世界環境デー2025:中国とアフリカが挑むプラスチック汚染
2025年の世界環境デーのテーマは「Beat Plastic Pollution(プラスチック汚染とたたかおう)」です。中国とアフリカが直面するプラスチック汚染の課題と、その先に見える協力の可能性を、中国とケニアの専門家の対話から読み解きます。
世界環境デー2025が映し出した「プラスチックの時代」
世界が世界環境デー2025を迎えた今年、「Beat Plastic Pollution」というテーマが掲げられました。プラスチックごみは、海や川だけでなく、人間の健康や食料安全保障にも影響を与える「いま起きている」環境問題です。
こうした現状を受けて、中国とアフリカの関係に焦点を当てる番組「China-Africa Talk」では、中国の公共環境研究機関であるInstitute of Public and Environmental Affairs(IPE)創設者の馬軍(Ma Jun)氏と、ケニアでブルーエコノミー政策を担うシニアアドバイザー、Ali-Said Matano氏が、プラスチック汚染の実態と協力の可能性について語りました。
この記事のポイント
- 中国とアフリカで進むプラスチック汚染の実態
- 使い捨てプラスチック禁止やごみ分別などの政策転換
- 都市や地域レベルのローカルな取り組みの重要性
- デジタルツールやリサイクル技術を軸にした中国・アフリカ協力の可能性
環境と健康への影響:中国とケニアで見えているもの
馬軍氏は、中国で観察されている状況について、「影響は生態系全体と、人間の幸福にまで及んでいる」と説明します。マイクロプラスチック(微小なプラスチック片)は、低次の生物や海洋生物の体内から検出されており、「魚のサンプルの約3割からマイクロプラスチックが見つかっている」と指摘しました。大気中を漂うマイクロプラスチックや、土壌への蓄積も新たな懸念材料だといいます。
ケニアでも、プラスチック汚染はすでに生活に直結する問題になっています。Matano氏は、家畜が多いケニア北部の状況を紹介し、「家畜がプラスチックを飲み込んで死亡するケースが出ている」と話しました。さらに、人間はマイクロプラスチックを含む可能性のある魚を食べており、「食物連鎖を通じて、最終的に私たちの体に戻ってくる」と警鐘を鳴らしています。
変わる社会の意識と政策:使い捨てからの脱却へ
両氏が共通して強調したのは、「プラスチックに対する社会の見方が大きく変わりつつある」という点です。
中国では、使い捨てプラスチックの禁止や、ごみの分別を義務づける制度、企業に回収やリサイクルを求める拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility:EPR)が、徐々に新しい当たり前になりつつあります。日常生活の中で「捨てる前提」だったプラスチックを、できるだけ循環させる方向へルールがシフトしています。
ケニアでも、政策転換は早い段階から始まっていました。2017年には、世界でも厳しい部類に入る使い捨てプラスチック袋の禁止が導入されました。現在は、生分解性の包装材への移行や、より持続可能な代替素材の利用を進める動きが加速しています。
一方で、両国ともに共通する課題が「実効性のある運用」です。都市部と比べて仕組みが届きにくい農村部では、監視や啓発のリソース不足が障害になっており、ルールを現場に根づかせる工夫が求められています。
鍵を握る「ローカル」:都市と地域から変える
馬軍氏は、「ローカルな取り組みが成功の鍵だ」と強調します。中国では、上海や蘇州といった大都市で、ごみ分別の徹底やリサイクル、資源を繰り返し利用するサーキュラーエコノミーのモデルづくりが進んでいます。市民の行動変容と自治体の制度設計がかみ合うことで、目に見える成果が出始めているといいます。
ケニアでも、EPRの枠組みが動き出しつつありますが、Matano氏は「民間企業と行政の連携、そして各カウンティ(郡)での能力強化が不可欠だ」と指摘します。ルールを作るだけでなく、現場で実行するための人材育成や、インフラ整備をどう両立させるかが次のステップになっています。
中国・アフリカ協力の新しいかたち:デジタルとリサイクル技術
今後の展望について、両氏は中国とアフリカの協力に大きな可能性を見ています。
Matano氏は、「廃棄物管理や技術的な解決策で、中国の経験から学べることは多い」と述べたうえで、「アフリカの多くの国々も、独自の現場の知恵やイノベーションを持っている。南南協力(グローバル・サウス同士の協力)をさらに深めたい」と期待を語りました。
馬軍氏が紹介したのが、中国で展開されている環境情報アプリ「Blue Map」です。水質やプラスチック汚染の状況を可視化し、市民と企業、行政をつなぐこのデジタルツールは、「アフリカのパートナーと共有したり、共同開発したりする余地が大きい」といいます。リサイクル技術や、汚染を見える化する仕組みづくりなど、協力のメニューは広がりつつあります。
共有された課題を、共有されたチャンスに
馬軍氏は、「プラスチック汚染は共通の課題であると同時に、よりグリーンで持続可能な未来を一緒につくるための共通のチャンスでもある」と語りました。国や地域が異なっても、川や海、大気はつながっています。だからこそ、経験や技術を持ち寄ることに意味があります。
世界環境デー2025をきっかけに交わされた中国とアフリカの対話は、年末の今も変わらない問いを私たちに投げかけています。それぞれの国の政策や企業の取り組みだけでなく、レジ袋の使い方や飲み物の選び方など、日々の小さな選択もまた、プラスチック汚染を減らす一歩になり得ます。
国際ニュースとしての中国・アフリカ協力を追いながら、「自分の足もとから何が変えられるか」。そんな視点で、今年の世界環境デーを改めて振り返ってみてもよさそうです。
Reference(s):
World Environment Day: How China and Africa tackle plastic pollution
cgtn.com








