李強首相、ASEAN・GCCとの協力強化を訴え 中国経済の「海のような」底力
2025年5月27日、マレーシアの首都クアラルンプールで開かれたASEAN-中国-GCC経済フォーラムの開幕式で、中国の李強首相が演説を行いました。経済の先行き不透明感が高まるなか、アジアと湾岸地域の協力をどう再設計するかについて、3つのメッセージを示しました。
サミットと連動した新たな三者協力の場
同日開催されたASEAN-中国-GCCサミットは、Synergizing Economic Opportunities Toward Shared Prosperity(経済機会の相乗効果で共通の繁栄へ)をテーマに、経済協力の方向性を議論しました。李首相は、このサミットと連動する経済フォーラムで、政界だけでなくビジネス界を含む幅広い参加が重要だと強調しました。
1. 危機の時代にこそ「連帯と開放」でチャンスをつくる
李首相はまず、世界の政治・経済環境が大きく揺れ、経済グローバル化がかつてない打撃を受けていると指摘しました。平和や発展、ウィンウィン協力といった価値が試されるなかで、ASEAN、中国、GCCの3者が連帯すること自体が戦略的なチャンスになると位置づけました。
- 地政学的な対立が強まるほど、相互信頼を深めることで長期的な戦略的機会を生み出せる
- 保護主義や一方的な措置が広がる中でも、市場を開き、障壁を取り除けば巨大な域内市場が形成される
- サプライチェーンの分断やデカップリングの流れに対しても、資源や産業を補完し合うことで、産業高度化の機会に変えられる
3者の市場をつなぐことで、世界有数の規模を持つ域内市場が生まれ、いわば「1+1+1が3を超える効果」を生み出せるというメッセージです。
2. 2000年以上の交流が示す「長い歴史と大きな潜在力」
次に李首相は、中国から中東へ向かったラクダのキャラバンや、南洋(現在の東南アジア)に向かった船団の歴史に触れ、2000年以上にわたる人・モノの往来が現在の協力の土台になっていると語りました。
そのうえで、3者は世界の人口と経済の約4分の1を占める一方で、貿易は世界全体の約5%にとどまっていると指摘し、貿易・投資拡大の余地は大きいと訴えました。
効率的な経済とイノベーション・エコシステムへ
李首相が描いた将来像の要点は大きく3つです。
- 生産要素(人材、資本、技術)の移動をスムーズにし、産業連携を進めれば、エネルギーや物流コストが下がり、金融サービスも効率化する
- 先端技術の活用が進むことで、各国経済の競争力とレジリエンス(回復力)が高まる
- それぞれが得意とする分野を持ち寄ることで、新産業や新しいビジネスモデルが生まれるダイナミックなイノベーションの生態系を構築できる
李首相は、こうした連携が3者を世界のイノベーション地図の中で「より高い位置」に押し上げると述べました。
3. 中国経済の「海のような」安定感と成長力
三つ目のメッセージは、中国の高品質な発展が3者協力の新たな原動力になるという点です。李首相は、今年第1四半期の中国のGDP成長率が前年同期比5.4%と主要国の中でも高い水準にあることなど、具体的な数字を挙げました。
- 一定規模以上の工業企業の付加価値は前年同期比6.4%増
- 輸出は前年同期比7.5%増と、外部環境の逆風の中でも拡大
- ハイテク製造業の付加価値は9.8%増、ハイテクサービス投資は11.3%増
- 新エネルギー車の生産と販売はともに400万台を突破
- スマート工場が製造業の8割以上をカバー
これらの数字を踏まえ、習近平国家主席の言葉を引用しながら、中国経済は池ではなく海であり、嵐に耐え、むしろ開放性と包摂性を高めていくと強調しました。
内需拡大とマクロ政策で下支え
李首相はまた、外部リスクに対応するため、中国はより積極的で効果的なマクロ経済政策を実施していると説明しました。具体的には、
- 財政支出を過去最高水準まで拡大し、需要を下支えしていること
- 通貨・金融面でも適度に緩和的な政策をとり、資金供給を強化していること
- 景気の局面に応じて逆周期調整をさらに強めていく方針であること
戦略面では、超大規模経済としての強みを生かし、内需拡大と国内循環の強化を優先するとしました。消費を押し上げるための取り組みや、産業の高付加価値化・スマート化・グリーン化も加速させると述べ、世界各国からの質の高い製品やサービスに対して、中国市場をさらに開いていく姿勢を示しました。
WTO中心の多国間体制とサプライチェーン安定を重視
李首相は、3者協力を進めるうえで、世界貿易機関(WTO)を中心とする多国間貿易体制をしっかりと守り、安定した国際市場環境を維持することが不可欠だと述べました。
同時に、科学技術革命と産業転換が進む中で、ハイテク分野の協力を拡大し、産業・サプライチェーンの安定と円滑さを守ることの重要性も強調しました。これは、部品調達やエネルギー供給など、実務レベルのビジネスにも直結するメッセージです。
日本語で読む国際ニュースとしての視点
今回の演説は、ASEAN、中国、GCCという三つの地域が、
- 対立ではなく連携によって危機をチャンスに変えようとしていること
- 長い交流の歴史を土台に、貿易・投資・イノベーションの新しいネットワークを築こうとしていること
- 中国経済の動向が、周辺地域の成長機会と密接に結びついていること
を示しています。
アジアと中東のダイナミックな動きは、日本を含む周辺の国や企業にとっても無関係ではありません。どのような形で市場をつなぎ、どの分野で協力を深めるのか。李強首相の演説は、そうした問いを考えるための一つの素材と言えそうです。
Reference(s):
Full Text: Li Qiang's speech at ASEAN-China-GCC Economic Forum
cgtn.com








