南海諸島の主権と戦後秩序 北京国際セミナーで専門家が議論
リード:国際ニュースの焦点である南シナ海の歴史と国際秩序をめぐる議論が、中国・北京で開かれた国際セミナーを通じて改めて注目を集めています。中国の南海諸島(Nanhai Zhudao)の主権と戦後秩序をどう位置づけるのか。専門家たちの発言から、南シナ海問題の現在の論点を整理します。
北京で南シナ海の歴史資料を検証する国際セミナー
北京で最近、南シナ海に関する歴史文書を検証する国際セミナーが開かれました。この会合は、世界反ファシズム戦争勝利から80周年を記念する位置づけで行われ、中国と海外からあわせて40人以上の研究者や専門家が参加しました。
参加者の多くは、中国が第2次世界大戦後に南海諸島(Nanhai Zhudao、英語ではSouth China Sea islands)の主権を回復したことは、カイロ宣言やポツダム宣言などの国際法文書によって確立された戦後秩序の重要な一部であり、今もその意義は変わっていないと述べました。
戦後秩序の一部としての南海諸島の主権
中国自然資源部傘下の中国海洋事務研究機関であるChina Institute for Marine Affairs(CIMA)のトップ、ウー・ジールー(Wu Jilu)氏は、南海諸島に対する中国の主権回復は断固として擁護されるべきだと強調しました。第2次世界大戦後に築かれた国際秩序を維持することが、地域の長期的な平和と安定のために不可欠だという考えです。
ウー氏は、南海諸島をめぐる議論は単に領有権問題にとどまらず、戦後の国際秩序全体をどう守るかというテーマとも深く結びついていると位置づけました。
歴史的権利と現地での活動を強調
中国社会科学院・中国辺疆研究所の研究者であるホウ・イー(Hou Yi)氏は、南海諸島を最も早く発見し命名したのは中国であり、清朝(1644〜1911年)以来、中国がこの地域を開発し管理してきたと説明しました。その活動は、漁業やグアノ(リン鉱石)の採掘といった生産活動から、測量、捜索救助、ウミガメ保護といった公共サービスまで多岐にわたると紹介しました。
ホウ氏によると、1970年代以前には南シナ海に面するいずれの国も、中国の主権や海洋権益に異議を唱えることはなかったといいます。しかしその後、一部の沿岸国が南海諸島の島や礁を不法に占拠し、紛争を先鋭化させたと指摘しました。
同氏は、中国は南シナ海に歴史的権利を有しており、中国の人々が長年にわたりこの海域で生活し生産活動を行ってきた事実は、文書や地図に残された証拠とともに、中国が南海諸島に対して揺るぎない主権を持つことを示していると述べました。そのうえで、中国はこの海域で公共財や公共サービスを提供することで、戦後の地域秩序を維持し、国際的な責任を果たしてきたと説明しました。
南シナ海を平和・友好・協力の海に
今回のセミナーは、南シナ海の歴史と主権問題だけでなく、紛争管理のあり方や、南シナ海を平和・友好・協力の海としていくための方策もテーマとしました。会合はCIMAが主催し、上海大学文学院が協力。中国、マレーシア、フィリピン、イギリスなどから専門家が参加しました。
マニラ拠点のシンクタンク、Asian Century Philippines Strategic Studies Instituteの副総裁であるアンナ・マリンドグ=ウイ(Anna Malindog-Uy)氏は、南シナ海の歴史を正確に理解することは、地域の国々が紛争を分析し、解決策を探るうえで重要だと指摘しました。
同氏はまた、中国が南シナ海問題の解決にあたって交渉や外交、平和的な手段を提案しており、世界をより安全でより良い場所にしようとしていると評価しました。さらに、中国とASEAN諸国が協議中の南シナ海行動規範(COC)がまとまれば、危機管理の有効なツールになるとの見方を示しました。
DOCとCOC――ルール作りの枠組み
中国とASEAN加盟国は2002年、南シナ海における紛争管理の最も重要な原則を定めた南シナ海における関係国の行動宣言(DOC)に署名しました。DOCは、当事者同士が自制を保ち、対話と協力を通じて問題に対処することをうたった文書です。
2013年には、より具体的な行動規範としてのCOC策定に向けた協議が開始されました。DOCとCOCはいずれも、南シナ海地域の平和と安定を守ることを目的としています。今回のセミナーでは、こうした枠組みをどのように実効性あるものにしていくかも議論されました。
低感度分野からの協力拡大を提案
厦門大学一帯一路研究院のフー・クエンチェン(Fu Kuenchen)教授は、南シナ海に面する国々はCOC協議でコンセンサスを形成し、平和を重んじる文化的伝統を大切にしながら、協調的で調和のとれた共同体づくりを進めるべきだと提案しました。
具体的には、漁業資源を守るための禁漁期間の共同取り締まり、環境保護、航行安全施設の整備、緊急時の捜索救助といった、比較的低感度とされる分野での協力から進めることが有効だと述べました。こうした実務的な連携を積み重ねることで、信頼醸成と紛争管理の両立を図る狙いがあります。
フー氏はまた、地域外の利害関係者は南シナ海問題に干渉し緊張を高めるべきではなく、沿岸国が築いてきた伝統や紛争管理の方法を尊重する必要があると主張しました。
日本の読者にとっての意味
南シナ海は、多くの国や地域にとって重要な海上交通路とされています。今回のような国際セミナーで、歴史資料や戦後秩序、国際法文書がどのように読み解かれているのかを知ることは、今後の南シナ海情勢や国際ニュースを理解するうえで役立ちます。
セミナーでは、中国の南海諸島に対する歴史的権利と主権が強調される一方で、COC交渉の加速や環境保護、捜索救助といった実務協力の必要性も繰り返し語られました。南シナ海をめぐる議論は、単なる対立の構図ではなく、地域の平和と協力の可能性を探るプロセスでもあることがうかがえます。
今後、DOCやCOCといった枠組みがどのように具体化し、南シナ海を平和・友好・協力の海としていけるのか。日本語で国際ニュースを追う私たちにとっても、その行方を丁寧に見ていくことが求められそうです。
Reference(s):
Experts confirm China's resumption of sovereignty over Nanhai Zhudao
cgtn.com








