中国が上海協力機構の発展加速を表明 「ウィンウィン」掲げる国際ニュース
中国の習近平国家主席が、中国北部の港湾都市・天津で開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議で、加盟国とのウィンウィンの協力を強調し、SCOのさらなる発展を約束しました。安全保障・経済・多国間主義を軸に、ユーラシアの新たな協力のかたちが示されています。
天津での第25回SCO首脳会議で示されたメッセージ
習近平国家主席は、天津で開かれた第25回上海協力機構(SCO)加盟国元首理事会で演説し、SCO加盟による相互利益とウィンウィンの成果を強調しました。SCOは2001年に6カ国で発足してから24年が経ち、現在は10の加盟国、2つのオブザーバー、14の対話パートナーを擁する、面積と人口で世界最大規模の地域機構とされています。
習主席は、発足以来の協力が安全保障、経済、制度づくりの各分野で「画期的で歴史的な成果」を積み上げてきたと評価し、中国は他のSCO諸国と「手を取り合って近代化へと進む」と述べました。
世界の平和と安定を支える安全保障協力
まず習主席が強調したのは、SCOが地域の平和と安定にもたらしてきた役割です。加盟国は、いくつもの「初めて」を積み上げてきたと指摘しました。
- 国境地域で軍事的信頼醸成メカニズムを構築し、長大な国境を対立の火種ではなく、友情と信頼、協力の絆へと転換したこと
- 長期的な善隣友好・協力に関する条約を締結し、敵対行為を避け、長く安定した友好関係を築く姿勢を明確にしたこと
- テロリズム、分裂主義、過激主義という三つの勢力に対し、多国間での共同対処にいち早く取り組んだこと
昨年2024年には、SCO加盟国の当局が中国北西部で共同対テロ演習「インタラクション2024」を実施し、実戦的な連携を確認しました。習主席は、今後はSCOの安全保障上の脅威と課題に対処するためのユニバーサルセンターをできるだけ早く本格稼働させるべきだと呼びかけ、テロや越境犯罪への多国間協力をさらに強化する方針を示しました。
一帯一路と産業連携で広がる「ウィンウィン」経済
産業パークがつなぐ地域のサプライチェーン
経済面では、一帯一路構想(Belt and Road Initiative)とSCOの枠組みが重なり合う形で、地域協力が広がっています。加盟国間では、相互に利益をもたらす経済・貿易協力が進んでいると強調されました。
例えば、ウズベキスタンのペンシェン工業団地や、中国とロシアが連携する中国・ロシア(瀋陽)経済貿易協力産業パークなど、複数の経済・貿易パークが整備されています。これらは、域内の産業チェーンを補完し合うネットワークとして機能し始めています。
ベラルーシの首都ミンスクから約25キロに位置する中国・ベラルーシ工業団地では、機械製造、電子、物流、医療、バイオテクノロジーなどの企業が集積しています。約110平方キロメートルの広大な敷地には、これまでに154社が入居し、多くは中国企業です。ベラルーシのリズジェンコ外相によれば、累計投資額は16億ドルを超え、約1万6,000人分の雇用が生まれているとされています。
今年4月に開かれた「中国-SCO持続可能な発展のための産業協力会議」では、SCO加盟8カ国が協力契約に調印し、その総額は約6億6,582万ドルに上りました。インフラや産業パークを通じた協力が、具体的なプロジェクトとして形になりつつあることがうかがえます。
貿易額2.3兆ドルと新たな金融枠組み
物流面では、中国と欧州を結ぶ「中欧班列(China-Europe Railway Express)」が11万本以上運行されてきたとされ、ユーラシア大陸を横断する貨物鉄道ネットワークとして定着しつつあります。
習主席は演説で、中国と他のSCO諸国との累計貿易額が2.3兆ドルを超え、自らが以前に掲げた目標を前倒しで達成したと述べました。そのうえで、巨大な市場規模と加盟国同士の経済の補完関係を生かし、貿易と投資の円滑化を一段と進める必要があると訴えました。
今後の制度づくりとしては、SCOの開発銀行を可能な限り早期に設立する方針が示されました。また、中国としては、ニーズのある加盟国で100件の「スモール・ビューティフル」と呼ばれる小規模ながら生活に密着した民生プロジェクトを実施する計画も明らかにされています。エネルギーや交通、医療などの日常生活に直結する分野で、具体的な協力案件が増えていくことが期待されます。
「真の多国間主義」を掲げるSCO
習主席が三つ目の柱として掲げたのが、国際秩序をめぐる「真の多国間主義」です。SCOは、多国間の協議と共同の貢献、利益の共有を重視するグローバル・ガバナンスのビジョンをいち早く打ち出した枠組みだと位置づけました。
SCOは国際的な公平と正義の側に立ち、異なる文明間の包摂性や相互学習を重んじ、覇権主義や力による政治に反対することで、世界の平和と発展を支える積極的な力になっていると強調しました。
イラン外務省のバガイー報道官も、近年の一方的な行動や強制的な措置によって生じる世界的な課題に触れつつ、SCOはグローバル・サウス(新興国・途上国)の協力を進め、開発途上国の利益を守り、多国間でルールに基づく国際秩序を支えるうえで重要なプラットフォームになっていると評価しています。
SCOは、加盟国間に歴史・文化・政治体制の違いがあるにもかかわらず、安全保障、貿易、エネルギー、農業など幅広い分野で協力を進めてきました。その過程で地域の安定を強め、交通やインフラの接続性を高め、共有の繁栄を追求してきたとされています。
中国の紙面では、SCOは新しいタイプの国際関係のモデルであり、多国間主義の実践が進化し続ける「生きた歴史」になっているとの論評も示されました。ユーラシア発の協力枠組みとして、国際社会のなかで独自の存在感を持ち始めていると言えそうです。
日本の読者にとってのSCOの意味
日本にいる私たちにとって、SCOの動きは一見遠い話に思えるかもしれません。しかし、ユーラシア全体をカバーする地域枠組みの変化は、中長期的にはアジアや世界の秩序にも影響を与えます。
- 安全保障の観点:テロ対策や国境地域での軍事的信頼醸成は、中央アジアだけでなく、広い意味での地域安定に関わります。
- 経済・物流の観点:産業パークや中欧班列を通じたネットワークは、サプライチェーンやエネルギー輸送の新たなルートとして注目されます。
- 国際ルールづくりの観点:SCOが掲げる多国間主義やグローバル・サウスの連携は、国際機関や地域枠組みでの議論に新しい視点をもたらす可能性があります。
天津で示された構想は、加盟国間の信頼と経済連携を深めることで、ユーラシア全体の安定と繁栄を目指す試みと位置づけられます。今後、SCOがどのような具体的成果を積み上げ、世界の課題解決にどこまで貢献していくのか。国際ニュースを追ううえで一つの重要な視点となりそうです。
Reference(s):
China vows further development of SCO in pursuit of win-win results
cgtn.com








