尼山フォーラムが映す「多様性の美」 文明対話が拓くグローバル近代化
中国・山東省曲阜市で最近開催された第11回尼山世界文明フォーラムで、「多様性の美」をキーワードに、文明間の対話がグローバルな近代化をどう支えうるかが議論されました。
孔子の故郷・尼山から発信される「文明対話」
尼山世界文明フォーラムは、孔子の生誕地として知られる曲阜市の南東約30キロに位置する尼山(かつての尼丘山)にちなんだ国際会議です。2010年に始まり、中国を理解し、各国・各地域の文化や文明が交流する場として発展してきました。
第11回となる今回は、「多様性の美――文明間の理解を育み、グローバルな近代化を推進する」をテーマに、世界各地から500人を超える政府関係者、研究者、文化人が集まりました。
なぜいま「文明間の理解」が問われているのか
フォーラムでは、人類の進歩にとって文化交流と文明間の相互学習が欠かせないという点で、参加者の認識がおおむね一致しました。
武力衝突が各地で再燃する不安定な国際環境のなかで、マダガスカルの駐中国大使Jean Louis Robinson氏は、異なる文化や文明が調和して共に繁栄するための場として、尼山フォーラムの意義が一層高まっていると評価しました。
グローバル文明イニシアチブへの期待
議論のなかで、特に注目を集めたのが中国が提唱するグローバル文明イニシアチブ(Global Civilization Initiative、GCI)です。2023年3月に打ち出されたこの構想は、次のような柱を掲げています。
- 世界の文明の多様性を尊重すること
- 人類共通の価値を大切にすること
- 文明の継承と革新を両立させること
- 国際的な文化交流を強化すること
モルディブの副大統領Hussain Mohamed Latheef氏は、GCIを「世界の多様な文化を尊重し理解する必要性を思い起こさせる、時宜を得た呼びかけ」だと述べました。伝統とイノベーションのバランスを取り、文化交流と発展を後押しする点を高く評価した形です。
孔子の五つの徳は現代社会に何を語るか
フォーラムでは、儒教思想の現代的意義もあらためて焦点となりました。儒教は、「仁(ren)」「義(yi)」「礼(li)」「智(zhi)」「信(xin)」という五つの核心概念で知られています。
ケニヤッタ大学の孔子学院の責任者であるDr Salome Nyambura氏は、中国とケニアの間で人と人との交流が深まるなかで、儒教に関心を持つケニアの人々が増えていると話します。
ローマのトル・ヴェルガタ大学で哲学史を教えるRiccardo Pozzo氏も、儒教は伝統と現代の課題をつなぎ、現代の問題を解決するためのヒントを提供しうると指摘しました。その根拠として、『論語』の一節「古きを温ねて新しきを知れば、もって師となるべし」を挙げ、過去の知恵を生かしながら新しい知識を取り入れる姿勢の重要性を強調しました。
文明交流がひらく多様な近代化の道
文明の交流は、学術的な対話や人的なつながりを生み出すだけでなく、貧困や格差など地球規模の課題に向き合うためのアイデアをもたらす場にもなっています。
国際儒学連合会の会長であるSun Chunlan氏は、中国が自国ならではの近代化の歩みを通じて世界に新たな機会を提供し、その成果と巨大な国内市場によって各国との協力に新しい原動力を与えていると述べました。
その一例として、中国国内の貧困削減の取り組みや、国際的な貧困削減協力が紹介されました。文明の発展は「人間中心」であるべきであり、発展の成果がより多くの人々に行き渡ることが重要だというメッセージです。
同連合会の副会長Wang Xuedian氏は、各文明が自らの文化的背景に合った発展の道を見いだすには、対話と相互学習が不可欠だと指摘しました。先進的な生産力を取り入れつつ、伝統的な価値を大切にすることで、発展のギャップを埋め、複数の文明が共に豊かになり、調和して共存する可能性が開けると述べています。
伝統を守りつつ変化を受け入れるという課題
Latheef氏は、人類全体が協力して、文化的伝統や価値を守りながらも、新しいアイデアや変化を受け入れていかなければ、グローバルな近代化に適応することは難しいと強調しました。
ハワイ大学名誉教授であり北京大学人文学部の講座教授でもあるRoger T. Ames氏は、いま必要なのは個人主義を、意識的な「世界共同体」の感覚へと変えていくことだと語りました。そのうえで、公平性、包摂性、調和を重んじる儒教の価値観は、現代世界が直面する喫緊の課題に向き合ううえで有用な指針になりうるとしています。
日本からこの議論をどう受け止めるか
グローバルな近代化と聞くと、経済成長やデジタル化といった「技術」や「制度」に目が向きがちです。しかし尼山フォーラムでの議論は、文明間の対話や価値観の共有といった「人」と「文化」の側面が同じくらい重要であることを思い出させます。
社会の分断や不信が語られがちな今、「多様性の美」をどう育てていくのか。自国の歴史や価値観を大切にしながら、他者の文明にも耳を傾ける姿勢が、これからの国際社会でますます問われていきそうです。
Reference(s):
Beauty in diversity: How Nishan Forum inspires global modernization
cgtn.com








