役割が期待されています。
- 養殖用ネットケージや設備の点検を、より短時間で行うこと
- 魚の様子や泳ぎ方の変化を観察し、異常の早期発見につなげること
- 日々の作業をデータとして蓄積し、将来の養殖計画に活用すること
これまでベテランの経験と勘に頼ってきた部分を、AIが補助することで、作業のばらつきを減らし、安定した生産につなげようとする発想です。
人手不足と安全性の課題にどう向き合うか
魚の養殖は、広い海面や水槽の管理、給餌、設備点検など、多くの作業が必要な産業です。高齢化や人手不足が進む地域では、作業負担の大きさが将来の不安材料にもなっています。
ロボット魚のような水中ロボットが現場に入れば、危険を伴う潜水作業を減らし、人がより判断や計画立案に集中できるようになる可能性があります。一方で、新しい機器を扱うためのデジタル技能や、導入コストをどう確保するかといった課題も残ります。
テクノロジーは「現場の敵」ではなく「相棒」になれるか
北京で進むロボット魚の研究は、AIやロボット技術が、現場の経験を置き換えるのではなく、危険で反復的な作業を引き受ける相棒になれるのかという問いを投げかけています。
今後、こうした技術が実際の養殖現場にどのような形で導入されるのか、そして漁師や養殖業に携わる人たちの働き方をどう変えていくのか。デジタル技術と伝統的な産業の出会いを追いかけることは、世界の食と働き方の未来を考えるうえでも重要になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








