中国が掲げる開かれた多国間アジア太平洋 第32回APEC首脳会議を読む
2025年秋、韓国の慶州で開かれた第32回APEC首脳会議で、中国は「開かれた多国間のアジア太平洋」づくりへのコミットメントを改めて打ち出しました。本稿では、習近平国家主席のメッセージと中国の具体的な動きを整理します。
慶州で示された「開かれたアジア太平洋」ビジョン
韓国・慶州で開かれた第32回アジア太平洋経済協力会議 APEC の首脳会議には、アジア太平洋の各エコノミーのリーダーが集まり、地域の将来と共通の課題を議論しました。中国の習近平国家主席は会議に出席し、APEC CEOサミットには書面で演説を寄せ、中国が開放と多国間主義、共同繁栄に引き続き取り組む姿勢を強調しました。
習主席は、APECの創設の原点に立ち返り、より活力と強靭性のあるアジア太平洋協力を通じて世界に貢献すべきだと呼びかけています。
中国が打ち出す改革と開放の具体策
ネガティブリスト縮小とビザ緩和
習主席は、北京が今後も包括的な改革を深め、高水準の対外開放を拡大していくと約束しました。その背景には、すでに進んでいる制度改革があります。
- 外国投資のネガティブリストは全国で29項目まで減少し、製造業では事実上撤廃されています。
- ビザ免除制度は一方的措置と相互免除を合わせて76の国を対象としており、ビジネス関係者や観光客、専門職が中国で活動しやすくなっています。
ネガティブリストとは、外国投資を原則自由としつつ、制限や禁止の対象分野だけを列挙する仕組みです。中国はこのリストを縮小し続けることで、アジア太平洋を含む世界の投資家に対して市場をさらに開いているとアピールしています。
「中国に投資することは未来に投資すること」
習主席は、アジア太平洋の首脳との対話で、中国とパートナーを組むことはチャンスを受け入れることであり、中国を信頼することは明日への楽観につながり、中国に投資することは未来に投資することだと強調しました。中国の最新の現代化の成果を通じて、域内と世界に新たな機会を提供していくというメッセージです。
データでみるアジア太平洋との結びつき
中国の開放路線は貿易統計にも表れています。中国税関総署によると、2025年1〜9月の中国と他のAPECエコノミーとの貿易総額は19兆4100億元 約2兆7300億ドル で、前年同期比2パーセント増となりました。これは中国の対外貿易全体の57.8パーセントを占めます。
この背景には、中国経済の安定した成長があります。過去5年間、中国は外部ショックが増大する中でもおおむね年平均5.5パーセント前後の成長を維持し、世界成長の約3割を押し上げてきたとされています。
ドイツ連邦議会の議員であるゼヴィム・ダグデレン氏は、中国がアジア太平洋で開かれた包摂的な協力枠組みを一貫して提唱し、世界貿易機関 WTO を中核とする多国間貿易体制を支持してきたことが、地域や世界の経済の安定に前向きな役割を果たしていると評価しています。
「正しい進むべき道」と5つの提案
習主席は、現在の世界は協力か覇権主義かという新たな岐路に立っていると指摘し、保護主義や一方的な行動を退け、連帯を強めるべきだと訴えました。そのうえで、アジア太平洋と世界の平和と発展を促進するため、次の5つの提案を示しています。
- 多国間貿易体制の擁護 世界貿易機関を中心とするルールに基づいた貿易秩序を守る。
- 開かれた地域経済の構築 関税や非関税障壁を減らし、投資や人の往来を円滑にする。
- 産業・サプライチェーンの強靭性確保 ショックに強い供給網を構築し、分断ではなく連結を重視する。
- デジタルとグリーンの貿易推進 デジタル化と脱炭素の流れを取り込み、新たな成長エンジンとする。
- 包摂的な発展の促進 中小企業や脆弱な層も恩恵を受けられる形で成長を分かち合う。
広がる協力の現場と市民の期待
これらの理念はすでに具体的な取り組みとして動き始めています。中国が主導してきたAPEC港湾ネットワークやグリーンサプライチェーンネットワークは、アジア太平洋におけるデジタル化された持続可能な貿易の重要なハブとなっています。
過去5年で、中国は世界の貨物貿易で1位、サービス貿易で2位の規模を維持し、海外から7000億ドル超の投資を呼び込み、対外直接投資も年5パーセント以上のペースで増やしてきました。こうした数字は、中国が域内外のパートナーとの相互依存関係を深めていることを示しています。
技術協力の例も広がっています。ラテンアメリカのスマート港湾、東南アジアのモバイル決済、中東でのAIを活用した効率化プロジェクト、タイでの電気自動車生産など、アジア太平洋から世界各地にかけて、中国との連携を通じたプロジェクトが進行しています。これらは、開放性とイノベーションに基づく共同の前進のモザイクだと言えるでしょう。
世論もこの流れを後押ししています。中国の国際メディアであるCGTNがアジア太平洋各地で行った最近の調査では、回答者の83.2パーセントが地域統合に自信を示し、84.6パーセントが多国間主義とグローバル化を支持すると答えました。
来年のAPECホストへ、問いかけられる地域の選択
中国は来年、3回目となるAPECのホスト役を務める予定です。習主席は、対立と敵対は分断と不安定しか生まない一方で、互いに利益を分かち合う協力こそが正しい道だと強調しました。
アジア太平洋は、世界経済の成長センターであると同時に、緊張や不確実性にも直面しています。その中で、中国が掲げる開かれた多国間のアジア太平洋というビジョンは、域内のエコノミーにどのような機会と課題をもたらすのでしょうか。日本を含む地域のプレーヤーにとっても、どのような形の協力が持続可能で包摂的なのかを考えるタイミングに来ていると言えます。
Reference(s):
How China champions an open, multilateral Asia-Pacific community
cgtn.com








