彭麗媛氏「女性に科学教育を」AI時代の女子教育を訴え
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の女子・女性教育賞が創設10周年を迎え、北京で開かれた今年の授賞式で、彭麗媛氏が「AI時代には女性にこそ科学教育を」と訴えました。アフリカや中東で進む女子教育の現場と、このメッセージの意味を整理します。
北京でユネスコ女子・女性教育賞が10周年
ユネスコの女子・女性教育賞は、女子と女性の教育の機会を広げる優れた取り組みを顕彰する国際賞です。創設10周年となる今年は、北京で記念の授賞式が開かれました。
授賞式では、ケニアとレバノンのプロジェクトが表彰されました。表彰を行ったのは、中国の習近平国家主席の夫人であり、ユネスコの「女子・女性教育の推進のための特使」を務める彭麗媛氏と、ユネスコのオードリー・アズレ事務局長です。
彭氏はこれまで、女子教育の推進や学校現場の支援を通じて、途上国の少女や女性のエンパワーメントに関わってきました。今回の式典でも、その延長線上にある強いメッセージが発せられました。
アフリカ農村部から生まれる女子教育のモデル
ウガンダの農村部では、かつて10代の少女たちは、早婚のために学校を辞めるか、衛生設備や安全が十分でない教室で学び続けるかという厳しい選択を迫られてきました。こうした状況を変えようとしているのが、アフリカの学校の平等を促進するプログラム「Promoting Equality in African Schools(PEAS)」です。
PEASは、女子が安心して通える安全でジェンダーに配慮したキャンパスを整備し、生理など健康と尊厳を守る支援も行っています。毎年、ウガンダ、ザンビア、ガーナで約30万人の生徒がこの取り組みの恩恵を受けているとされています。
ザンビアでは、「Campaign for Female Education(CAMFED)」が似たストーリーを紡いでいます。2001年から、農村部の女子が中等教育を修了するまでの障壁を取り除く支援を続けており、そのおかげでこれまでに61万7,000人を超える若い女性が学校を卒業しました。
多くの卒業生が、地域のリーダーやコミュニティワーカーとして活動し、かつては娘が最初に教育をあきらめさせられていた村で、新しいロールモデルになっているといいます。
こうした取り組みこそが、ユネスコ女子・女性教育賞が毎年称えてきた「物語」です。今年の授賞式では、ケニアとレバノンのプロジェクトが新たにその一員に加わりました。
AIと急速な技術変化の時代に、なぜ女性の科学教育なのか
彭麗媛氏は式典のスピーチで、世界が人工知能(AI)と急速な技術変化に主導される時代に入っていると指摘し、「私たちは女性の科学教育をいっそう重視しなければなりません」と強調しました。
彭氏は、女性が知識、技術的スキル、そして革新的な力を身につけられるようにするべきだと呼びかけ、「女性が技術革命を受け止め、自らの人生を豊かにできるよう努めなければならない」と訴えました。
AIやデジタル技術が社会のルールを変えつつある今、科学や技術にアクセスできないことは、そのまま機会の格差につながります。特に教育へのアクセスに歴史的なハンディを抱えてきた女性や少女にとって、科学教育は「選択肢」を増やす鍵になりつつあります。
理系分野に進む女性を増やすことは、単に技術者や研究者を育てるだけではありません。気候変動、保健医療、農業、地域開発といった課題に対して、女性自身がデータを読み解き、技術を活用して解決策をつくり出す力を持つことにつながります。
農村の教室からAI時代のキャリアへ
PEASやCAMFEDのようなプログラムは、まず「学校に通い続けられること」を土台として整えています。それによって初めて、理科や数学、情報といった教科を学び、将来の選択肢として科学技術分野を思い描くことが可能になります。
安全な校舎やトイレ、生理に関する支援、ハラスメントから守られた環境は、女子が学び続けるための前提条件です。そのうえで、理科実験や科学クラブ、地域の課題を科学的に考える授業などがあれば、AI時代にも通用する基礎力を身につけることができます。
地域で活動する卒業生が、次の世代の少女たちに「女性も科学を学んでいい」と伝える存在になっている点も重要です。身近なロールモデルがいることで、「自分にもできるかもしれない」という実感が生まれます。
日本の読者への問い「誰がテクノロジーを学べるのか」
今回紹介された事例の舞台はウガンダやザンビア、ガーナ、そしてケニアやレバノンですが、「誰がテクノロジーを学べるのか」という問いは、世界共通のテーマです。日本を含む多くの国でも、理工系分野には依然として性別による偏りがあり、デジタルスキルの格差も課題になっています。
AIやデータ、プログラミングが当たり前になる社会では、これらを学べるかどうかが、将来の仕事や収入だけでなく、社会に参加する力そのものを左右します。だからこそ、女子や若い女性が科学や技術の世界にアクセスできるようにすることは、国際協力だけでなく、各国の内側にとっても重要な課題です。
私たち一人ひとりにできることは小さいかもしれませんが、次のような視点から自分の身の回りを見直してみることができます。
- 身近な少女や若い女性が、理科や数学、プログラミングに興味を持ったとき、それを応援できているか。
- 学校や職場で、女性がテクノロジー分野に進みやすい環境やロールモデルが十分に示されているか。
- 国際的な女子教育の取り組みやニュースに、継続して関心を向けているか。
北京での授賞式で語られたメッセージは、アフリカや中東だけでなく、AI時代を生きるすべての社会に向けられたものでもあります。「誰がテクノロジーを学べるのか」という問いを、自分の周りの現実に引き寄せて考えてみることから、次の10年への一歩が始まりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








