CATLが欧州向け新EV電池「Shenxing Pro」発表 長寿命と急速充電で勝負
中国の電池大手CATLが、欧州市場向けの最新EV(電気自動車)用バッテリー「Shenxing Pro(シェンシン・プロ)」を発表しました。長寿命モデルと急速充電モデルの2種類をそろえ、EVの価格や航続距離、充電時間への不安が残る欧州で、どこまでゲームチェンジャーになり得るのか注目が集まっています。
ミュンヘンで発表 欧州を代表する自動車イベント直前に
新型EV電池「Shenxing Pro」は、ドイツ・ミュンヘンで行われた発表会で公開されました。タイミングは、欧州を代表する自動車業界イベントである2025年の「IAAモビリティ」開幕の2日前にあたる日曜日で、欧州の電動化戦略を意識したお披露目と言えます。
欧州では現在、電動化への移行が急速に進む一方で、次のような課題が根強く指摘されています。
- EV車両価格の高さ
- 航続距離(1回の充電で走れる距離)への不安
- バッテリー寿命と性能劣化
- 充電インフラの不足や充電時間の長さ
- 低温環境での性能低下への懸念
こうしたなかで、安全性とコスト面で優れるとされるリン酸鉄リチウム(LFP)系バッテリーが欧州の自動車メーカーの間で存在感を高めており、「Shenxing Pro」もこのLFPを採用しています。
新EV電池「Shenxing Pro」の2つのモデル
「Shenxing Pro」は、同じLFP技術をベースにしながら、用途の異なる2つのモデルが用意されています。
12年・100万キロ対応の長寿命モデル
1つ目は長寿命を前面に打ち出したモデルです。
- 使用期間の目安は最長12年または走行距離100万キロメートル
- 最大航続距離は758キロメートル
- 多くのLFP電池が300〜500キロメートル程度とされるなかで、それを大きく上回るスペック
- 走行距離20万キロメートル時点でも劣化率は約9%にとどまるとされています
欧州では、長距離移動が前提となる生活スタイルに加え、リース車両や中古車として長く利用されるEVも増えています。性能劣化が少なく、長期間使えるバッテリーは、こうした市場ニーズとの相性が良いと考えられます。
特に、バッテリーの残存価値が高いことは、長期リースや中古EVの価格形成にも直結します。「Shenxing Pro」の長寿命モデルは、欧州で広がる長期リースモデルとの親和性の高さが意識された設計と言えます。
10分で478キロ分を充電する急速充電モデル
もう1つのモデルは「急速充電」に特化しています。
- わずか10分間の充電で、最大478キロメートルの走行距離を追加可能
- 外気温マイナス20度の環境でも、バッテリー残量20%から80%までの充電に約20分
寒冷地でもEVを日常使いしたいドライバーにとって、低温時の充電性能は重要なポイントです。冬場に厳しい寒さとなる地域を多く抱える欧州で、この低温下での急速充電性能は、EV普及のボトルネックを和らげる要素になり得ます。
欧州の走行習慣に合わせた設計
CATLの国際事業部門で最高技術責任者(CTO)を務める朱霊博(Zhu Lingbo)氏は、「Shenxing Pro」が欧州の走行習慣や市場特性を意識して開発されたことを強調しています。
具体的には、次のような点が挙げられます。
- 高速道路での平均走行速度が高い欧州の交通事情
- リース車両や中古車として長期間利用される傾向
- 北欧をはじめ寒冷な地域が多い気候条件
高い巡航速度でも安定して電力供給ができ、長く使っても劣化が少ないバッテリー、そして低温でも充電性能が落ちにくい設計は、いずれも欧州のユーザー体験に直結する要素です。
CATLの欧州展開と存在感
CATLは、2012年にドイツの自動車メーカーBMWとの戦略的パートナーシップを通じて欧州市場に本格進出しました。その後、ドイツとハンガリーでEVバッテリー工場を稼働させ、現在は、ステランティスとの合弁事業としてスペインで3つ目の工場を建設中です。
CATLの顧客最高責任者(CCO)である譚立斌(Tan Libin)氏は、「私たちのグローバルな歩みは欧州から始まった」と述べ、現在では欧州の自動車メーカーのおよそ9割と取引があるとしています。また、同社のバッテリーは、世界で2,000万台を超えるEVに搭載されたと説明しています。
今回の「Shenxing Pro」発表は、欧州をCATLの戦略拠点の一つとして位置づける動きをさらに鮮明にするものと言えます。
欧州EV市場へのインパクトは
今回の発表は、国際ニュースとしても、欧州のEV市場の行方を占う重要な一手です。長寿命・高航続距離モデルと、急速充電モデルの投入は、次のような変化をもたらす可能性があります。
- バッテリーコストの低減を通じたEV価格の引き下げ余地
- 航続距離と充電時間に対する「不安」の緩和
- リース・中古EV市場における車両価値の向上
- 低温地域でのEV利用拡大への後押し
一方で、インフラ面や制度面の課題が一気に解消されるわけではありません。高速道路や都市部での急速充電設備の整備、電力システムへの負荷、バッテリーの再利用・リサイクルといったテーマは、今後も欧州全体で議論が続くとみられます。
日本の読者への示唆:バッテリーが変わるとモビリティも変わる
日本の読者にとって、欧州向けEV電池のニュースは一見遠い話に感じられるかもしれません。しかし、バッテリー技術は、自動車産業だけでなく、エネルギーシステムや都市のあり方にも直結する基盤技術です。
欧州での試みは、次のような問いを私たちに投げかけています。
- 長寿命バッテリーが当たり前になったとき、クルマの所有やリースのモデルはどう変わるのか
- 充電時間が大幅に短縮されたとき、ガソリンスタンドやサービスエリアの役割はどう変化するのか
- アジアや日本のメーカー・サプライヤーは、どのような強みや役割を打ち出せるのか
EVとバッテリーをめぐる国際ニュースは、「どのメーカーの新製品か」という競争だけでなく、社会全体の仕組みをどうアップデートしていくのかを考えるヒントにもなります。今回のCATLの動きも、その一つとして静かに影響を広げていきそうです。
Reference(s):
Chinese battery giant CATL unveils new EV batteries for Europe
cgtn.com








