中国の四足歩行ロボット「White Rhino」が100m走ギネス記録を更新
中国東部・浙江大学の四足歩行ロボット「White Rhino」が、100メートル走を16.33秒で走り切り、四足歩行ロボットとしての最速タイムとしてギネス世界記録に認定されました。高速走行と重量物の運搬を両立するこのロボットは、今後の災害救助や悪路での輸送など、現実世界での活用にも注目が集まっています。
100メートルを16.33秒 韓国のロボット記録を更新
浙江大学は、同大学が開発した四足歩行ロボット「White Rhino」が、100メートル走で16.33秒を記録したと発表しました。舞台となったのは、中国浙江省の省都・杭州にある試験場です。
これまでの四足歩行ロボットによる100メートル最速記録は、韓国のロボット「Hound」が持つ19.87秒でした。「White Rhino」はこの記録を大きく上回り、新たなギネス世界記録として公式に認定されています。
人間の世界記録と比べるとどれくらい速い?
短距離走と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは陸上男子100メートルの世界記録でしょう。世界記録は、ウサイン・ボルト氏が2009年にベルリンで出した9.58秒です。
これと比べると、「White Rhino」の16.33秒はまだ人間のトップスプリンターには及びません。しかし、ロボットは金属やモーター、バッテリーなどの重量を抱えながら走ります。四足歩行ロボットがここまでの速度に到達したこと自体が、ロボット工学や制御技術の進歩を示すものと言えます。
開発したのは浙江大学の複数部門
「White Rhino」は、浙江大学の複数の研究組織が共同で開発しました。中心となったのは、Xメカニクスセンター、航空宇宙学院、そして杭州グローバル科学技術イノベーションセンターです。ロボットの構造設計から駆動系、制御アルゴリズムまで、学内の異なる専門分野が協力して作り上げたプロジェクトです。
100メートル走で試される「爆発力」と「安定性」
プロジェクトリーダーの王洪涛教授は、この100メートル走のチャレンジについて「非常に要求水準の高い目標だった」と振り返っています。
- スタート時の爆発的な加速力
- トップスピードに到達するまでの速度
- 走行中に姿勢を崩さない安定性
- 転倒せずに走り切るための精密な動作制御
100メートル走は、単に速く走れるかどうかを見るだけでなく、こうした要素を総合的に試す「総合テスト」でもあります。王教授は、今回の記録挑戦によって、自分たちの研究の方向性が正しいかどうかを確かめる狙いもあったと説明しています。
中核技術は「ロボットフォワードデザイン」
「White Rhino」の技術的な中核となっているのが、研究チームが採用した「ロボットフォワードデザイン」と呼ばれる包括的な最適化手法です。
従来のロボット開発では、すでにある機体の構造を少しずつ改良しながら性能を高めていくことが多くありました。これに対してロボットフォワードデザインは、あらかじめコンピューター上で、各関節やアクチュエータ(モーターと減速機を含む駆動部)の動きや負荷を、さまざまな運用条件を想定して詳細にシミュレーションします。
研究チームは、ロボット全体の精密な動力学モデルを構築したうえで、複数の性能目標を同時に満たす「多目的最適化アルゴリズム」を活用しました。これにより、
- 脚や胴体の形状や長さといった幾何学的なバランス
- モーターの出力やトルク(ねじる力)の仕様
- 減速機構の構成
などを一体的に調整し、100メートル走のような高速走行に最適化された設計をゼロから導き出しています。
高出力アクチュエータと強化学習ベースの制御
こうした設計思想を実現するため、「White Rhino」には専用に開発された高出力密度の関節アクチュエータが搭載されています。これは、小さなサイズながら高いトルクと素早い応答性を両立した駆動装置で、研究チームは、あたかもレース用の筋肉をロボットに与えたかのようだと説明しています。
さらに、「White Rhino」の運動能力を支えているのが、強化学習に基づく動的制御戦略です。強化学習とは、人工知能が「試行錯誤」を通じて最適な行動パターンを学んでいく手法の一つです。ロボットは、バランスを崩さずに速く走れたかどうかなどの結果に応じて評価を受け、その評価をもとに動き方を少しずつ改善していきます。
このようにして、「White Rhino」は高速走行中の微妙な姿勢の変化にも即座に対応し、転倒を避けながら効率よく走るための動作を身につけています。
最大積載100キログラム 「速く走る」だけではない強み
開発チームの程紹文博士によると、「White Rhino」の最大積載量は100キログラムに達します。つまり、このロボットは速く走れるだけでなく、大きな荷物を運ぶ能力も備えています。
軽量化だけを追求すれば速度は出しやすくなりますが、その分、運べる荷物は限られます。「White Rhino」は、高速走行と重荷重性能を両立させている点が特徴で、四足歩行ロボットの実用化という観点から重要な意味を持ちます。
災害救助や悪路輸送など、広がる応用可能性
研究チームは、「White Rhino」が将来、さまざまな分野で活躍できると見ています。想定されている主な用途として、
- 災害現場での捜索・救助活動
- 人や車両が入りにくい悪路や山岳地帯での物資輸送
- インフラ点検などの危険な現場への投入
などが挙げられています。高速で移動できるだけでなく、重い荷物を運べることから、「速く走る」能力を「効率よく役に立つ」能力へと広げていくことが狙いです。
ロボット技術が社会にもたらすもの
今回の100メートル走ギネス記録は、単に「ロボットが速くなった」という話題にとどまりません。ロボットフォワードデザインによる全体最適な設計、強化学習を用いた自律的な運動制御、高出力アクチュエータによる高い運動性能など、今後のロボット開発に通じる技術的な方向性が示されています。
人が立ち入るには危険な場所や、長時間の作業が必要な現場を、ロボットが肩代わりできるようになれば、私たちの仕事や暮らしのあり方も少しずつ変わっていくかもしれません。「White Rhino」の記録更新は、その未来像の一端を垣間見せる出来事と言えそうです。
Reference(s):
Chinese quadruped robot sets 100m sprint Guinness World Record
cgtn.com








