中国のNational Sight DayとAI眼科医療 ユニバーサル・アイヘルスへの挑戦
テクノロジーで守る視力:中国のNational Sight DayとAI眼科医療
2025年6月6日、中国では第30回となる「National Sight Day(全国視力保健デー)」が実施され、今年のテーマには「ユニバーサル・アイヘルス(Universal Eye Health)」が掲げられました。目の健康をすべての人に届けるというこのテーマは、国としての公衆衛生政策とテクノロジーの融合を象徴しています。
目の病気と向き合う中国:10億人超が何らかの疾患
2024年12月に開催された第7回全国眼科学浦江フォーラムで示された情報によると、中国は世界で最も多くの眼疾患患者を抱えています。近視、ドライアイ、白内障の患者数を合計すると10億人を超え、未成年の近視有病率は54%に達しています。
未成年の2人に1人以上が近視という状況は、個人の生活の質だけでなく、教育や労働力、医療費など社会全体にも影響する深刻な課題と言えます。その一方で、こうした課題が、目の健康を守るための新しい技術や仕組みの導入を加速させています。
「第14次五カ年国家眼の健康計画」最終年とAI活用
2021〜2025年を対象とする「第14次五カ年国家眼の健康計画」は、2025年に最終年を迎えます。この節目に向けて、特に注目されているのが人工知能(AI)を活用した眼科医療の高度化です。
2024年11月には、中国の国家衛生健康委員会が「医療・健康分野におけるAI応用シナリオ参照指針」を発表し、医療現場へのAI導入を後押ししました。この指針では、オンラインの問診やAIによる一次トリアージ(緊急度の仕分け)が重点分野として位置づけられています。
眼科の領域では、AIは単なる診断補助にとどまらず、診断から治療方針の決定、経過観察までを含む臨床サービス全体を支える存在へと進化しつつあります。
クラウド型AI「CC-Cruiser」が支える白内障診療
その代表的な例が、中山大学中山眼科学センターが開発したクラウドプラットフォーム「CC-Cruiser」です。これは白内障の診断と治療を支援するAIシステムで、画像認識技術と臨床パス(標準的な診療プロセス)のモデルを組み合わせているのが特徴です。
患者の眼の画像を解析し、白内障の進行度を自動的に評価したうえで、どのような治療が適切かを提案します。さらに、このプラットフォームはクラウド上で動作するため、基層医療機関(地方や地域の医療機関)からでもアクセスでき、遠隔での診療支援が可能になります。
専門医が不足しがちな地域においても、一定水準の診断と治療方針の提示ができることは、白内障患者のケアを支える重要なインフラになりつつあります。
子どもの目を守る:上海のAIスクリーニング
子どもの目の健康を守る取り組みでも、AIが存在感を高めています。上海市では、小児の眼疾患を対象としたAI支援のスクリーニング・管理システムが導入され、すでに数万人規模の子どもたちをカバーしています。
このシステムでは、屈折異常(近視・遠視など)、斜視、弱視といった代表的な小児の目の病気を早期に発見し、早い段階で介入できるよう設計されています。スクリーニングの結果はAIが解析をサポートし、その場でデータ共有や個別の治療方針の提案が行われます。
従来であれば時間と人手がかかっていた判定作業やデータ管理をAIが肩代わりすることで、検査の精度と効率の両方が高まり、学校や地域での一斉検診の負担も軽減されつつあります。
ユニバーサル・アイヘルスに向けて私たちが考えたいこと
今年のNational Sight Dayが掲げた「ユニバーサル・アイヘルス」というテーマは、単に最新の医療技術を導入することだけを意味しているわけではありません。都市と地方、世代や所得の差にかかわらず、誰もが必要なときに目のケアを受けられる状態をどうつくるかという問いでもあります。
中国では、AIやクラウド技術を活用した眼科医療の取り組みが、国家計画の最終年を迎えるなかで着実に広がっています。こうした動きは、デジタル技術を公衆衛生にどう生かすかを考えるうえで、アジアそして世界にとっても示唆に富んだケーススタディと言えるでしょう。
スマートフォンやPCの画面を見る時間が長くなった現代社会において、目の健康は誰にとっても身近なテーマです。海外で進む取り組みを知ることは、自分や身近な人の目をどう守るかを考え直すきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
National Sight Day: Safeguarding vision with technology in China
cgtn.com








