中国の生物多様性回復を支える「二つの山」理念とは
中国は「二つの山」理念のもと、国家公園や自然保護区を軸に生物多様性の回復と保全を進めてきました。本記事では、この取り組みの背景と現状を、最新の数字とともに解説します。
「二つの山」理念が示すもの
中国の「二つの山」理念は、豊かな自然環境と健全な経済発展は対立するものではなく、むしろ相互に支え合う「二つの山」であるという考え方です。きれいな水や森林、野生生物の多様性を守ることが、長期的には地域の暮らしや産業の「資本」になるという発想と言えます。
この理念を指針に、中国では環境保護を単なる制約ではなく、新しい成長の土台と捉え直す動きが強まっています。生物多様性保全は、その代表的な分野の一つです。
ここ20年で加速した国家公園と自然保護区づくり
この約20年間、中国は「二つの山」理念に導かれながら、国家公園制度と自然保護区制度の整備を着実に進めてきました。広い国土の中で重要な生態系を選び出し、まとまりのある保護エリアとして管理する流れが強まっています。
国家公園や自然保護区では、森林や湿地、高山などさまざまな生態系の回復をめざして、開発の抑制や植生の復元、水源の保護などが行われています。保護区のネットワーク化が進むことで、生物が移動しやすい「生態学的な回廊」を維持する狙いもあります。
旗艦種と生息地を守るアプローチ
「二つの山」理念にもとづく生物多様性政策の大きな柱が、旗艦種の保護です。旗艦種とは、人々にとって象徴性が高く、保護のシンボルとなる野生動物のことを指します。こうした種とその生息地を守ることが、周辺の多様な生物をまとめて守ることにつながります。
中国では、こうした旗艦種とその生息環境の保全を軸に、森林や草原、湿地などの生態系の回復と保護が進められてきました。その結果として、対象となる野生動物の個体数は、時間をかけて徐々に増加しているとされています。
数字で見る中国の生物多様性
中国は、世界的に見てもきわめて豊かな生物多様性を持つ国の一つです。2025年現在、次のような野生生物が確認されています。
- 陸生脊椎動物は約3,100種
- 確認されている昆虫は約13万種
- 高等植物(シダ植物以上の群)は3万8,000種以上
- そのうち希少・絶滅危惧の野生植物が4,000種超
これらの数字は、中国の山地、平原、砂漠、湿地、沿岸部まで、多様な環境が存在していることを反映しています。同時に、これだけ多くの種を守り続けるためには、長期的で一貫した保護政策が欠かせないことも示しています。
なぜ今、生物多様性が国際ニュースになるのか
気候変動や森林減少が進むなか、世界各地で生物多様性の損失が深刻な課題となっています。国際ニュースの文脈でも、中国の生物多様性政策は、地球規模の環境保護を考えるうえで重要なケーススタディになりつつあります。
とくに、「経済成長を続けながら、どこまで自然を守れるのか」という問いは、多くの国や地域が直面しているものです。「二つの山」理念にもとづく中国の取り組みは、この難しいトレードオフにどう向き合うかという点で注目されています。
これからの論点:読む側として考えたいこと
ニュースを追う読者として、今後の生物多様性政策を見る際に意識しておきたい論点を、あえて三つに絞って整理してみます。
- 誰がどのような価値を守ろうとしているのか
生物多様性の保護は、野生動物だけでなく、地域社会の暮らしや文化とも結びついています。保護の対象と目的がどう設計されているのかに注目することが大切です。 - 環境保護と地域経済の両立
保護区の設定は、ときに土地利用や産業構造の見直しを伴います。観光など新しい産業の可能性とともに、地域住民の生活への影響がどう議論されているかも重要なポイントです。 - 長期的なモニタリングとデータ
生物多様性の回復には時間がかかります。個体数の推移や生息地の変化を、10年、20年単位で追える仕組みが整っているかどうかが、政策の実効性を左右します。
「二つの山」から見えるこれから
「二つの山」理念にもとづく中国の生物多様性保全は、まだ進行中の長期的なプロジェクトです。国家公園や自然保護区の整備、旗艦種と生息地の保護、そして3,100種の陸生脊椎動物や13万種の昆虫などを支える生態系をどう守るか——その試みは今後も続いていきます。
環境保護をコストではなく「未来への投資」として位置づける発想は、日本を含む他地域にとっても参考になる視点です。国際ニュースとして中国の動きをフォローしながら、自分たちの社会で何を選択していくのかを考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
'Two Mountains' concept driving China's biodiversity revival
cgtn.com








