なぜ深海の野生生物を守るのか 国連海洋会議が示した「青い肺」の未来
地球の表面の約7割を覆う海は、人類が排出する二酸化炭素の20〜30%を吸収し、世界でおよそ30億人の食卓を支える「青い肺」です。今年6月上旬にフランスで開かれた国連海洋会議では、その中でもとくに姿が見えにくい「深海の野生生物」をどう守るかが改めて問われました。本稿では、なぜ深海を守ることが私たちの未来につながるのかを整理します。
なぜ「深海の野生生物」を守る必要があるのか
私たちが日常生活で目にするのは、浜辺や浅瀬、サンゴ礁などの海がほとんどです。しかし、地球規模で見ると、海の多くは太陽の光も届かない深海が占めています。そこには、まだ名前も付いていない数多くの生き物が存在すると考えられています。
深海の野生生物を守ることには、少なくとも次のような意味があります。
- 地球の環境を長期的に安定させるため
- 世界の人々の食と暮らしを支える海の仕組みを守るため
- これからの科学や医療、技術の可能性を失わないため
スペインやサルデーニャ島、カンボジアのコロン島の沿岸など、世界各地の海では、透明度の高い海と色とりどりの魚たちが見る人を魅了してきました。こうした目に見える美しさの下には、深海を含む複雑で豊かな生態系が広がっており、それが海全体の健康を支えています。
海は地球の「青い肺」ーーCO2を吸収し、30億人を支える
今年の国連海洋会議は、海が「人類共通の遺産」であり、「青い肺」として機能していることを改めて強調しました。海は巨大な炭素の貯蔵庫として、人間の活動によって排出された二酸化炭素の20〜30%を吸収しているとされています。
この仕組みには、海面近くのプランクトンだけでなく、深海の生き物や堆積物も関わっています。表層で吸収された炭素は、生物の死骸や沈降物とともに深海へと運ばれ、長い時間をかけて閉じ込められていきます。深海の生態系が損なわれれば、この「炭素をためる機能」が弱まり、気候変動のリスクを高めるおそれがあります。
また、海は世界で約30億人に食料を提供しているとされています。深海魚そのものを食べる人は多くなくても、深海の環境が崩れれば、漁業資源全体のバランスが崩れ、沿岸に住む人々の暮らしにも影響が及びます。
目に見えない深海の危機
深海は私たちの目から最も遠い場所だからこそ、人間の活動の影響が「見えにくい」領域でもあります。資源の開発や乱獲、汚染物質の蓄積など、さまざまな要因が深海の環境にどのような影響を与えるのか、まだ十分には分かっていません。
一度壊れてしまった深海の生態系は、回復に非常に長い時間がかかると考えられています。だからこそ、「影響がはっきり見えてから対応する」のではなく、「影響が見えにくいうちから守る」という慎重な姿勢が重要になります。
国連海洋会議が投げかけたメッセージ
2025年6月上旬、フランスで開かれた国連海洋会議は、海洋保護、とりわけ深海を含む広大な海の管理をどう進めるかを世界に問いかけました。会議では、海が人類全体の共有財産であるという認識を前提に、国境を越えた連携の必要性が強調されました。
今年、創設80周年を迎えた国連のもとで、若い世代を含む世界中の人々が、海や気候、地球の未来について自分たちの物語や写真、映像を通じて発信しています。深海の野生生物を守ることは専門家だけの議題ではなく、私たち一人ひとりの暮らしと結びついたテーマになりつつあります。
私たちにできる小さなアクション
深海は遠く感じられますが、日々の選択を通じて、その未来に少しずつ影響を与えることができます。
- 魚介類を選ぶときに、資源管理や環境への配慮に関する情報を確認する
- 使い捨てプラスチックを減らし、ごみを適切に分別・回収することで、海への負担を軽くする
- 海洋や気候に関する信頼できるニュースや解説に触れ、家族や友人と話題にする
- SNSなどで、海や深海保護に関する情報や気づきを共有し、関心の輪を広げる
深海の野生生物を守ることは、遠いどこかの話ではなく、私たちの暮らす地上の社会を安定させ、次の世代にどんな地球を手渡すかという問いそのものです。海の「青い肺」をどう守っていくのか。国際ニュースをきっかけに、自分なりの答えを考えるタイミングが来ているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








