6GはAI時代の基盤に 中国移動専門家が語る次世代ネットワーク像
6Gは通信速度をさらに高める技術として語られがちですが、中国移動の主任専門家・劉光毅氏は、AIと社会のインテリジェント化を支える「新しいネットワーク能力」こそが核心になると指摘しました。
6Gは速さだけではない 次に問われるのは「能力」
今年開かれたGlobal 6G Conference 2025で、劉光毅氏はインタビューに応じ、6Gの本質は「高速化」よりも、ネットワークに新しい次元の能力を持たせることだと強調しました。
劉氏は、5Gを設計していた約10年前を振り返り、当時は現在のようなAIの急速な発展を予想していなかったと語ります。議論の中心は、通信速度や効率をどこまで引き上げられるかという点に置かれていました。
その結果として、通信以外の機能をどのようにネットワークに組み込み、連携させるかという視点が十分ではなかったといいます。6Gでは、その反省を踏まえ、最初からさまざまな能力を統合したネットワーク設計が求められているという見立てです。
AI社会を支える「インテリジェントなネットワーク」とは
劉氏は、社会全体がデジタル化とインテリジェント化へ向かうなかで、「将来のインテリジェントなアプリケーションは、あらゆる場面に広がる」と指摘しました。そうした社会を支えるには、従来型の通信ネットワークではなく、もっと賢く柔軟なインフラが不可欠になります。
ここでいう新しいネットワーク能力とは、単にデータを速く運ぶだけでなく、現場の機器やサービスと連携しながら、必要な情報処理や制御をきめ細かく支援できるような機能を含みます。
劉氏のメッセージは、6Gをめぐる国際ニュースや技術報道でしばしば強調される「何ギガビット出るのか」という競争から一歩引き、AI時代にふさわしいネットワークの在り方を問うものだと言えます。
ロボットカーから身の回りのデバイスまで 6Gが変えるもの
インタビューの中で劉氏は、6Gが支える具体的な対象として、次のような例を挙げています。
- ロボティクス(さまざまなロボット技術)
- インテリジェントなコネクテッドビークル(ネットワークにつながる自動車や移動体)
- インテリジェントハードウェア(周辺機器やIoT機器などのスマートデバイス)
劉氏によれば、6Gネットワークがこれらの技術をより軽量でコンパクト、かつ低コストにすることで、大量導入がしやすくなり、社会全体のインテリジェント化が一気に加速し得ます。
例えば、ロボット側の処理をすべて大きなコンピューターに任せるのではなく、ネットワークと協調させながら必要な機能だけを持たせることで、ロボット本体を小型化し、コストも抑えられる可能性があります。同じ発想は、コネクテッドカーや身の回りのスマートデバイスにも広く応用できます。
ネットワークそのものも「賢く」なる セルフマネジメントへの期待
6Gは、利用者側のサービスだけでなく、ネットワークそのものの運用にも大きな変化をもたらすと見込まれています。劉氏は、5Gまでのネットワーク運用は人手に大きく依存しているとしたうえで、「将来はネットワークがロボットのように自分で自分を管理する」姿を描きました。
現在、通信インフラの世界では、障害対応や設備の点検、トラフィックの最適化など、多くの業務が人の判断と作業に支えられています。6G時代には、ネットワークが自ら状態を把握し、トラブルを検知し、必要に応じて自律的に調整することが期待されています。
劉氏は、こうしたセルフマネジメントが実現すれば、通信事業者の運用コストは大幅に低減し得ると指摘しました。運用コストが下がれば、より広いエリアへの投資や、新しいサービス開発に資源を振り向けやすくなる効果も見込まれます。
6GとAIがもたらす社会変革 私たちの生活へのインパクト
劉氏の見方を踏まえると、6Gはスマートフォンの通信速度を上げる技術というより、AIを前提とした社会インフラへの進化だと捉えることができます。
そのインパクトは、次のような場面で現れてくる可能性があります。
- 移動中でも高度なAIサービスを安定して利用できるモビリティ体験
- 多様なロボットやセンサーが連携するスマートファクトリーやスマートシティ
- 小型で安価なインテリジェント機器が普及し、個人や中小企業でも高度な自動化を活用できる環境
国際ニュースとしての6G報道は、各国や企業の開発競争や標準化の行方に注目が集まりがちです。しかし、劉氏の発言は、その先にある「社会のインテリジェント化」という視点から、6Gを見直すきっかけを与えています。
問い直されるのは「どんな6Gをつくるか」
6GとAIが組み合わさった世界では、技術だけでなく、使い方やルールづくりも重要になっていきます。どの分野に優先的に適用するのか、誰もが恩恵を受けられるようにするには何が必要かといった問いは、専門家だけでなく社会全体で考えるテーマになっていきます。
劉氏のメッセージは、次世代ネットワークの議論を、「どれだけ速いか」から「どのようなインテリジェント社会を支えるのか」へとシフトさせるものです。6Gをめぐる日本語ニュースや国際ニュースを追う際も、この視点を頭の片隅に置いておくと、技術動向の意味がより立体的に見えてくるはずです。
Reference(s):
6G to empower AI and transform society, says China Mobile expert
cgtn.com








